天馬空 ~JFPA職員のリレーエッセー~
天馬空 ~JFPA職員のリレーエッセー~
第814号

 ピアノを15年ぶりに再開して約1年半。月2回のレッスンという少ない頻度ながら、なかなか上達してきたように思う。ただ、鍵盤を前に毎日何時間も練習していた小学校時代に比べたら娯楽として楽しむ余裕があるはずなのに、最近なぜか楽しめない。その理由を自分なりに考えてみた。
 なぜピアノを続けているのか。ピアノを始めた理由は簡単だ。発表会で披露するためではなく、純粋に音を楽しんでみたかったから。コロナ禍でも楽しめる趣味を作りたかったから。世の中に口遊めるメロディーはそこここに溢れている。その音色を自分の指で奏でられたらなんて楽しいだろうと。いま「summer」「戦場のメリークリスマス」と誰もが一度は耳にしたことがある曲を弾いているが、久しぶりにソロで弾き切ったときは言葉では表せきれないほど心が昂った。
 ただ弾けるようになって数ヶ月、最初の頃のように興奮を覚えず、思い通りにならない自分の指に苛立っている自分がいる。再開したときよりも明らかに弾ける曲は増えているのに、楽しめないのは何故だろう。明らかに私は、ピアノを弾く目標を失っている。
 一つの目標を達成したのなら、何事も新しい目標をたてないといけない。今までは自分が楽しむために弾いていた。今度は2022年を迎えるにあたって、自分だけでなく他人にも響く演奏がしたい。 (石本暉乃)



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