機関紙

【第680号】 平成22年11月1日発行(2010年)

2010年11月 公開
11月号の目次
・平成22年度健やか親子21(母子保健家族計画全国大会)によせて(会長 松本清一)
・平成22年度健やか親子21(母子保健家族計画全国大会)被表彰者
 厚生労働大臣表彰
 日本家族計画協会会長表彰
 母子保健推進会議会長表彰
 恩師財団母子愛育会会長表彰
・IPPFフォーラムに参加して -パワフルな若者たちとの出会い-

対応に戸惑う保護者への接し方

・乳幼児の皮膚疾患<2> アトピー性皮膚炎

・EBMでとく明かす「子宮頸がん予防とHPVワクチン」Q&A<3>
避妊教育ネットワークトークリレー<8>エムズレディースクリニック  神藤 已佳

 

 厚生労働大臣被表彰者

   平成22年度母子保健師健・家族計画事業功労者が決まった。11月11日、さいたま市の埼玉会館で行われる「平成22年度健やか親子21全国大会(母子保健師健家族計画全国大会)」で表彰される。厚生労働大臣表彰は、57人6団体、本会会長表彰は40人1団体、母子保健師健推進会議会長表彰は53人7団体、恩賜財団母子愛育会会長表彰は47人3団体。

           
  平成22年度母子保健家族計画事業功労者
厚生労働大臣表彰
 
   【個 人】        
  北海道  小玉 由紀子 母子保健推進員    
  北海道  宮本 雄一 歯科医師    
  青森県  清野 葭子 保健師    
  青森県  蓮尾 豊 医師    
  岩手県  大坂 暢子 助産師    
  秋田県  塩谷 良子 保健師    
  山形県  沼澤 富美子 保健師    
  福島県  石井 裕実子 保健師    
  栃木県  上杉 みつえ 助産師    
  群馬県  長島 勇 医師    
  埼玉県  宮﨑 通泰 医師    
  埼玉県  河村 長和 歯科医師    
  埼玉県  内田 幸子 助産師    
  埼玉県  安野 ミサヲ 愛育班員    
  神奈川県  高田 恵子 助産師    
  神奈川県  大山 宜秀 医師    
  神奈川県  熊谷 勝 医師    
  神奈川県  東條 龍太郎 医師    
  神奈川県  堀越 久江 助産師    
  新潟県  髙橋 チヱ子 助産師    
  新潟県  若井 キヨ 助産師    
  富山県  吉橋 和子 助産師    
  石川県  喜多 瑞江 保健師    
  福井県  水口 和惠 保健衛生推進員    
  福井県  前田 久江 保健推進員    
  長野県  小林 三知代 助産師    
  愛知県  小川 正道 医師    
  愛知県  加納 武夫 医師    
  愛知県  岩本 美佐子 助産師    
  三重県  西山 幸男 医師    
  三重県  鈴木 照美 助産師    
  兵庫県  山名 克典 医師    
  兵庫県  本郷 寛美 医師    
  兵庫県  今里 典子 保健師    
  和歌山県  根來 孝夫 医師    
  岡山県  宮田 明美 助産師    
  広島県  住田 静子 医師    
  山口県  原田 久子 保健推進員    
  山口県  川崎 明美 母子保健推進員    
  山口県  三宅 悦子 母子保健推進員    
  香川県  和泉 ナヲエ 愛育班員    
  高知県  森下 ヒデ子 母子保健推進員    
  福岡県  間 厚子 医師    
  福岡県  松田 健一郎 医師    
  福岡県  福井 久人 医師    
  福岡県  津田 裕文 医師    
  佐賀県  太田 幸代 保健師    
  長崎県  中村 まり子 助産師    
  鹿児島県  上片平 栄昭 医師    
  沖縄県  親川 豊子 保健師    
  沖縄県  新屋 三知 母子保健推進員    
  中央推薦  富和 清隆 医師    
  中央推薦  松峯 寿美 医師    
  中央推薦  田村 康夫 大学教員    
  中央推薦  神田 多子 愛育班員    
  中央推薦  根岸 哲夫 歯科医師    
  中央推薦  毛受 矩子 大学教員    
   【団 体】        
  青森県  六戸町母子保健推進員会(代表 保土澤正子)
  富山県  入善町母子保健推進員連絡協議会(代表 朝野裕子)
  兵庫県  香美町小代区愛育班(代表 田野佐代子)
  鹿児島県  いちごくらぶ(在宅障害児(者)を抱える親の会)代表 有木 真樹
  中央推薦  富山県母子保健推進員連絡協議会(代表 川岸みづほ)
  中央推薦  山口県母子保健推進協議会(代表 梶原誠子)
           

