機関紙

【第671号】 平成22年2月1日発行(2010年)

2010年02月 公開
2月号の目次
編集帳
第8回思春期保健相談士学術研究大会 大会長からのメッセージ

・全国厚生労働関係部局会議(厚生分科会)開催

第31回全国地域保健師学術研究大会 徳島で開催
日本ピアカウンセリング・ピアエデュケーション研究会の現状と今後の課題
現代の子産み・子育てと親支援 大阪府富田林保健所長 佐藤拓代
平成21年度ブロック別母子保健事業研修会開催(関東甲信越地区 長野県)
「ヘルシー弁当」で健康づくりのための食環境整備

思春期はいま 思春期保健相談士への期待(11)

 

 現代の子産み・子育てと親支援


妊娠気から始まる育児支援ポイント

平成21年度健やか親子21全国大会
シンポジウム「親のちからを育てる支援のあり方」より

基調講演
現代の子産み・子育てと親支援

講師 大阪府富田林保健所長 佐藤 拓代
 
 
 昨年十一月十日~十二日に静岡市で開催された「平成二十一年度健やか親子21全国大会」(主催=厚生労働省、静岡県、静岡市、(社福)母子愛育会、本会、(社)母子保健推進会議)で行われたシンポジウム「親のちからを育てる育児支援のあり方」から、佐藤拓代大阪府富田林保健所長による基調講演「現代の子産み・子育てと親支援」の概要を掲載します。 (文責・編集部)
 

低出生体重児に多い生活習慣病
 「平均出生体重の推移」をみると、昭和五十五年付近が一番赤ちゃんの体重が重く、男児は三千二百グラム少し、女児は三千百グラムでしたが、平成十九年ではそこから約二百グラム減っています。

イギリスのバーカーの報告では、二千五百グラム未満と、三千四百グラム以上の赤ちゃんを比較すると、体重の少ない赤ちゃんのほうが十三倍ぐらい生活習慣病になっています。日本でも戦時中、小さい赤ちゃんが生まれました。昭和十七年から十九年ぐらいまでの男児の体重は三千五十グラム、女児は二千九百七十グラムですから、奇しくも平成十六年ぐらいと同じです。

頭のサイズはあまり変わらず、体のほうがちょっと細めという赤ちゃんが、飢餓状態で生まれてくる。小さく生まれてきたから、生まれてくると栄養を取ろうと思って、ぐんと体重が増えます。
胎児期の飢餓状態と、生まれてからの栄養に順応することが、思春期以降の生活習慣病の発症に関係しているのではないかといわれています。

ですから、諸外国では日本のデータを見て、この時代に生まれた人たちの二十数年後は肥満や糖尿病予備軍が多くなるのではと危惧されています。
そこで妊娠中の食欲を無理やり抑え付ける必要はないという揺り戻しが起こりました。「健やか親子21」の検討会の中でも、一人ひとりの体に合った体重の増やし方にしようという方針が出されました。これを守って、おなかの中にいる赤ちゃんに十分な栄養をあげていただきたいと思います。

十代の結婚「できちゃった婚」8割

 結婚期間が妊娠期間より短い出生、いわゆる「できちゃった婚」は、平成十六年の人口動態調査特殊報告で四人に一人です。年代別にみると、十代では結婚する人たちの十人中八人です。二十代の前半も六割が、準備ができていないままの出産です。私たちは十代ばかりでなく二十代の前半も、子育てに大変な背景があるのではないかと、気に掛けながら支援する必要があります。

55人に1人は高度生殖医療で誕生

 
 「体外受精・胚移植等を実施する登録施設数および出生児数の推移」(表1)をみると、平成十八年では一・七九%、五十五人に一人が高度生殖医療で生まれています。不妊治療をする医療機関は専門のところが多いので、そこで不妊の仲間ができる。赤ちゃんができると、お産をするために産科がある病院に移っていく。お母さん自身も、何か今までの仲間を裏切るような思いを持ちながらも、待ち望んだ赤ちゃんなのでうれしい。けれども、自分が今までつらい思いをしたことを話せないまま出産に至る。生まれると赤ちゃんは四六時中泣くし、思ったよりかわいくないし、「こんなはずじゃなかった」。こういう人たちの思いに寄り添った支援をしていく必要があります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
子ども虐待死亡事例、「望まない妊娠」5割
 
 
 子ども虐待による死亡事例の検証結果(表2)をみると、実母の妊娠期、出産期の問題では、望まない妊娠が五割。若年妊娠、母子健康手帳未発行、妊婦健診未受診が三割。三・四か月健診を受けていない、一一・五%。一歳半健診も受けていない、一七・六%。実母に心理的、精神的な問題が多く、育児不安もある。四か月健診が一番早い時期の公的機関のサービスですが、それでは間に合いません。
平成十九年度から、「こんにちは赤ちゃん」事業、四か月までの家庭訪問事業が始まりましたが、「相談できる場があります」というメッセージを送ることがとても大事です。

