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海外情報クリップ

【海外情報クリップ】
女性ホルモンによる免疫力の増強―スウェーデン

第820号

◆ウイルス感染症に対して
 過去にSARS(重症急性呼吸器症候群)が東南アジアで流行した時、「SARSによる死亡率は女性より男性の方が高いのはなぜ?」というタイトルの論文が香港大学から投稿され、理由として職場環境、喫煙などが挙げられ、その後、男女間の性ホルモンの作用と量の違いによると考えられるようになりました。
 このような背景からスウェーデンのウメオ大学の研究者らは、新型コロナウイルス感染者を対象に(2020年2~9月、約1万6千例)、エストロゲン抑制状態の女性感染者(抗エストロゲン薬物治療の乳がん)、逆にエストロゲンを増加させた女性感染者(閉経後ホルモン補充療法)、いずれにも該当しない女性感染者(対照感染者)の3つのグループに分けて感染後の生存数と死亡数を調査しました。
 その結果、対照感染者の死亡数/生存数の比を1とした場合、エストロゲンを抑制した感染者との比(オッズ比)は2.35、これに対してエストロゲンを増加させた感染者とのオッズ比は0.45とほぼ半減していました。併存疾患の有無や感染時の年齢などで補正したところ、エストロゲン抑制の感染者のオッズ比は1.21に低下しましたが、エストロゲン増加の感染者では0.47と変化なしでした。
 同じ年に発表された米国の実験結果によれば、健常人男女の気管平滑筋細胞にエストロゲンまたはテストステロン(男性ホルモン)を添加して細胞表面に発現する物質(ACE2)の量を見たところ、男女いずれの細胞でもエストロゲンは発現量を減少させ、テストステロンは逆に増加させることがわかりました(Kalidhindi 2020)。新型コロナウイルスはACE2に結合することでヒト細胞内へ侵入することからその影響の違いがよく分かります。実際、新型コロナウイルスによる死亡率を見た47か国のデータでは、女性に比べて男性の方が平均で約2.5%高くなっていました(Chanana 2020)。

参考 Sund M, et al. BMJ Open. 2022;12

(翻訳・編集=オブジン)



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