 日本家族計画協会会長表彰被表彰者

 

           
  平成22年度(社)日本家族計画協会 会長表彰  
   【個 人】        
  青森県  祐川エイ子 助産師    
  岩手県  藤倉睦子 助産師    
  宮城県  早坂律子 保健師    
  栃木県  櫻井恭子 保健師    
  群馬県  尾内静代 助産師    
  神奈川県  張ヶ谷智子 助産師    
  富山県  廣見豊美 助産師    
  福井県  林里都子 助産師    
  長野県  牛山三枝子 助産師    
  静岡県  白井みち代 保健師    
  愛知県  鳴海榮樹 助産師    
  三重県  吉澤いよ子 助産師    
  大阪府  長岡千代 助産師    
  鳥取県  井庭信幸 医師    
  島根県  川島由紀江 助産師    
  岡山県  中島百合子 保健師    
  広島県  堀田光枝 助産師    
  山口県  北村美紀 助産師    
  香川県  鈴木綾子 助産師    
  愛媛県  合田かすみ 保健師    
  佐賀県  山口孝子 保健師    
  大分県  河野元子 助産師    
  鹿児島県  久米照美 助産師    
  沖縄県  平良慶子 助産師    
  宇都宮市  岩渕文子 保健師    
  さいたま市  林寛子 保健師    
  千葉市  川島広江 助産師    
  川越市  栗原季子 助産師    
  横浜市  山田みどり 助産師    
  川崎市  中山さい子 助産師    
  浜松市  平田幸子 助産師    
  名古屋市  鈴木正利 医師    
  豊田市  神谷笑   母子保健推進員    
  広島市  川本功一 医師    
  松山市  池内明美 保健師    
  福岡市  武田和子 助産師    
  大分市  麻生崇美子 助産師    
  本部推薦  佐藤孝道 医師    
  本部推薦  芦野由利子 元団体職員    
  本部推薦  小野正恵 医師    
   【団 体】        
  埼玉県  (社)日本助産師産師会埼玉県支部熊谷地区(地区長 内田全美)
           

 母子保健推進会議会長表彰被表彰者

 

             
  平成22年度(社)母子保健推進会議 会長表彰    
   【個 人】          
  岩手県  山田幸子 保健師      
  宮城県  早坂律子 保健師      
  秋田県  針生峰子 医師      
  秋田県  藤原元幸 歯科医師      
  山形県  高橋照美 保健師      
  栃木県  髙瀬佑子 母子保健推進員      
  群馬県  浦野幸子 母子保健推進員      
  群馬県  堀越公子 母子保健推進員      
  埼玉県  荻島貞子 母子保健推進員      
  埼玉県  木村ユキ 歯科衛生士      
  千葉県  織戸美知子 母子保健推進員      
  千葉県  佐藤君子 母子保健推進員      
  東京都  加藤岳子 助産師      
  富山県  樫原良子 母子保健推進員      
  石川県  堂七孝子 母子保健推進員      
  石川県  松原多美子 母子保健推進員      
  福井県  中山孝子 母子保健推進員      
  福井県  坪谷詔子 健康づくり推進員      
  岐阜県  柴田美知子 助産師      
  愛知県  江口澄子 管理栄養士      
  三重県  田中郁子 保健師      
  和歌山  瀬戸淳子  母子保健推進員      
  和歌山  湯川文子 健康推進員      
  和歌山  福田惠子 母子保健推進員      
  和歌山  荒川昭子 母子保健推進員      
  島根県  山崎千代子 准看護師      
  岡山県  梅島玲子 保健師      
  広島県  砂原眞澄 母子保健推進員      
  山口県  末廣規子 母子保健推進員      
  山口県  昇地幾代子 母子保健推進員      
  香川県  松本靖子 看護師      
  愛媛県  佐伯直子 保健師      
  佐賀県  大山和代 母子保健推進員      
  佐賀県  藤﨑斗志子 健康推進員      
  佐賀県  南里千鶴 健康推進員      
  佐賀県  植松光子 母子保健推進員      
  佐賀県  古川洋子 保健師      
  熊本県  中尾リツ子 保健師      
  熊本県  高村俊子 看護師      
  鹿児島県  中村洋子 保健師      
  鹿児島県  野元トシ 母子保健推進員      
  沖縄県  大城美和子 母子保健推進員      
  沖縄県  安里加代子 母子保健推進員      
  沖縄県  香村貞子 母子保健推進員      
  沖縄県  町田節子 母子保健推進員      
  沖縄県  垣花悦子 母子保健推進員      
  川越市  黒森信治 医師      
  さいたま市  山西敦子 看護師      
  千葉市  関屋博子  地域保健推進員      
  川崎市  勝俣喜代子 助産師      
  相模原市  鈴木豊子 保健師      
  松山市  石河保恵 地域保健推進員      
  中央推薦  髙野直久 歯科医師      
   【団 体】          
  栃木県  野木町母子保健推進員協議会(会長 谷井明美)
  富山県  舟橋村母子保健推進員協議会(会長 高見要宇子)
  佐賀県  佐賀県母子保健推進協議会玄海町母子保健推進員会(地区長 山口よしえ)
  柏 市  柏市民健康づくり推進員連絡協議会(会長 妹尾桂子)
  下関市  下関市保健推進協議会(会長 水野智恵子)
  中央推薦  和歌山県母と子の健康づくり運動協議会 (会長 狭間歌子)
  中央推薦  佐賀県母子保健推進協議会(会長 徳久榮子)
             