妊娠中の不安から胎児への愛着を育む

 赤ちゃんを産むのに、誰もが百パーセント喜びであるわけではありません。初めは「風邪薬を飲んだけど、大丈夫だったかな」など、いろいろな不安がよぎります。つわりを乗り越えて胎動が始まると、胎児とやり取りが始まって、喜びが勝っていきます。妊娠中期は安定して食欲も出てきて、お母さんも、これからの生活のことをいろいろと思い描きます。

いよいよ出産が近付いてくると、「どんな痛みなのかな」と、ものすごく心配になります。陣痛のさなかも不安ですが、 「どんな赤ちゃんでも迎えよう」と思って、分娩に向かいます。この不安をたくさん出さないと、胎児への愛着がなかなか培われないということが、いろんな文献から出ています。

産婦人科医時代に、ときには救急車で運ばれてくる十代の分娩にもよく立ち会いましたが、生まれた子は、押し並べて小さい赤ちゃんでした。「おなかの中に赤ちゃんがいたのは、分からなかったの?」と聞くと、「月経が来なかったんだけど、そのうちに来るかなあとは思っていたんだ」「胎動は分からなかった?」「便秘かと思っていた。おなかがごろごろしていたから」と。赤ちゃんがおなかにいるときに、十分に愛着を持てていないのでしょう。難しい結末となった方たちが多かったです。

妊娠中に必要な自分の親との関係の整理

 子どもの虐待が起こる背景として、自分の親との関係が注目されています。虐待を受けて育った親御さんを調査すると、自分の親との関係を、肯定的にとらえられない方がほとんどでした。だけど、虐待されたとは思っていない。厳しく育てられて満足していて、「自分の子どもも、こういうように育てます」という方たちが多い。

ですから、妊娠期間はとても短いけれど、自分の親との関係を振り返る時期でもあり、自分の子どもとの愛着を深められる時期でもあるので、このときに「ちょっと大丈夫かな」と思う人たちを支援して、親子関係をきちんとつくることを勧めていただきたいです。

大阪児童虐待研究会のデータ(図1)では、「愛着の形成の阻害がある」というのが、虐待群に有意に多かったと。その中身は、やはり「望まない妊娠」です。望まない妊娠というのは、レイプで生まれた子どもだったり、DVで、もう別れようと思っているときに生まれた子どもだったりします。ですが、そういう人たちが子育てで全部虐待しているわけではありません。周りからのサポートがないのが問題だと思います。
 

赤ちゃんが生まれると、父親自身も未熟だと、お母さんを子どもに取られたような気持ちになったりします。これも、赤ちゃんがおなかの中にいるときに、胎児を交えて父親になる一つの足掛かりをつくり始めていただきたい。生まれてきてからも、父親が子どもとお母さんを取り合うのではなく、家族で子どもを育てていただきたい。そういう根源的な親子関係へのかかわりをしていかなければならないと思います。 

傾聴して、聞き出した不安を否定するのではなく、どうしてそう感じるのかを聞くプロセスで、生育歴等の問題を把握する。妊娠後半期には、巣づくりの支援。生まれたら、どこに赤ちゃんを寝かせようか、どんなものを用意しようか、そんな作業を一緒にする。そして親との関係を整理して、主体的に赤ちゃんを迎えられるように支援したいと思います。

母親の体調等から子育ての問題を把握

 平成十五年の兵庫と、昭和五十五年の大阪の二十年間の子育ての意識の変化をみたレポートがあります。「育児でいらいらすることは、多いですか」と聞くと、昔の大阪では一割ぐらいだけが「はい」だったのですが、二十年後での兵庫では、一歳半以降は三―四割ぐらいが「いらいらする」。「どちらでも」を交えると八割を超えています。

そんなお母さんたちは、よその子どもと比較して見ているんです。「褒めたり、批判したりするのは気になりますか」と聞きますと、八割ぐらいが「すごく気に掛かる」。子どもへの期待が大きく、過干渉も増えています。こういうお母さんたちを救うには、「こんにちは赤ちゃん」事業などでも、親を元気にする、もうちょっと広いところに目を向けさせることが必要だと思います。

東大阪市の調査(表3)では、体調がよいと、赤ちゃんを「かわいい」と思う人が多く、体調がよくないと、「イメージと違ってしんどい」と言う方が多い。同じように、気持ちがいいと「かわいい」、心がちょっと沈むと「かわいくない」。ですので、お母さんの子どもに対する愛着関係を把握するのに、ストレートに「この子、かわいいですか」「愛着を持てていますか」というのは、なかなか聞けませんが、「お母さんの体調はどうか」「しんどいことはあるのか」を聞くことで、子育ての問題の大変なところが、浮かび上がってくると思います。
 

地域の子育て支援サービスの普及を
 私の前任地であった東大阪市では、早めの支援が必要ということで、「ティーンズママの会」というのを始めています。ティーンズママの背景は、一人親で育った人が四割、結婚前の妊娠が八割。参加したときに既に母子家庭になってしまった人が二割、離婚が一五%、DVが一割。大変な背景を抱えています。 「ティーンズママの会」では、「地域において、若いママのリーダー的存在としてご活躍されることを期待します」と言って、終了証をあげます。そのお母さんたちがまた地域でグループを作る。お母さんたちは本当に素晴らしい力を持っています。

