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海外情報クリップ HPVワクチン接種と性行動の変化-コンドームの使用に関する調査

 デンマークでは、2009年からHPVワクチン接種が始まり、12~15歳の女子生徒には家庭医より無償で提供されています。ワクチンを接種する人は、ヒトパピローマウイルスに関する知識を持ち、性感染症予防の意識が高く、コンドームも使用する人が多いと考えられますが、その一方で、ワクチンを接種した人はリスクのある性行動、例えば性行為でコンドームを使用しないケースが増える可能性が懸念されています。安心感が上がるとリスク行動がかえって増加するという“リスク補償行動”の問題です。
 そこで、デンマーク南部大学公衆衛生学の研究者らは、ワクチン接種レジストリー(接種者登録)と、ハイスクール生徒を対象としたデンマーク青少年健康調査2019(平均年齢18歳)のうち、性交渉があり、ホルモン避妊薬を使用している約1万5千人の女子のデータを分析しました。その結果、コンドームの非使用者は、接種していない約1千人のうちの48%に比べて、1回以上HPVワクチンを接種した約1万4千人のうちの54%とやや高くなっていました。
 次に、パートナーとの関係(決まったパートナーと安定した関係にあるか否か)で見たところ、安定したパートナー関係の女性ではコンドームの非使用が76%(接種あり)、68%(接種なし)と高いことが分かりました。これらを除外して安定した関係にはない女子層だけで分析したところ、コンドームの使用率は逆に倍増し、ワクチン接種とコンドームの使用/非使用との有意な関連性はなくなりました。コンドームを使う/使わないという選択は、HPVワクチンの接種ではなく、パートナーとの関係に影響されると考えられ、実際、年齢が高いほど安定したカップルが多いことから、高学年層では関連性は弱くなっていました。
 パートナーとの安定した信頼関係があるということがリスク補償行動を示しているのではないかと考えられました。

参考:Algren MH, et al. Vaccine 56, 2025

(翻訳・編集=オブジン)

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