はたがや日和

はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~【856号】

思春期・FP相談LINE/避妊のためのピル&アフターピル相談室 相談員 阿部 ひとみ

 私は1年程前に勤務先の産婦人科でユースクリニックが立ち上がり、思春期保健相談士だったことからスタッフとして参加することになったのと同時にJFPA相談員に仲間入りしました。思春期の子どもたちの相談を聞く機会があまりなかったので、さまざまな相談に触れることで外来では聞けない子どもたちの悩みを知ることができました。

 外来には緊急避妊薬を希望して受診する子もいます。ですがLINE相談では「婦人科を受診するには勇気が出ず、アフターピルをもらうお金もない。彼と共に反省している。親にも言えない」といった相談もあるのです。受診行動につながるように回答を考えながらお伝えし、受診した時には今後も性行為のたびに不安な思いを繰り返さないようにピルの相談もするように伝えました。私はふと、勤務先の外来にも、誰かに言われて勇気をもって受診している子もいるかもしれない、せっかく病院に来てくれたのだからしっかりと悩みを聞き、今後のことを一緒に考えていけるように接しなければと、背中を押す側と、受け入れる側両方の立場を経験する中で、強く思うようになりました。

 また、産婦人科外来では男子の相談を受けることはまずないので、包茎、陰茎、自慰(じい)、形状や大きさにこだわる偏見や妄想からくる悩みを誰にも相談できず一人悩んでいる子が想像以上に多いことにも驚きました。女子でも妊娠するとは考えられない接触で月経予定日が1日遅れているため妊娠が不安。12歳で周りの子は来ているのにまだ初経が来ない、親にも言いづらいといった相談もあります。婦人科外来には妊娠や月経痛で受診する子はいますが、妊娠不安の段階で受診する子や、12歳の子自身が悩みを相談に来ることはほとんどありませんので、こんな時相談室の存在意義を実感します。

 SNSで知識を得るのが当たり前になっている世代。上手に利用できているなと感心する若者もいれば、どうやったらそんな情報に惑わされてしまうのかと思う相談もあります。学校などで性教育を学ぶ機会が少ない中、大量の情報から正しい知識を見分けるのは簡単なことではないと思います。性行為を経験した後に不安になる子が多い印象もあり、事前に知識をもっていれば過度に不安を抱くこともないのでは? 正しく避妊できなかった時も、ただ不安になるだけでなく、どう行動すれば良いのか考えられるのではないかと思います。性行為をする前に避妊や性感染症予防、性的同意などの正しい知識を身に付けてほしいとは思いますが、ネットで間違った情報を得たままよりも、LINE相談してくれて、たどりついてくれて良かったと思いながら回答しています。このような経験から無料で気軽に相談できる場所がもっと増えてほしいと願っています。

 それと、LINE相談で私が個人的に一番大変なのが文章でのやり取りです。緊急避妊薬を飲んだ方がいいかと相談があっても72時間の間に合うタイミングなのかも分からないなど、電話や対面なら早く進む話も一度の回答では応えきれないこともあります。LINEだとニュアンスが難しいのですが、伝わりやすくするにはどう答えればいいのか考え、苦戦し、工夫しながら、これからも思春期の駆け込み寺的存在でいられるよう対応していきたいと思っています。

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