はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~ 【866号】
東京都不妊・不育ホットライン相談員 金子友紀
東京都不妊・不育ホットラインでお話を伺っていると、治療に踏み出すかどうか考えている方、治療の真っただ中にいる方、そして治療を終えた方など、立場はさまざまでも、多くの方が人間関係の難しさを抱えているように感じられます。治療に向き合う中で、夫婦や家族、友人、職場、そして治療で出会った仲間との関わりが、以前のように自然にいかなくなることがあります。治療という大きなテーマを抱えることで、これまで気にならなかった言葉や距離感が、急に重く感じられることもあるでしょう。
「本当はこれまで通りに接したいのに、心が付いていかない」。そのような思いを抱えたまま、周囲との距離感に悩む方は少なくありません。夫婦間で治療への温度差を感じたり、親や親戚の何気ない言葉に胸が痛んだり、友人の妊娠報告に素直に喜べない自分に戸惑ったりすることもあります。職場では通院のための調整に気を使い、治療仲間とは励まし合える一方で、進み方の違いに焦りを覚えることもあるようです。相談を受けていると、「こんなふうに感じる自分はおかしいのでは」と悩まれる方が多くいらっしゃいます。
こうした揺れ動く気持ちに気付いたとき、自分を責めてしまうという声がしばしば届きます。しかし、これは決して特別なことではなく、不妊治療が身体だけでなく心にも大きな負担をもたらすからこそ起こる自然な反応と言えます。治療の結果が見えない不安、時間や経済的な負担、周囲との価値観の違いなどが重なることで、これまで自然にできていたコミュニケーションが難しくなることは珍しくありません。
大切なのは、こうした気持ちを「弱さ」や「未熟さ」と捉えないことです。むしろその気持ちは、これまで願いに向き合ってきた時間の深さから生まれるものとも言えるでしょう。人との関わり方に正解はありません。心が追い付かないときは距離を置くことも一つの選択ですし、話したいときには電話相談を利用するという方法もあります。治療と同じように、人間関係についても、ご自身のペースで選んでいくことが大切です。
自分を責め過ぎずにいてください。これまで積み重ねてきた思いや歩みが、少しずつ心の安らぎへとつながっていく。そのように感じられる日が訪れることを願っています。
