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一般社団法人 日本家族計画協会

機関紙

【第742号】平成28年1月1日発行(2016年)

2016年01月 公開

1月号の目次   有料購読のお申し込みはこちら

1面 ・新春によせて

   ・編集帖

2面 ・あなたの大切なものを考えて

   ・恩師・玉田太朗先生の急逝を悼む

3面 ・平成27年度 ブロック別母子保健事業研修会全て終了

   ・データ分析による効果的な保健事業 他

4-5面 ・目で見る日本の人工妊娠中絶

6面 ・「前向きな子育て」のための支援

   ・シリーズ遺伝相談<10>

7面 ・海外情報クリップ(米国の緊急避妊薬の処方実態、他)

   ・OPEN HOUSE

8面 ・産婦人科医による性の健康教育<10>アトラスレディースクリニック 塚田訓子

新春によせて

本会会長 近泰男

夢と希望を持てる 豊かな国へ向かって


 読者の皆さまには、ご健勝にて新しい年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。
 1954(昭和29)年に発足した本会も本年は63年目を迎え、役職員一同、気持ちを新たに、さらなる発展を目指して公益民間団体としての活動に邁進してまいりますので、本年も変わらぬご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
 今、地球社会は73億という人口を抱え、さらに増え続けながらも、さまざまな問題を抱えています。先進国と開発途上国の経済格差から生じる諸問題、地球温暖化などの深刻な環境問題、暴力的過激派集団の活動激化―昨年は現実に「イスラム国」によるパリの同時多発テロが起きています。また、アフリカ諸国のテロを含めた紛争、シリアなどの紛争地域から逃れる難民の激増、世界各地の異常気象による災害等々、今すぐにでも解決しなければならない問題が続発しております。
 これらの問題は日本にとっても他人事ではなく、政治がこれにどう対応して行くのか、本年も日本の政治力、特に外交力が問われる大きな問題になってくると思われます。第二次世界大戦で海軍の特攻要員として戦争に参加し、その悲惨さを経験してきた筆者にとって、前述の地球規模で起きている問題を見ると、今の若い人たちに対して、そして生まれてくる次の世代に対して、絶対に戦争をはじめとした負の遺産を残してはならないと、こいねがっております。
 本会は家族計画を人権として捉え、「生む自由」「生まない自由」を堅持し、「全ての子どもは周りの人たちから祝福され、待ち望まれて生まれてこなければならない」の理念の下に啓発普及活動を推進してまいりました。
 安全な妊娠・出産をどうしたら確保できるか、望まない妊娠の結果である人工妊娠中絶を防ぐにはどうしたらよいか、生まれた子どもが虐待されない社会をつくるにはどうしたらよいか、課題は山積しています。これらの課題を解決するための施設が全国各地につくられ、相談やクリニックサービスがいつでも誰でも受けられる社会づくりのための事業を、本年もまた続けてまいる所存です。
 子どもを生みたいとこいねがう根底には、世界が、もちろん日本も戦争や紛争の起らない平和な社会であることが必至です。子どもの貧困をなくし、夢と希望を持てる豊かな国になることが、出生率を上げることにもつながる大切なことなのだと、訴え続けてまいりたいと存じます。
 年の初めに当たり、本年が皆さま方にとって輝かしい年になりますよう、心から祈念するとともに、本会に対する変わらぬご支援・ご協力を再度お願い申し上げ、新年のごあいさつとさせていただきます。

データ分析による効果的な保健事業

データ分析セミナー開催

 本会が主催する「データ分析セミナー」が、昨年11月26日、東京都文京区で開催された。このセミナーは、今年度から始まったデータヘルス計画など、データを活用した保健事業を展開するための基礎となる、データ分析をテーマとしたセミナー。ここでは、当日行われた四つの講演の中から、厚生労働省保険局保険課・岩井恒太氏が行った「年次計画に基づく事業実施のポイント」をご紹介したい。