それ以外にも、第一子の親子を対象とした二か月親子講習会も始めました。乳児健診では、子育てが大変だと思っている人たちに後でカンファレンスをする。健診に来ている上の子たち、未受診の人の訪問などあらゆるチャンスから、虐待を把握することが大事です。二か月親子講習会では、アンケートもしています。「体調、気持ちがよくない」ことに注目し、「親からあまり愛情を受けていない」ときにも支援しています。お母さん同士のタッチケアのようなものもしていて、それで仲間ができやすいようです。

この教室を始めてから、電話相談や地区の相談に来る方も増え、始める前と始めた後では、子育てが「大変だが楽しい」方が増え、「不安が多い」「いらいらする」方が減りました。おっぱいのあげ方、親子のマッサージ、気持ちいい体の触れ合いなどから、赤ちゃんのいい反応を引き出して、お母さんの「ああ、うれしいな」という気持ちを引き出す。親の子育てをいたずらに批判しないで褒める。「それでいいのよ」というようなメッセージを送る。

親自身も子育てがゴールではないですから、生き生きと楽しみを持って生活する。お父さんのかかわりも、直接子育てにタッチすること以外でも、お母さんの話を聞く、褒める。私たちは、分娩、「こんにちは赤ちゃん」事業、乳児健診の場で、いろんな子育て情報のメッセージを出して、地域の人と仲間ができ、専門職のことも知って利用してもらえるような支援を広げていく必要があると思います。

◆来年度の「健やか親子21全国大会」は、十一月十日(水)~十二日(金)、埼玉県で開催予定です。
 

 編集帖

▼二〇一五年までに家族計画の普及、性感染症予防、助産師等専門職の立会いの下での出産など、リプロダクティブ・ヘルス(RH)のサービスを、すべての人々に提供し、乳幼児と妊産婦の死亡率を減らすことを掲げたミレニアム開発目標のゴールまであと四年となった。しかしその課題達成が最も困難視されているのがアフリカである。妊産婦死亡を例に挙げれば、一九九〇年と二〇〇五年の比較による減少率は、開発の進む北アフリカでは三六・三%だが、アフリカ全体では〇・六%に留まり、サハラ砂漠以南の国々でのRHの普及が大きな課題となっている。
▼本会ではJICAの要請を受け、チュニジアで、仏語圏アフリカ諸国の保健省中堅幹部のプログラム担当者及び政策立案担当者に、望まない妊娠と性感染症予防により、母子保健改善を進めるためのRHの行動変容プログラムの指導を行っている。このプログラムは、二〇〇一年から本会の経験を伝えたチュニジアでの青少年RHプログラムが、全国に普及し顕著な成果を上げたことを背景とし、言葉や文化、宗教等で、より身近に位置しているチュニジアの経験を通じて、仏語圏アフリカ諸国に問題解決のあり方を伝えるものである。
▼研修では、戦後の極貧状態の日本で、住民参加による家族計画の普及を通じ、母子保健の改善を図った記録映画「健康は人々の手で」をまず見て貰う。困難から立ち上がった日本人の姿は、アフリカの研修生たちに共感を生み、その後の日本からチュニジアへ繋がるRHの経験を通じたプログラムでは、研修生たちはその内容を一言も聞き洩らすまいと熱心にノートを取り、熱い議論を展開する。アフリカにRHの夜明けをもたらすためにも、日本の持続的な支援を願う。 (HK)

 

 第8回思春期保健相談士学術研究大会 大会長からのメッセージ


大会長 第市立伊藤病院院長 荒堀憲二

 次回のメインテーマは「思春期からの子宮頸がん予防(予定)」。私のバックグラウンドは産婦人科であり公衆衛生ですので、セクシュアル・ヘルスとヘルスプロモーションの視点から最新情報をお伝えします。

基調講演は自治医大さいたま医療センター婦人科の今野良教授から、昨年十二月に使用が開始された子宮頸がん予防の「HPVワクチン」について、その必要性や効果を学ぶと同時に、世界と日本のワクチン接種状況についてもお話しいただき、単にがんの予防という問題を超えて、若者のセクシュアリティをどう捉えるかという大きな問題を、皆さんとともに考えたいと思います。

また、ランチョンセミナーでは、トヨタ記念病院の磯村毅先生から禁煙教育の新しい視点について、ご講演いただきます。喫煙もアルコールも、薬物、セックス、ギャンブルもすべて脳内の報酬系物質を介した依存症であり、それからの解放には身体依存の治療だけでなく、自らの心理的依存への気づきが必要であるとする理論と方法を説いた著書「二重洗脳」では、「失楽園仮説」など独自のわかりやすい理論と実践を展開。禁煙のみならずすべての依存症への対応の参考となるでしょう。

参加者の皆様には「明日につながる Something」をお届けします。多くの思春期保健相談士、思春期保健に携わる方々にお会いできることを楽しみにしております。お誘い合わせのうえ、東京にご参集ください。

【開催日】6月5日(土) 詳細はこちら

【会場】日本青年館ホテル(東京都新宿区)

《問合せ》電話 03(3269)4785 FAX 03(3267)2658

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