はたがや日和

はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~【864号】

思春期・FP相談LINE/避妊のためのピル&アフターピル相談室 相談員 來田 美鈴

 JFPAの相談になって今年で15年になります。きっかけは、地域の開業助産師として歩み始めた時に、JFPAの相談員をしていた先輩助産師に言われた言葉でした。「地域では母乳育児支援だけでは通用しない。地域の助産師としてやっていくなら、ピルと思春期のことを勉強しなさい。修行のつもりで、JFPAで相談員の経験を積んでおいで」と背中を押されました。それまでの助産師のキャリアの中で、ほとんど関わることのなかった世界でした。
 思春期の性は生涯の健康に関わる問題ということ、先日、緊急避妊薬の薬局での販売が始まりましたが、このようなことが、女性のSRHRにおいて、どのような意味をもつのか、など私はJFPAの相談員を経験することで学びました。
 近年は、学校教育において子どもたちが性教育を受ける機会が増えました。しかし、保護者への性の健康教育は十分ではありません。私は、母親が授乳を終えて卒乳するときに、ピルやIUS、HPVワクチン、子どもへの家庭性教育について話をしています。卒乳により母親の心身は大きく変化し、日々の育児の在り方も変わります。卒乳は、母親の心が未来に向けて歩み出す瞬間でもあります。これからの人生を健康に過ごすための性に関する情報に、母親たちは真剣に耳を傾けてくれます。中には、幼少期に性暴力を受けた経験や、夫婦間の性に関する問題などを話される方もいます。先輩助産師が、地域の開業助産師としてピルや思春期のことを勉強しなさいとアドバイスをしてくれた意味が、今は深く理解できます。
 昨年、私がボランティア活動しているこども食堂に、JFPAの相談員の一人が仲間入りしてくれました。それをきっかけに2人でこども食堂での性教育を始めることにしました。こども食堂の利用者には母子家庭もさまざまな事情を抱えた家族、障がいをもつ子どもたちが少なくありません。そのような親たちの性教育へのニーズは高く、こども食堂のランチの後の和やかな空気の中で、母親たちと「性」について語り合います。オープンな語らいの中で、母親たちは、自然にそばにいる子どもたちに「性」の大切なことを伝えています。家の中では難しくても、こんな場であれば話せるのかもしれません。
 最近は、保護者の同意を得て発達障がいや自閉症の子どもへの性教育も始めました。いつもおいしいランチを作ってくれているおばさんが身体の話をするなんて、と少し不思議に思ったかもしれません。しかし、私たちが想像していた以上に子どもたちは楽しんでくれたようです。ここには学校とは違う空気と人間関係があります。そのつながりが、大げさに構えなくても、“伝わる”性教育になるのだと思います。
 地域には、家庭の事情や障がい、文化的背景など、さまざまな理由で性に関する情報にアクセスしにくい親子がいます。だからこそ、助産師として、そして地域の一員として、誰もが安心して性について語り合える場を育てていきたいと思います。性教育は特別なことではなく、日々の暮らしの中で子どもたちの未来を守る力になります。これからも、地域の仲間とともに、家庭性教育の伴走者として、その小さな一歩を積み重ねていきたいと考えています。

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