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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第70話>ピルの承認に反対する「生命尊重」ニュースが届く

第838号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫
 筆者がピル早期承認推進派であることを承知してか、「生命尊重ニュース」が頻繁に届くようになった。1998年4月、5月号から探ってみよう。
 4月号には、胎児をおびやかすピル問題について、平田国夫医師が3月に開催された中央薬事審議会が今春解禁の予定を見送ったと書いている。その理由として「ピルは未来を託す胎児に生殖異変を引き起こす恐れがある」と主張。「小なりといえども、私たちが考え、訴え続けた方向に動いた」と論じている。
 「生命尊重ニュース」は、生命尊重センターが発行している月刊誌であるが、いわゆるプロライフグループのひとつだと認識している。10頁には、「十代のピル下限に62%が賛意」との記事の中で、ピル解禁に際しては62%が年齢の下限を必要としていると回答。その理由は、①身体が成熟する年齢である②正しい理解判断ができる③性の知識もあり薬害について理解できる④家族計画が立てられる等。また、十代で解禁すべきでない理由として、①身体が未成熟(将来母体や子供に影響)②十代の性の乱れを助長する③エイズの拡大につながる④安易な性交渉により中絶が増加する等。
 5月号では、「ピルにさらされた胎児」という特集記事が組まれている。記事中、米国の女性動物学者、シーア・コルボーンらが著した『奪われし未来』から、「野生生物を脅かしている環境ホルモンが、人間にまったく無関係とは思えない。人類の未来もまた、危機に瀕しているのではないか」と紹介するなど、ピル=環境ホルモン説をことさら強調する記事構成になっている。この中で、科学的に如何と思われる記述がある。曾野綾子氏がサンデー毎日1996年4月12日号で書かれた記事である。「・・・ピルを飲んでいても、3~6%は妊娠するが、そういう状態で生まれた男の子が同性愛者になる可能性は、決して根拠がないわけではない。」という下りである。ピルと同性愛者とを結びつけるなど、全くといっていいほどに科学的根拠はない。しかも、政権与党にも相当な影響力を有している方の発言であるからなおさら問題ではないだろうか。曾野氏は、6月号でも「ピル簡単に解禁していいのか?」と厚生省事務次官以下全職員に訓示したとある。
 「生命尊重ニュース」のページをめくっていくと、「えり子のイキイキ放談」という連載が目につく。サンケイリビング新聞編集長の山谷えり子とある。2000年に衆議院議員に初当選しているから、政界に入る前の記事のようだ。筆者とは2005年5月11日、参議院少子高齢社会に関する調査会162国会で、ピルを巡ってけんけんごうごうの議論をした。



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