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ニュース・トピックス

令和3年度 健やか親子21全国大会(母子保健家族計画全国大会)
岩手で開催・配信

第814号

 2021年11月4~5日、「令和3年度健やか親子21全国大会(母子保健家族計画全国大会)」が岩手県盛岡市のいわて県民情報交流センターで開催された。今年は新型コロナウイルスの感染防止対策としてオンラインをメインとした開催となった。主催は、本会ならびに厚生労働省、岩手県、盛岡市、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会、公益社団法人母子保健推進会議。「心に寄り添い育む次代 ともに手を取りあって」をテーマに、講演、シンポジウム、功労者の表彰が行われた。

切れ目のない妊産婦メンタルヘルスケアの推進(シンポジウム)

式 典

 式典の冒頭、後藤茂之厚生労働大臣(代読=山本圭子子ども家庭局母子保健課長)があいさつ。「令和元年12月に施行された、いわゆる成育基本法に基づき今年2月に閣議決定された成育医療等基本方針では、成育過程にある子どもたちを取り巻く環境が大きく変化している中で、医療・保健・教育・福祉等より幅広い関係分野での取り組みの推進が必要とされた。このため、各分野における施策の相互連携を図りつつ、子どもの権利を尊重した成育医療等が提供されるよう、横断的な視点での総合的な取り組みを推進していく」と述べた。
 平成27年度より開始した健やか親子21第2次計画では「今後は成育医療等基本方針を踏まえ、普及啓発を行っていく。地域の皆さま方には引き続きご支援とご協力をお願いしたい。すべての子どもが健やかに育つ社会の実現に向け、私たちにできることは何かを共に考え、全国各地域での母子保健の一層の向上に大きく貢献することを期待している」とした。
 また式典では、令和3年度母子保健家族計画事業功労者への表彰式も開催。日本家族計画協会会長表彰は個人47人および3団体に授与された(秋号にて既報)。

シンポジウム

 シンポジウムでは、「妊産婦メンタルヘルスケアにおける地域連携」をテーマに、菊地紗耶氏(東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野院内講師)が基調講演を行い、妊産婦のメンタルヘルスケアにおける関係機関との連携の重要性を説いた。
 周産期は心理的な危機が生じやすい時期であり、「妊娠後は性ホルモンの影響で体は変化し、社会的役割の変化も大きくなる。子どもをもつことは嬉しく喜ばしいことである一方で、今までの生活から失ってしまうものや、子どもをもつという未知で圧倒的な不安が生じる可能性がある。そのような中で、抑うつや不安、不眠、自己肯定感の揺らぎなどの症状がみられる」とした。
 こうした心理的な危機が生じやすい時期に、母親が周囲から十分に援助してもらうことが「母親のウェルビーイング(幸せ)には欠かせない」とし、「母親のウェルビーイングは母親の自尊心を高め、母子関係、子どもの情緒発達への良い影響が期待できる」と述べた。
 また、周産期における社会的問題である晩婚化・晩産化や子育ての孤立、男性の育児休業取得率、DVなどの問題を挙げ、これらは妊産婦のメンタルヘルスと密接に関わっているとして、赤ちゃん訪問や産後ケア事業などにより、以前よりもサポートは拡充しているが、こうした問題を解決するためにも「妊産婦のニーズにあわせて、よりサポートを充実させていく必要がある」と訴えた。
 周産期メンタルヘルスへのアプローチと役割については、保健師による母子健康手帳の交付時や新生児訪問時などのポピュレーションアプローチ、心理士によるカウンセリング、精神科医による治療のハイリスクアプローチを説明し、「これらに切れ目のないことがメンタルヘルス支援では重要である」と強調した。
 菊地氏は「メンタルヘルス支援は大変で手がかかる側面もあるが、丁寧な関わりが母子と家族のウェルビーイングの向上につながるという認識をもってほしい。また、結果が見えにくい支援であり、時にスタッフの無力感や疲弊を招くこともあるが、セルフケアや職場内のメンタルヘルスケアも大切にし、チームで取り組むことが重要となる」とした。
 本大会の内容の一部は、健やか親子21ホームページにて1月末までオンデマンド配信している(https://sukoyaka21.jp/zenkokutaikai)。


併設集会 家族計画研究集会 in 岩手
これからの子育て「マルトリートメントを予防する」

講演1「ほめ育てのすすめ~マルトリートメントを予防する」

福井大学子どものこころの発達研究センター 教授 友田 明美

 マルトリ予防のキーワードは「親を褒めること。」親が自信を持つと子も褒めることができるようになり、親と子の関係性が良好になる、と説明した。
 加えて、親だけでなく、社会がともに子育てをしていく「とも育て(きょうどう子育て)」の視点が重要だとした。
 「深刻な虐待に至る前のマルトリや子育てそのものを家庭の問題だけではなく、社会全体の問題として捉え」、地域で子どもを育んでいくこともマルトリの抑制要因になると述べた。

写真1

講演2「周産期メンタルヘルス対策からのマルトリ予防」

福島県立医科大学ふくしま子ども・女性医療センター 教授 西郡 秀和

 実父によって引き起こされた児童虐待の調査データを示し、マルトリ予防には妊産婦とともに父親へのメンタルヘルスケア対策が急務であると説いた。また、「父親にも産後うつなどの不調がみられることを周産期医療や母子保健関係者が認識することが大切である」と述べた。

講演3「プレコンセプションヘルスケアにおけるマルトリ予防の位置付け」

本会会長 北村 邦夫

 将来の妊娠のために健康管理していく「プレコンセプションヘルスケア」からの視点で解説。
 計画外の妊娠・出産がマルトリを招きやすく、「妊娠の計画を立てて、行動することが大切」と、本会の活動理念に合致する講演であった。


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