はたがや日和~JFPA相談室へようこそ~【857号】
東京都不妊・不育ホットライン相談員 金子 友紀
2022年4月から、人工授精などの「一般不妊治療」や、体外受精・顕微授精といった「生殖補助医療」が保険適用になりました。この制度は、多くの方々に不妊治療への理解を深める良い機会を提供したと感じています。当初は「年齢や回数の制限」、さらに「先進医療が保険適用外」であることについての疑問が多く寄せられた印象があります。
昨年頃からは「回数や年齢の制限」に対する不安を抱える方が増えているように思います。保険適用の進展により、治療への関心が高まった一方で、これまで気にしていなかった方々も自分自身の状況を見直すきっかけとなったのかもしれません。「もしかしたら自分は不妊なのかもしれない」とか、「不育かもしれない」といった気持ちで相談される方もいらっしゃいます。
1人目を自然妊娠された方の中には、次のお子さんがなかなか授からない状況で、「自分は不妊ではないと思うのですが、こちらの相談を利用しても良いのか迷っています」とおっしゃる方もいらっしゃいます。このような方々は、「不妊」という言葉を使うことに抵抗を感じている様子が見受けられます。
「不妊」や「不育」といった「不」のつく言葉が持つ否定的な印象を考えると、心の中でその言葉が重くのしかかることがあるかもしれません。身体的な問題だけでなく、心の面でもさまざまな影響を与える可能性があります。
治療を進める中で、自分を「不妊」や「妊娠を継続できない」といったカテゴリーに当てはめることで、知らず知らずのうちに心の負担が増すこともあるかもしれません。本来は純粋に「子どもを持ちたい」という願いが、言葉の重みでプレッシャーに感じてしまうこともあるでしょう。
言葉の持つ力について考えてみると、自分自身を責め過ぎずに、前向きな気持ちを持つことが大切かもしれません。そして、自分に対する思いやりを持って、自分自身をいたわることができれば、少しでも心の安らぎを感じられるのではないでしょうか。
これまでの歩みが希望する未来へとつながることを、心から願っています。
※不育症治療に対する保険適用は、現状では一部の治療に限定されており、すべての不育症治療が保険適用となるわけではありません。