 恩師財団母子愛育会会長表彰被表彰者

 

           
  平成22年度(社福)恩賜財団母子愛育会 会長表彰  
   【個 人】        
  青森県  今千恵 助産師    
  岩手県  黒澤愛子 保健師    
  宮城県  飯塚久子 保健師    
  山形県  猪股咲子 保健師    
  栃木県  金井美知代 保健師    
  群馬県  松本彰子  保健師    
  埼玉県  花香くに子 愛育班員    
  埼玉県  清水正子 愛育班員    
  千葉県  和田昭子 歯科衛生士    
  神奈川県  小島幸司 医師    
  富山県  石田裕紀子 保健師    
  石川県  和田正美 保健師    
  福井県  峯田宏子 愛育班員    
  福井県  濱田滋子 保健衛生推進員    
  山梨県  中込和江 愛育班員    
  山梨県  小林千江   保健師    
  静岡県  河井恵美子 歯科衛生士    
  愛知県  石川薫 医師    
  愛知県  牧野克子   助産師    
  三重県  山本久代 助産師    
  滋賀県  廣瀬雅哉 医師    
  京都府  櫻井美幸 助産師    
  大阪府  菅澤順子 助産師    
  兵庫県  花畑千代美 保健師    
  兵庫県  柳瀬厚子 保健師    
  岡山県  榧敦子 愛育班員    
  岡山県  渡辺秀子 保健師    
  香川県  竹本智惠子 愛育班員    
  香川県  山西由美 保健師    
  愛媛県  井上友子 保健師    
  佐賀県  高柳俊光 医師    
  熊本県  江崎真澄 医師    
  大分県  平塚幸子 愛育班員    
  大分県  伊藤さおり 保健師    
  大分県  中野洋子 保健師    
  宮崎県  持原雅子 母子保健推進員    
  鹿児島県  飯島悦子 保健師    
  横浜市  堀内久仁江 医師    
  川崎市  福土律子 保健師    
  名古屋市  渡辺勇 医師    
  大阪市  大村ヤエ子      
  神戸市  松岡鈴江 保健師    
  福岡市  首藤まり子 助産師    
  相模原市  西脇俊幸  医師    
  熊本市  永田由美子 保健師    
  宮崎市  近藤泰子 歯科衛生士    
  品川区  新宅浩子 助産師    
   【団 体】        
  埼玉県  さいたま市保健愛育会(愛育長 高野津代子)
  埼玉県  吉川市母子愛育会 (会長 森田京子)
  山梨県  身延町愛育会(会長 平山幸枝)
           

