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海外情報クリップ

【海外情報クリップ】
幼少期の虐待と自殺―香港

第811号

◆香港からの報告
 児童虐待は、自殺企図の危険因子の一つに挙げられています(WHO)。しかしその実態、例えば虐待からいつ自殺企図が発生しているのかなどはよく分かっていません。
 香港では過去約10年間で1万人あたりの虐待件数は2倍を超えました。この社会問題を啓発する目的で、香港大学小児・思春期医学の研究グループは、過去の公立病院の登録データを使って調査を行いました。虐待を受けたために事故・救急部などへ搬送された患者は(18歳未満)過去20年間(~2016)で約1万2千人、このうち、自殺企図をその後に起こして同様に病院搬送された患者は445人でした。これらの患者を虐待による入院時点から追跡すると、5年間の累積で自殺企図による入院が発生した割合は約0.2%でしたが、10年間累積で見ると4%まで上がり、同様に15年間では6%、20年間では7%まで上昇し、割合を平均すると1万人あたり370件で、一般集団の27件(香港社会福祉協議会、2014)と比べていかに高いかが分かります。性別では女性の方が男性より発生率は高くなっていました。また、4割近くは同一患者の繰り返しでしたが、ここでも女性の方が多くなっていました。男女全体で見ると、被虐待時の平均年齢は8歳、自殺企図の平均は14.2歳でした。
 引用されている別の研究(Dunn, Depress Anxiety 2013)によれば、虐待被害時の年齢によりその後の自殺関連リスクに違いがあり、学齢前3~5歳(特に5歳)で虐待被害を受けた場合は、その後に自殺念慮が発生する割合がこの層で最も高く、また、身体的虐待被害者に比べて性的虐待被害者は自殺念慮の割合が大幅に高くなっていました。性的虐待の発生は5歳をピークとして、それ以前と以後は低く推移しましたが、これに対して身体的虐待の場合は、5歳時まで大きく上昇してその後も持続かより高い傾向でした。
参考 Wong WHS, et al. Crisis. 2020 41(3)

(翻訳・編集=オブジン)



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