はたがや日和

はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~【859号】

思春期・FP相談LINE/避妊のためのピル&アフターピル相談室 相談員 圡屋 啓子

 前号に引き続き「マスターベーション」を少し違う視点からお話ししたいと思います。「JFPA思春期・FP相談LINE」には、連日男女共に「マスターベーション」についての悩みが多く寄せられます。私が相談員となった頃はまだLINEではなく電話相談の時代でした。電話口で相談者から語られる個々のマスターベーションに関する相談に対して、当初は戸惑いの気持ちもありました。どのような声の調子で、どう返答していけば良いのか、しばらくの間は自分の中での葛藤があり、先輩の様子を見ながら訓練をしたなぁと振り返っています。
ご存じの通り、マスターベーションは「自慰」「オナニー」とも言いますが、最近では「セルフプレジャー」というポジティブな印象を持てる言葉でも知られるようになりました。自分自身の性を豊かに楽しむためにも大切な行為です。性教育を行う際にも、トピックの一つとして触れることも珍しくなくなってきたのではないしょうか。
ちょうど1年前のことです。ご縁があり、日本思春期学会が発刊している「思春期学」の特集「マスターベーションの未来」に、相談員の立場から執筆する機会を頂きました。改めて「マスターベーション」に関する相談を見直し、その内容の概要についてまとめましたので、その一部をここで紹介します。


2021〜2023年度に当協会へ寄せられたマスターベーションに関連するLINE相談の中で、対象となった事例は男子147件、女子72件、概要の項目数はそれぞれ男子23項目、女子15項目に上り、多種多様な悩みの実態が見て取れました。
男子では「方法を問う」「回数・頻度やその是非を問う」「方法やおかずの是非を問う」というマスターベーションの方法そのものや、自身がすでに行っている方法の是非を問う相談が多い傾向にあリました。また、性欲の高まりによりマスターベーションを行う頻度が増えたことによる身体への影響を心配する声も多く挙がっていました。さらに、腟内射精障害の原因に繋がることで今日話題となっている床オナ・皮オナと言った推奨されない方法をすでに行っていることや、そのリスクをネットなどの情報で知った上で、改善したくても「推奨される方法ではうまくできない」という悩みも男子に特徴的でした。
女子では「方法の是非を問う」「身体への影響」「月経/妊娠との関係を心配」という項目が上位に挙がり、男子同様に自身がすでに行っている方法の是非を問う相談が最も高い割合を示しました。続いてマスターベーションの身体への影響、月経/妊娠との関係を心配する相談の割合が高く、痛みや出血など身体へのネガティブな影響を心配したり、知識さえあれば無用の心配であるはずの、月経や妊娠との関係を危惧していました。
マスターベーションは、自身の性欲コントロールだけでなく、自分の身体を知り、探検する性の楽しみ、行うことでリラックスできるなど多くのポジティブな側面を持ち合わせています。正しい知識とマナーを守った上で「自分の身体を研究しよう!」と言うメッセージを、今後も伝えていきたいと思います。


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