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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第36話>ピル認可延期に関する本会医学委員会の見解

第804号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 1987年に治験を開始して以来、低用量経口避妊薬(ピル)の早期認可が待たれていたが、エイズの蔓延(まんえん)を防止するという観点から、認可が遅れるとの情報が一部の新聞で報道された。ピル認可の早期実現を推進してきた本会医学委員会(松本清一会長)では、この情報を重視し、3月23日、緊急の委員会を招集。「エイズ予防は正しい知識の普及と性教育で」というメッセージを盛り込んだ見解を発表することを決めた(「家族と健康」第457号、92年4月号)。以下、その概要。
1.中央薬事審議会配合剤調査会は、87年より実施されたピルの臨床治験の結果を踏まえ、ピルの安全性と有効性について検討し、その臨床応用の是非を調査する機関であって、ピルの認可がエイズの蔓延を引き起こす可能性があるからということで、認可を先送りするというのは、ピルの治験結果の判定という本来の目的を逸脱するものである。
2.エイズの蔓延防止は、ピルの問題とは直接の関わりはなく、エイズの正確な知識の普及、性教育の推進、感染機会のある者が適時にコンドームを使用するよう周知徹底することで成し遂げられるものである。望まない妊娠を予防する目的で開発されたピルとエイズの蔓延防止とを同次元で論じることは不可解である。
3.エイズの蔓延の防止は、現在、ならびに将来にわたって、緊急かつ重要な国家的課題であるが、ピルがエイズ感染を拡大させるという確たる調査研究をもたない今日、ピル認可を延期させる理由とはなり得ない。
4.ピルの認可に向けて行われてきた治験は、実に5千人余、6万5千周期にも及ぶものであり、多くの女性と関係者の協力なしには果たし得なかったものである。協力を惜しまなかった女性の中には、治験終了後も、やむを得ず副作用の可能性が高い中・高用量ホルモン剤を代用してピルの使用を継続しており、その数は50万人を超えるとも言われている。治験の結果として、ピルの安全性と有効性についての客観的な評価がなされた今日、可及的速やかにピルの認可に踏み切ることが道義上最優先されるべきだと考える。
5.世界各国で高頻度に用いられているピルの認可を延期することは、避妊の選択肢を拡げたいという日本女性の永年の期待を裏切ることになる。
6.本会医学委員会としても、国家的な課題となっているエイズ蔓延の防止のために、講ずるべき対策を検討し行動することを惜しまない決意を示すとともに、国としてもピルの認可に向けて審議を早急に再開するなど、速やかな対応を強く期待したい。



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