 「闇雲に分析をしても、お金がかかるだけ。計画をするにしても、分析をするにしても、当たりを付けてトライアルを起こす必要がある」と、岩井氏は語った。
 初めに例に挙がったある健保組合は、被保険者の約8割が女性で、20~30代が約6割を占めている。この集団であれば、メタボリックシンドロームは少ない。実際にこの健保組合では、こうした加入者構成を踏まえて、女性に特有の疾患に対する保健事業を行った。
 「分析を行うことによって、この企業においては乳がん検診についてしっかりと認知してもらい、受診してもらう必要があると考えた。そして、会社一丸となって受診を呼び掛け、受診率の向上につながった」と語る。
 この他、複数の事業所を抱える総合組合では、地域ごとに分析をし、それぞれの課題を見る必要がある。また、業種などによっても内容は大きく異なるため、それぞれの集団の特徴を、まずはデータによって把握することが重要なのだ。
 また岩井氏は、単一組合で重要なポイントを説明。まず挙げられるのが、トップのコミットだという。経営者が旗を振って従業員の健康を考えているか、そういったメッセージを送っているかが鍵となる。実行体制を組めているかも重要だ。どこも人材が潤沢にいるわけではない。企業と健保組合やその他の部署が連携して、PDCAサイクルを回すことが必要だという。
 では実際、個人へ健康情報を提供するには、どのように行うのが効果的なのか。「(健診結果を見ても)自分のリスクファクターについて理解している人はほとんどいない。各個人の情報に基づいた、オーダーメードの情報が重要」という。具体的には健診データから、全体の平均値と対象者の検査値を併記して、対象者が全体のどこにいるかを明示したり、「あなたの健康年齢は50歳です」といった情報提供を行うこともアプローチの一つ。もちろん、何が原因でこの数値なのかも同時に示す。単に結果だけを伝えるのではなく、データを分析し、その人にあった情報提供をすることが重要なのだ。
 インセンティブを活用し、住民が参加しやすい健康プログラムを行っている自治体もある。歩いたりイベントに参加することでポイントが付与され、そのポイントは地域商品券や企業のポイントカードなどに還元できる。初めはこうしたポイントを目的に健康行動を起こすが、その後もしっかり習慣化しているというデータも出てきているという。こうした取り組みは、普段から健康行動を起こす集団を広げ、また継続させることにも寄与しているのだ。

目で見る人工妊娠中絶

本会理事長 北村邦夫

昨年11月5日、厚生労働省から「平成26年度衛生行政報告例」(母体保護関係)が発表された。同年度の人工妊娠中絶実施件数(以下「中絶数」)は18万1905件、中絶実施率(以下「中絶率」)は6・9で、1949年以降最低を記録した(前号トピック既報)。55年の中絶数は117万件を数えており、54年に創立した本会が「Every child a wanted child」(生まれてくる子はみな待ち望んで生まれてくる子であってほしい)をスローガンに戦ってきたことを顧みると、まさに隔世の感がある。今号では、2014年度の中絶統計などを駆使して「目で見る 日本の人工妊娠中絶統計」をまとめた。


 
中絶によって丙午の出生数が減少した
 わが国の中絶統計は2002年以降衛生行政報告例という報告様式に変更になり、「年度」統計となっている。手元には1949年からの中絶統計があるが、49年には24万6104件だったものが、55年には117万0143件と報告史上最多を記録している。100万件を超えていたのは53~61年で、以降漸減し、87年に50万件、93年に40万件、2005年度に30万件、12年度に20万件を割り、直近14年度には18万1905件となっている(図1)。
 図2には出生数と妊娠数(出生数+中絶数)中の中絶割合の年次推移を図示した。特筆すべきは、1966年の丙午(ひのえうま)での出生数の落ち込みである。丙午の年は迷信と中国の干支の属性から、産むことが敬遠されるという歴史がある。ところが、出生と中絶のデータを見ると、この出生率の極端な低下が妊娠の回避ではなく、中絶によってコントロールされていたことが分かる。

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対象者を絞ったきめ細かな避妊指導を
 表1にあるように、ここ数年間における中絶数の減少は顕著であり、2014年度を見ると、前年比総数では4348件、20歳未満でも1505件の減となっている。一方、40~44歳では81件、45~49歳は44件増加しており、産み終え世代での中絶数の増加が問題視されている。これは、本会が2年ごとに実施している「男女の生活と意識に関する調査」の結果で明らかにしたように、性交回数の減少が避妊に対する意識を低下させ、「いきなり妊娠」を招いているともいえる。
 出生数と中絶数を足し合わせて妊娠総数と定義し、そのうち中絶がどれくらいの割合を占めるかを見ると、さらに、その実態を知ることができる(図3)。少子化時代において家族計画指導はもはや不要ではないかとの意見もあるが、図3のように、対象者を絞った避妊指導の徹底が今もなお重要であることが分かる。

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中絶の地域格差
 全国(総数)の中絶率は6・9。最も高いのが鳥取の10・4で、熊本(10・0)、鹿児島(9・7)、福岡(9・5)と続く。一方、低いのは奈良(3・4)、埼玉(4・3)、千葉(4・7)、滋賀(4・9)であった(図4)。これをマップで示した(図5)。中絶率を9・0以上、7・8~8・9、6・9~7・7、5・9~6・8、5・8以下というように5分位数で色分けしたもので、色の白い方が中絶率の低い地域となっている。西高東低と一刀両断にしてしまうのはいささか乱暴であるが、地域格差は歴然としている。
 20歳未満について見てみよう(図6・図7)。全国が6・1に対して高率なのが福岡(11・1)、熊本(8・4)、北海道(8・3)、長崎(8・2)。低率地域は奈良(2・9)山梨(3・5)、富山(3・7)、茨城(4・1)となっている。

