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“抱っこをするお母さん”に似合うウィッグを──子育て世代のアピアランスサポートの必要性(アピアランスサポート東京・村橋紀有子さん)

もし、子育て中にがんになったら?
がん治療中であっても、母であることに変わりはありません。だからこそ、子育て中の「抱っこするお母さん」「学校行事に行くお父さん」など本当に必要な外見ケアとは何か。一人ひとりのライフステージに寄り添った、きめ細やかな「アピアランスサポート」をしているアピアランスサポート東京・代表の村橋紀有子さん(以下、村橋さん)にとも育てについてお伺いしました。

がん治療中の“見た目の悩み”、その先にある心のケア

アピアランス(外見)ケアは、単に見た目を整えるものではなく、その人の心を支えるケアでもあります。とくに子育て中のお母さんが抗がん剤治療などを受ける場合、外見の変化は想像以上のストレスになります。

ウィッグやまゆ毛、まつげ、ネイルなどの変化に対する不安はもちろんのこと、「子どもがどう思うだろう?」「公園で浮かないだろうか?」といった、日常生活にまつわる悩みが付きまといます。

また子ども関係だけではなく、働いているお母さんが多い昨今、仕事環境も考慮したアピアランスケアも必要。

そんな時、美容施術の知識だけではなく、その人の暮らし・家族・体の状態に合わせた提案をする。それがアピアランスサポート東京で村橋さんが心がけているアプローチです。

がん治療中でも使えるネイルカラーを使ったワークショップなども開催

子育てと仕事、自営業のリアル──“とも育て”で乗り越えた日々

美容師歴25年。地域密着の美容室を営む村橋さんは、ご自身も子育てをしながら仕事を続けてきた一人です。

高校卒業後すぐに資格を取ったわけではなく、結婚を機に20代後半で美容師免許を取得。その後、技術を磨くことに夢中だった修業時代を経て、子どもを出産しました。

出産後、経営するサロンもあるため、子育てに専念する選択肢は選ばず、子育てと仕事(自営業)の両立の日々がはじまりました。

子どもが小さかったころは、保育園や幼稚園、そして小学校と進むなかで、地域の友人や家族のサポートを得ながら、まさに「とも育て」で乗り越えてきたと語ります。

自営業には、時間の自由があるという側面もありますが、お客様の施術が始まれば手を止めることはできません。目の前のお客様を最優先にせざるを得ない──その現実を、象徴するような出来事がありました。

それは、東日本大震災の日のこと。
当時、村橋さんはサロンでお客様にカラーリングの施術をしていました。そこへ、あの大きな地震が。慌ててカラー剤を洗い流し、目の前のお客様の安全を確保することに必死だったといいます。

一方で、頭をよぎったのは幼稚園に通うわが子のこと。連絡もできず、迎えに行く時間も取れない。そんなとき、突然背後からお尻に「ぎゅっ」と抱きつかれたのです。

振り返ると、そこには無事の子どもが──。
幼稚園のママ友が気を利かせ、家まで送り届けてくれたのでした。
「本当に、手が離せなかった。心細い思いをさせてしまったけれど、友達が連れてきてくれてよかった」
村橋さんは、今でもその瞬間のことをはっきり覚えていると話します。

災害時の出来事は特別な状況ではありますが、日常のなかでも仕事をしているとどうしても子どもと一緒にいられる時間は限られてしまいます。

それでも村橋さんは「一緒にいられるときは、その時間を濃厚なものに」と意識してきました。たとえば、寝る前に絵本を読んだり、ぎゅっと寄り添って眠ったり。

そのひとときを大切にすることで、愛情はしっかりと伝わると信じてきたといいます。
「いま大学生になった我が子を見ていると、あの頃の思いはきっと届いていたのだと思います」と語ります。

「子どもと接する時間が少ないことで罪悪感がある方もいると思います。でも、一生懸命働く親の姿も、子どもにはちゃんと印象に残るものです。子育て中の人は頼れるサポートに感謝してフル活用し、使える時間を大切に。」

“3歳の抱っこ”から始まるウィッグ提案──聴く力が心をひらく

そんな自身の子育て経験があるからこそ、村橋さんのアピアランスサポート時の“傾聴”の姿勢には深みがあります。

単に「がん患者として」ではなく、「母として」「働く女性として」「人生の途中にいる一人の人として」その人の声を丁寧に聴き取る。

たとえば、がん治療中の女性がこう話したとします。
「まだ3歳の子どもがいます」と。

村橋さんはすぐに、「では、長いウィッグだと抱っこのときに髪が引っ張られてしまうかもしれませんね。短めのスタイルで可愛らしく仕上げましょうか」と提案します。

その提案で「私のことを理解してくれた」と思った瞬間に、一気に距離が近づくといいます。

外見が整うことで、「治療中の自分」から「いつもの自分」へ気持ちが切り替わります。

1人1人の生活に合ったウィッグを提案

お母さんが笑顔で過ごせるための外見ケアを全力でサポートしたい──村橋さんが実践する“とも育て”のかたち

人生のどんなステージにいても、それが、がんなどの病気を経験しているときでも、子どもを育てるお母さんやお父さんの気持ちに寄り添い、少しでも子育てがしやすくなるようにアピアランスサポートをすること。それが村橋さんにとっての「とも育て」です。

「アピアランスサポートを通じて、外見への不安を軽減し、自分の姿に納得できるようになれば、自然と気持ちも明るくなります。親が自分らしく、笑顔でいられること。
それが、子どもにとっても何より大きな安心になるのです。」

プロフィール

村橋 紀有子(むらはし・きゆこ)さん
アピアランス・サポート東京
アピアランス・サポート相談室 室長

美容師及び管理美容師。巡活マッサージ マスターインストラクター、日本エステティック協会認定エステティシャン、日本コスメティック協会 コスメマイスター及びスキンケアマイスター等、美容に関する資格を有する。現在、東京慈恵会医科大学付属病院や港区立がん緩和ケア支援センターにて、アピアランス・サポート相談室を定期開設し、患者さんの相談に応じるとともに、医療者や美容師向けに、美容専門家として、がん患者さんに寄り添ったアドバイスを行うための基本理念と必要な知識技能を普及する教育活動や、企業、大学生向けにアピアランス・ケアへの理解を広める講習活動などを行ってる。

取材・文:大井美深(おおいみゆき)
大学院で機能性食品素材の研究を経て、医療・ヘルスケア分野で情報サイトの企画・運用、広報業務を担当する。記念日を利用した公募企画、乳がん・子宮頸がんなどの患者支援団体との協力実績多数。エンターテインメントとヘルスケア情報配信のコラボレーションなどを得意とし、ヘルスリテラシーの向上に貢献する活動を幅広く行う。

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