はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~【872号】
東京都不妊・不育ホットライン 佐々木 良枝
その方の第一声は「ここでお話ししてもいいのでしょうか?…」でした。1週間前に流産したばかり、不妊治療もしていた、とのこと。もちろん大丈夫です、とお伝えすると、その方は「ありがとうございます。実は…」と話しかけて言葉が途切れました。泣いていらっしゃるようでした。静かにおえつしていることが電話越しに分かりましたので、好きなだけ泣いていいことをお伝えし、しばらく黙ってお待ちしていました。1分ほどたったでしょうか、「こんなこと、夫以外誰にも話せなかった。親にも心配かけるし、友人にも遠慮してしまって…病院の先生方も忙しそうだし…ただ話を聴いてもらいたくて電話をかけてしまった。グチになってしまうけど、いいですか?」と、まだ少し涙声で話し始めたので、そのためにここがある、このホットラインは不妊の経験者が相談員として電話を受けているので、お気持ちをお聴きすることならいくらでも、とお伝えしました。そこから30分ほど、これまでの経緯やつらかった経験、今の気持ちなどをお話ししながら、少しずつ声が明るく、笑いも出て、雰囲気が軽くなるのがこちらにも伝わってきました。
3年前に初めて自然妊娠したが流産となったこと、その時に処置をした産婦人科で幸せそうな母子を見てしまったことが本当につらくて泣きながら家に帰ったこと、その後不妊治療を始めたがなかなかうまくいかず、その間に職場の同僚が次々に妊娠・出産したこと、「同僚が子どもを連れて職場に来た時はどんな顔をすればいいか分からなかった」「“おめでとう”を言うのがつらかった」と、ここでも少し涙されました。今回で3回目の流産になってしまったが、「年齢的にそろそろ諦めなくてはと思っている」「3年間ずっと悪夢を見ているようだった」ともおっしゃっていました。
一度も妊娠しないことも当然つらいのですが、流産を繰り返す方は、妊娠しても喜べない、自分の体を疑ってしまうということがとても多いのです。子どもができないという点では同じですが、不妊と不育ではまた違うつらさがあるのだと感じます。それぞれの方の悩みやつらさに耳を傾け、その率直なお気持ちに寄り添ってお話を伺うよう心掛けています。
電話を切る頃には「話を聴いてくれてありがとう。心が軽くなりました」と明るくおっしゃってくれましたが、この先も気持ちが揺れることはあるかもしれない、またいつでもかけて下さい、とお伝えしました。
電話がつながってすぐに涙で話せなくなる方は多くいらっしゃいます。やっと安心して話せる場にたどり着けてホッとしたり、これまでため込んでいたものが一気にあふれてきていっぱいいっぱいになったりしてしまうのかもしれませんが、充分話せた後は皆さん例外なく声のトーンが変わっていることを感じます。
東京都不妊・不育ホットラインでは、これからも安心して話せる場の提供を心掛け、不妊や不育に悩む方々の支援を続けていけたら幸いです。
