職域保健の現場から

職域保健の現場から<64>働き世代の睡眠支援~メッセージを送り続ける~ 株式会社エクサ 白田 千佳子


 職域保健の現場で活躍されている方にさまざまな取り組みをご寄稿いただいている本連載。今回は、株式会社エクサ 保健師 白田 千佳子さんに、社内で展開している働き世代の睡眠支援についてご紹介いただきました。ぜひご覧ください。(編集部)


当社の紹介

 株式会社エクサは従業員が約1,300人のIT企業で、約7割がシステムエンジニア(SE)です。男女比率は8対2で平均年齢は約45歳、出社と在宅ワークを組み合わせたハイブリッド勤務の方が多い会社です。新入社員は毎年40〜45人くらい採用しています。健康相談室は、産業医(嘱託3名)と保健師(常勤1名)という体制です。社長が「社員の健康に優先するビジネス目標はない」と発信しており、健康経営優良法人の認定も取得しています。

新入社員へのメッセージ

 学生から社会人になり生活が一変することもあって、1日の使い方がうまくいかず、体調を崩す社員がたまにいます。平日の24時間を「仕事」「自由時間」「睡眠」の3つに分けたときに、どのようにバランスをとって過ごすかを考えよう、と4月初旬の研修で必ず話すようにしています。特にコロナ禍は、同期と食事に行くこともままならず、「誰かと話したい、つながりたい」という気持ちもあってか、夜な夜な友人とオンラインゲームをして睡眠不足になっている社員もいました。
 仕事でパフォーマンスを発揮するためには、必要にして十分な睡眠を取り、翌日に備えることもセルフケアの一つであると、伝えています。

ラインマネージャーへのメッセージ

 ラインマネージャー向けの研修で、部下に対して「気づいて、声をかけて、つないで」くださいとお願いしています。声をかけるポイントについては「食う、寝る、遊ぶ」で確認してもらっています。食欲があるか、眠れているか、好きなことを楽しめているか、どれも大事なことですが、中でも睡眠は外せません。眠れない日が続くと一気に仕事のパフォーマンスが下がり、明らかにミスも増え、周囲から指摘されたことで落ち込み、あっという間に悪循環に陥ります。
 今では、上司が1on1をしたときに「睡眠に課題がある」と感じると、その時点で健康相談室へ連携してくれることもあります。早期発見できれば対応する際の選択肢がいくつもあるので、早めにつないでもらうようにしています。

全社員に「睡眠の重要性」を繰り返し伝えたい

 当社では、部署ごとに年4回の衛生講話を実施しています。テーマは保健師がその時々で決めていますが、睡眠の話はよく登場します。日常生活を送る上でも、仕事をしていくためにも、私自身「睡眠が一番大事」だと思っているからです。どのようなテーマであっても睡眠は関係してくるので、いろいろな角度から繰り返し入れるようにしています。

・「インテリア×健康」(2022年度)
 一日に浴びる光の量「4・4・2」のバランスが最適であることを踏まえ、日中はカーテン越しに自然光を取り入れ、できれば気分転換に散歩もするよう促しています。夜は睡眠ホルモンといわれるメラトニンを抑制しにくい光、つまり「夕焼け、焚き火、キャンドル」のようなオレンジ系の光が望ましく、良い光環境に身を置くことも、睡眠サポートの一つであることを発信しています。

・「エクサ健康白書」(2023年度)
 加入しているJFE健康保険組合から毎年連携されている健康白書を、社員へフィードバックしており、健保全体と比較して「問診結果からみるリスクのある社員の割合」を提示して睡眠の話題も出しています。

・「プレゼンティーズムのあれこれ」(2024年度)
 睡眠確保が重要であり「睡眠の質×睡眠の量=大きい」方がよいこと、そうはいっても寝不足のときには「パワーナップ(効果的なお昼寝)」を試すことをお勧めしています。午後の眠気予防に向けて、カフェイン入りの飲み物を飲んで、12~15時頃に机にうつぶせて、20分程度の仮眠をすることが効果的であると伝えています。

・「持続可能な働き方」(2025年度)
 厚生労働省サイト「こころの耳」に掲載されている、「15分でわかる働く人の睡眠と健康」を紹介して、睡眠の量、睡眠のリズム、睡眠の質の3点について説明しています。労働者の疲労回復の一番の対策はシンプルに休むこと、というメッセージを伝える回であり、あらためて睡眠についても届けるようにしました。

介護による慢性的な睡眠不足

 いろいろな課題がある中で「介護と就労」に着目しています。介護に関わっている方は睡眠不足の方が多い印象です。
 先日、ある上司の方が部下の体調を心配して連携してくれました。ご本人と面談したところ、介護があって睡眠がとれず1~2時間おきに起きていることが分かりました。その方は二世帯同居しており親御さんの介護が必要で、慢性的な睡眠不足でした。仕事も慣れない業務を担当していて、八方ふさがりだったようです。相当な疲労蓄積が見られたので、上司へ状況を伝えた上で「しばらく仕事の負担軽減をする必要があります」と依頼したところ、すぐに調整してもらえました。
 自分の置かれている状況を周囲へはあまり話していなかったようで、「え!そんなに大変な状況だったのですか」と上司は驚いていました。

睡眠不足でつらいとき、仕事を調整できる職場でありたい

 自分のプライベートをどこまで話すか難しいところだとは思いますが、明らかに仕事にも支障が出るような状況であれば、勇気をもって話せる、誰かに相談できる「風通しの良い職場」にしていきたいと思いました。そして、睡眠不足でつらい時、仕事を調整できるような職場でありたいとも思いました。その第一歩として、2026年度下期に「介護と就労」をテーマにした座談会を企画しています。
 睡眠に限りませんが、「働きやすい、働きがいのある職場」にしていくために、会社にも社員にも貢献できる保健師でありたい、と思って日々の仕事に取り組んでいます。

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