はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~【863号】
東京都不妊・不育ホットライン 佐々木 良枝
東京都不妊・不育ホットラインにはいろいろなご相談が寄せられますが、病院についての内容もよくあります。現在はインターネットにも多くの情報があふれていますし、クリニックのホームページを見ればどこもいいことがたくさん書いてあります。特に東京都内にはあまたの不妊専門の医療機関があり、かえって選択に迷ってしまうというお話を伺うこともあります。「いい病院を教えてください」という質問を受けることもありますが、これはなかなかお答えしづらい質問です。なぜなら、人によって「いい病院」の意味合いがそれぞれ異なるはずだからです。妊娠率の高い病院、というのはもちろんでしょう。でも残念ながら「ここに行けば100%妊娠する」という保証はありません。相談員の手元には、高度生殖医療を実施する医療機関のリストはありますが、それを「いい病院」としてご紹介するわけではありません。では「いい病院」とはどういうものなのでしょうか。
病院選びの基準にはさまざまな要素があります。例えば、病院や医師の治療方針、実際に行なっている治療内容、病院の設備、自宅や職場からの通いやすさ、医師との相性、スタッフの応対、待ち時間、カウンセリングの有無などなど、どれも大事なことですが、その中でも、自分たちが何を最も優先したいのか、自分たちのライフスタイルや価値観、年齢、治療歴、不妊原因なども考慮して、どういう条件の病院なら自分たちの希望により合っているか検討してみるといいのではないでしょうか。
先日、「来月で40歳になるが、その前に受診したい」というご相談を受けました。「1人目は自然妊娠だったので2人目もすぐできるだろうと思っていたが、なかなかできず気付いたら39歳になっていた。体外受精は保険適用の回数制限があることを最近知って焦っている」とのこと。年齢的なことを考えればすぐにでも高度な治療に対応できる不妊専門クリニックをご紹介すべきかと思いましたが、よくお話を伺ってみると「本当は体外受精とか人工的な治療はしたくなくて、ずっとタイミング治療だけをしてきた。はっきりとした原因もないし…」と本音の部分を話して下さいました。「妊娠率が高い病院は気にはなるけど、物のように扱われるんじゃないかと不安で…」ともおっしゃっていました。しばらくお話ししながら一緒に考え、まずは気になる病院の説明会に行ってみることになりましたが、「年齢のことで焦っていたことに気付いた。少し落ち着いて考えてみます」と笑っておられました。
病院選びは、治療にどう取り組むかだけでなく、自分たちがどう生きていきたいかということにも関わる問題のように思います。東京都不妊・不育ホットラインでは、①安心して話せる場の提供②問題整理の援助③自己決定の援助④主体的に医療を受けるための援助、を心掛けています。そのような支援を今後も続けられたら幸いです。
