はたがや日和

はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~ 【867号】

思春期・FP相談LINE/避妊のためのピル&アフターピル相談室相談員 岡 良子

 産婦人科外来に長く勤める中で、トランスジェンダーの方と関わる機会が増えてきました。LGBTQ+、ノンバイナリー、SOGIといった言葉を耳にすることも多くなりましたが、JFPA思春期保健相談士の資格を取るまでは性自認への理解が十分ではなく、どう接すればよいのか迷いながら対応していたように思います。資格取得後、電話相談からLINE相談へと形が変わり、技術の進歩や世の中の考え方の変化があってもまだ、かつての私のように、親御さんの理解が追いつかない場面に出会うことは少なくありません。
 先日のLINE相談で、13歳の子が性別欄に「わからない」と記載していました。相談内容は「ピンク色の物を見ると自分の性別がわからなくなる」「男っぽい服を着たいが周囲の目が怖い」「親から“女の子なんだから女らしくしなさい”と言われる」というものでした。この子は“性のゆらぎ”を感じながら日々を過ごし、親にどう伝えればよいのか悩んでいました。言葉の端々からは、心配をかけたくないという親への愛情も感じられ、これは思春期によく見られる自然な現象だと思われました。
 性には次の4つの基本があります。①身体的性②性自認(心の性)③性的指向(好きになる性)④性表現(表現する性)―これらは、必ずしも一致しません。この前提を理解して関わることが大切です。一方で、親世代が理解しづらい背景もあります。親御さん自身が「女らしく・男らしく」と育てられた時代を過ごしてきたこと、男女共同参画が進む途中で価値観が揺れていたこと、学校の性教育は生殖中心で性自認や性的指向を扱ってこなかったこと。そして、LGBTQ+やSOGIが一般化したのはごく最近です。つまり、親御さんは、これまでに学ぶ機会がなかっただけであり、責められるべきことではありません。しかし外来では、「親や親せきに理解してもらえない」という声が多いのも事実です。
 今では、女の子が制服にズボンを選べる地域も増え、学校でも多様性への取り組みが進んでいます。「好きな服を着る」という性表現は、自分らしく生きるための大切な要素です。子どもは多くの人から肯定されることで自己肯定感が育ちます。
 相談してきてくれた13歳の子には、自分が着たい服を選んでいいこと、“○○らしさ”には、物差しがないので、正解も間違いもないことを説明し、「率直に親御さんに伝えてみては」と返信しました。すぐに「わかりました…がんばってみます! ありがとうございました」と返事が届き、胸が熱くなりました。
 日本家族計画協会家族計画研究センターでは、経験豊富なスタッフが子どもや若者のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)を守るため、一人一人に丁寧に向き合っています。デジタルネイティブ世代の子どもたちが、孤独な状況に立たされたり搾取を目的に近づいてくる大人に出会ったりしたときや、誤情報に触れたときに、LINEのような、対面で話せなくても相談員と対話をできるようなコミュニケーションツールは、今の時代に必要な支えだと感じています。性のゆらぎは思春期の自然なプロセス。大人が自分の経験や価値観で縛られずに、「今から知ろう」とする姿勢こそが、子どもたちにとって最大の支えになるのだと思います。

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