ピル承認秘話

ピル承認秘話―わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)―第88話 性と健康を考える女性専門家の会が大臣に抗議文を送付

 1999年3月5日に厚生大臣宛に送付された抗議文である。


厚生大臣 宮下創平様

拝啓 3月3日の中央薬事審議会常任部会でまたも低用量ピルの認可が先送りされました。世界で安全性•有効性が認められている薬の審査にこれまで9年以上も費やしただけでなく、常任部会での審議が終了してもなお、添付文書の文言の修正などになお3ヶ月も時間を浪費するのは不当であり、抗議いたします。(中略)しかしながら、たとえ6月に認可になっても、女性がピルを正しく使えるようにならなくては意味がありません。その点でも幾多の懸念があります。

 問題の第一は、これまで厚生省が与えてきたピルのイメージがあまりにも科学的に証明された事実と異なるネガティブなものであることです。その結果、国民のほとんどがピルを副作用の代名詞のように信じております。このイメージを正すには、厚生省が誤った情報を広め認可を遅らせてきたことについて国民に説明と謝罪をし、そのうえでピルおよび他の避妊法の失敗率、副作用•副効用も含めて正しい情報を提供しなければなりません。

 避妊法の選択肢を増やすことも急務です。低用量ピルは大多数の健康な女性にとって安全かつ有益ですが、授乳中の女性やタバコを吸う女性など、エストロゲンが禁忌である女性もいます。そのような場合のために外国ではミニピル、銅付加IUD、薬剤付加IUD、注射法、皮下埋めこみ法など、避妊効果の優れた安全な避妊法がたくさんあり、女性は年齢やライフスタイルに応じて使い分けていますが、日本にはこれらがまったくありません。政府はまず、既に94年に申請が出されている銅付加IUDをただちに認可し、さらに製薬企業に他の避妊法の申請を呼び掛け、バイアグラと同じく国際基準で認可すべきです。

  女性が自分に合った避妊法を選び、納得して使っていくためには、検査よりカウンセリングが重要です。このシステムも日本の医療制度にはありません。

  さらに、医療関係者がピルや避妊や性感染症予防について熟知していなければ、カウンセリングはおろか適切な処方もできません。製薬企業の提供する通り一遍の知識では足りないのです。しかし、避妊が医療の対象になっていない日本では、産婦人科医や看護婦(士)でさえこれらの知識をもちあわせていません。政府はピル処方に関係する医療従事者に、避妊と性感染症予防の基礎知識とカウンセリング法の講習を行うべきです。

   国民の健康を守るのが役割である厚生省として、6月には間違いなくピルを認可するとともに、上記の対策について方針を示されるよう要望いたします。    

 敬具

                         会長  堀口雅子


バックナンバー
家族と健康