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各種避妊薬普及の地域格差
 1999年には低用量経口避妊薬(OC)が、2008年と10年には月経困難症の適用を有する低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP剤)が、11年に緊急避妊薬「ノルレボ錠0・75㎎」がそれぞれ発売されている。いずれも高い避妊効果を期待できる近代的避妊法である。これら避妊薬の普及が中絶減少に貢献することは先行研究からも明らかである。
 発売各社から寄せられた売り上げデータをもとに、中絶率との関係を探った。OCが発売される以前から中絶率は減少傾向にあったことから、単純には推定できないが、OCとLEP剤、ノルレボ錠の普及がわが国の中絶率を減少させるのに寄与している可能性は否定できない(図8・図9)。
 それでは、地域格差についてはどうだろう。低用量OCとLEP剤、ノルレボ錠の普及が、都道府県別中絶率にどのような影響を及ぼしているかを探った。低用量OCとLEP剤については14年の1年間、ノルレボ錠は14年度統計であること。ある女性は低用量OCを数年間服用している、ある女性は12月から服用を開始した。これらが混在していることを承知の上で、生殖年齢と呼ばれる15~ 49歳の女子人口千人当たりの売り上げ状況を計算してマップにまとめた。

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1.低用量OC(図10)
 低用量OCの売り上げシート数を見ると、最多は東京で349・9、青森339・0、北海道264・5、愛知254・7と続く。最も低いのは島根101・1で、宮崎110・5、福井112・6となっている。

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2.LEP剤(図11)
 上位3位までは北海道134・4、群馬127・1、東京都126・8。下位は沖縄41・7、愛媛53・3、鹿児島55・8。

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3.低用量OC+LEP剤(図12)
 LEP剤にも避妊効果が期待できることから、中絶減少に寄与する可能性は高い。上位は東京476・7、青森420・6、北海道399・0。下位は沖縄157・6、鹿児島176・2、宮崎179・8。

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4.緊急避妊薬「ノルレボ錠」(図13)
 ノルレボ錠の売り上げシート数を見ると、上位は東京7・9、宮城5・7、富山5・0。下位は鳥取0・8、愛媛1・6、奈良1・7。

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近代的避妊法の普及と中絶率との間に相関はあるのか
 47都道府県については、14年(ノルレボ錠については14年度)の売り上げデータと中絶率との間に相関関係があるかを見た。ピアソンの順位相関係数の検定を行ったところ、低用量OC、LEP剤、低用量OCとLEP剤の足し合わせ、ノルレボ錠について都道府県別の個々の売り上げデータと中絶率との間には相関は認められなかった。しかし、全国を8の地方で分けて中絶率と各種避妊薬普及状況との相関係数を求めたところ、ノルレボ錠の売り上げとの間に、中程度の相関のあることが分かった(表2)。

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まとめ
 本会は1954年の創立以来62年間にわたって、望まない妊娠の防止、ひいては人工妊娠中絶の防止に積極的に取り組んできた。その取り組みの一つが、古くはコンドームの頒布、受胎調節実地指導員や思春期保健相談士を養成するセミナー、最近では「避妊と性感染症予防セミナー」に代表される指導者を対象としたセミナーの開催である。セミナーを通じて、避妊教育の在り方や近代的避妊法への理解を深めることに努めてきた。一方で、低用量OCや緊急避妊薬など近代的避妊法の承認・発売に向けた取り組みもその一つといえる。
 また、本会クリニックのホームページには「Dr北村が推奨する低用量経口避妊薬や緊急避妊薬の処方施設検索サイト」が置かれ、大勢の国民にとって利用しやすい環境を整備してきた。近代的避妊法関連の冊子の制作と頒布は指導者に留まらず、一般の方々への啓発に大いに役立ってきている。長年開設している各種電話相談やクリニックが、望まない妊娠の防止に大きく貢献してきたことは今さら言うまでもない。
 今回「目で見る 日本の人工妊娠中絶統計」をまとめるに当たり、中絶率に影響を及ぼすと考えられる近代的避妊法の普及状況など、特に都道府県別マップを描くことで地域格差のあることを再確認した。
 読者におかれては、「目で見る 日本の人工妊娠中絶統計」を参考にされて、それぞれの地域の問題点を明らかにし、取り組みの目標を定められることを期待したい。

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