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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第48話>拝啓 厚生大臣 小泉純一郎殿

第816号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 日ごとに春めく今日この頃ですが、小泉さんにおかれましては、ますますご清祥のこととよろこび申し上げます。小泉さんの郵政3事業の民営化へのこだわりといい、1995年9月、自民党総裁選への果敢な挑戦といい、女性ならずとも惚れてしまう活躍ぶりに、小泉ストーカーのひとりとして、BARTの記事を追いかけてきました。
 しかし、そんな私の夢を打ち砕くかのような、97年3月24日号「ピル解禁!!大丈夫?」の発言。開いた口がふさがらないというか、ピルに対する誤解、偏見、歴史認識の甘さなどなど、ストーカーだからこそ、語らずにはおれなくなりました。

 興奮を抑えることができないままに、こう書き始めたのは、隔週発売の男性誌で「現役厚生大臣の熱血コラム」を連載している小泉大臣の記事を見つけたからだ。テーマは「ピル解禁!!大丈夫?」。その中で、「薬というのは本来、体内の異常な部分を正常にするもの。だがピルはその逆で、正常な生理機能を異常にさせるのが気がかりです」を小泉語録として掲載していた。さらに読み進むと、「ピル、玉子、サウナ。このどれもが、人間の快適さの欲求から生まれているような気がします」とくる。庭で放し飼いさせた健康な親鶏が産む自然な玉子なら信じられる。サウナで絞った汗と、労働やスポーツでかいた汗とは成分が違う。避妊のためとはいえ、体の正常な機能を異常にするピル。努力をしないで簡単に、都会生活の状態だけを追求しているとはいえないかというのだ。“変人”と呼ばれていたとはいえ、現役厚生大臣の発言としては許せないとばかりに、世に言うホワイトデーである3月14日付けで4,724文字の書簡を事務所に送るとともに、堂本暁子議員の口添えをいただき4月23日に大臣を訪ねることになった。
 小泉大臣に向けて、医学的な視点でのピルの話と、いつ終わるともわからない不可解な日本でのピルの話を20分ほどだったろうか、口角泡を飛ばして語り続けた。大臣は、筆者の話を頷きながら聞いていてくれたのを覚えている。
 筆者は、VIPに接見する機会があると必ずすることがある。色紙を持って行くのだ。そして、不躾であることは承知で、「是非ひとこと」とお願いする。小泉大臣も手慣れた様子で「春風接人 北村邦夫大兄」と筆を走らせた。「春の日に吹く穏やかな風のように人に接する」という意味なのだろう。確かに、初対面である筆者にも不愉快な気持ちを抱かせることなくお会いいただけたことを感謝している。しかし、ピルを巡っては、このことを契機に何ら進展があったわけではない。



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