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海外情報クリップ 経口避妊薬(ピル)の服用と思春期女子の精神的影響との関連

 オランダでは、過去6年間で若年女性のピルの使用率は約6%減少しており、その理由の一つは、ピルを使用することでムード(気分)の変調を来す可能性を懸念して他の避妊法を選択する、あるいはピルを中止するからだと言われています。一般に、思春期男女の精神的不調には性ホルモンの変動が関わっているとされていますが、最近では、ホルモン避妊薬がムード変調を誘引する可能性を取り上げるソーシャルメディアが多くみられます。ホルモン薬と精神的影響に関する認識の背景には、この分野のエビデンスが明確に示されておらず、避妊薬を始めるときのカウンセリングが行き届いていないことも考えられます。そこで、オランダのエラスムス大学メディカルセンター精神医学部の研究者らは、同学部がすでに進めている前向きコホート研究(精神病質リスクのある思春期男女を10年間追跡する研究;iBerry研究)の中から、ピルと内在化問題行動(ひきこもり、抑うつ、不安)との関連性に注目して、ピルを使用する女性(204人)と使用したことがない女性(168人)を対象に調査しました。

 平均14.9歳と17.9歳の2時点において、心理社会適応性評価(Achenbach法)を行い、それらのスコアを比較しました。スコアは高いほど重症です。

 結果は、当初の予想に反して、ピル使用女性のスコアは非使用女性に比べてむしろ低くなっていることが示されました。特に、14.9歳での内在的問題行動の程度が診断の境界域を越えて高かった女性でみると、ピルの使用は非使用に比べて17.9歳時点でのスコアは有意に低くなっており、境界域以下の女性に比べて差はより顕著でした。

 研究者らは、ピルがPMSにも軽減効果があることを考えると、内在化問題行動のリスクがある思春期女性でも、ピルがリスクを軽減する方向に働いた可能性を示唆していると述べました。

参考:Bosmans N et al.BI Psych Open.2025

(翻訳・編集=オブジン)

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