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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第46話>日産婦学会で「避妊法の実際」講演

第814号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 1996年4月にパシフィコ横浜で開催された第48回日本産科婦人科学会。筆者は生涯学習プログラムの中で、「避妊法の実際」をテーマに講演する機会を与えられた。
 当時の記憶をたどろうとファイルに入っていた教育医事新聞の記事を読み返してみると、学術集会とは言え、結構まともな講演をしている自分を知ることとなった。低用量ピルなどの近代的避妊法の速やかな認可実現の必要性を強調するだけでなく、改めて産婦人科専門医の責任の重さと意識の喚起を訴えているのだ。
 87年、低用量ピルの臨床試験が始まり、5千人の女性の協力で7万周期のデータが集められてきた。その後、9社12品目のピルの認可申請が行われたが、エイズが話題になる中、92年、十分な説明がないまま認可は延期された。さらに、日本産科婦人科学会や日本家族計画協会をはじめ、学際的4団体は、93年5月に「低用量ピルの早期認可の要望書」を厚生大臣に提出するも、それから3年を経ても政府からの回答はない。避妊法の安全性・有用性を科学的に検討する臨床試験を終え6年を経た今もなお、低用量ピルの認可・非認可の結論が出ないということは、我々産婦人科医が行った臨床試験が信頼に足るものとして評価されていないのではないか。このようにわが国のピルの扱いは不可解極まりない歴史を繰り返してきたとはいえないだろうかと訴えた。
 さらに、こうも続けた。「しかし、厚生行政の怠慢に怒りをぶつけるだけでは十分ではない。この分野ではわが国で最も高い学問レベルを有する日本産科婦人科学会の責任を糾弾されても仕方がない。近代的避妊法の導入に尻込みしている現状は、薬害エイズ問題にも似た、政・官・学・産の馴れ合いの結果とも受け取られかねない。年間40万件近い(当時)人工妊娠中絶に涙する女性たちの、声なき声を肌で感じている産婦人科の医師たちの、勇気ある行動への期待を、自らに課せられた責任と合わせて今一度ここに強調したい。」と結んでいる。
 今、振り返っても、学問を議論する学術集会の域を超えた講演に、誰に恐れるでもなく我ながらよくここまで言い切ったなあと感心している。
 この講演を契機にというわけではなかろうが、学術集会長であった水口弘司横浜市立大学教授(当時)の呼びかけで、日本産科婦人科学会、日本不妊学会(現日本生殖医学会)、日本母性保護産婦人科医会(現日本産婦人科医会)、日本家族計画協会、日本エイズ学会、日本性感染症学会が参集し、「低用量経口避妊薬使用に関するガイドライン検討委員会」が立ち上がった。



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