 対応に戸惑う保護者への接し方

 対応に戸惑う保護者、悩みを聞き理解して  (お母さんと子どもの元気セミナーより 主催:本会)

講演 「対応に戸惑う保護者への接し方」
講師 静岡英和学院大学人間社会学部地域福祉学科教授 清水エミ子

 9月11日、本会と本会母子保健指導部の共催による「お母さんと子どもの元気セミナー」が、東京・市ケ谷の保健会館新館多目的ホールにて開催されました。全国から保健師、助産師、保育士ら38人が参加し、近年、育児相談や保育の現場で問題となっている「対応に戸惑う保護者」への対応について学びました。長年にわたり保育と幼児教育の現場に携わり、その研究と保育者の養成に尽力される清水エミ子静岡英和学院大学人間社会学部地域福祉学科教授による講演の概要をご紹介します。

 

     
   
  セミナー講義風景  
子どもって素晴らしい
 
 保育の現場を終えて、私は大学で十数年と授業をし、学生と学んできていますが、大人よりも子どもが大好きなんです。子どもの心を大事にさえしていれば、その子が大人になったときに、いい社会ができるんじゃないかと思っているのです。
 でも皆さん、今はテレビをつければ、新聞を広げれば、悲しい話題ばっかりですね。虐待のニュースがないときはありません。どうか皆さん、「子どもってかわいいのよ。子どもって素晴らしい人間なのよ」ということを、保護者や地域の人たちに伝える役割を担っていただきたい。
 私は、歩いていて障害を持っていると思うようなお子さんたちに出会うと、黙って通り過ぎられないんですよ。今日も東京駅で出会った知的障害があるとみられるお子さんに、「こんにちは、暑いわね」って声をかけたら、一緒にいたご両親は私を人さらいだと思ったんでしょうね、ぎゅっとにらみつけられました。
 「暑いね、もうすぐ涼しくなるかもしれないよ」と言ったら、その子は、私がその子を取って食べないと分かっている。それで骨折のため私が持っている杖が気になるんですね。「触ってもいい? ちょっと貸して」。そして杖を持ち上げてみたり、振ってみたり。お父さんとお母さんが「もうお返ししなさい、お急ぎなんだから」。
 彼は、この杖を突いてしばらく東京駅の地下を歩いたら、もうよくなって、そして「どうもありがとう」と言ったと思ったら、「ここが痛いんだな」。私のももを、しゃがんでさすってくれたんです。そして、「さよなら」と言ってくれました。
 よっぽど変なふうに歩いていたんだなと反省したんですが、痛そうなももをさすってくれる、こんなに純粋な子どもたちがいるんです。どうかこの子たちの味方になっていただきたいと思います。

保護者の悩みを聞く

 皆さんには保護者の悩みを率直に聞いてほしい。お母さんたちは今悩んでるんですよ。虐待をしちゃうお母さんも、一家心中したくなっちゃうお母さんも、悩みがあるからそんなことを考えるんです。だからその悩みを、お母さんの声を聞いてください。
 そして今、おばあちゃん、おじいちゃんという人たちが少なくなった。今の若い親たちは、おばあちゃんやおじいちゃんから大人の付き合い方や話し方を教わっていません。
 大学4年生の学生を見ていたって、あなたそれで4年生?と思うような学生が何人かいるんですよ。「あなたをしかっても駄目よね、あなたのお母さんがあなたに教えてくれてなかったのよね」と言う。
 朝、私の授業に遅刻して来る学生がいるんです。遅刻してきたんだから申し訳ないという気持ちで、声は出さなくてもいいから、会釈ぐらいして教室に入ってきてもらいたいと思うわけです。
それが知らん顔して、どこが空いているか、仲良しの友だちはどこにいるかを、入り口で突っ立って見ていて、すーっと行くわけですね。私は「止まって!」って言うんです。「もう一度出なさい。遅刻して来たんだから、遅刻いたしましたっていう思いで、会釈ぐらいして教室に入って」と言って聞かせるんです。今、大学は、授業だけ教えてればいいわけではなくなってしまったんです。
 そういう子たちが2、3年たつと親になっている。それでそういう親になった子たちが、子どもを保育園や幼稚園に入れて、どこに悩みを訴えていいか分からないのです。

よく観察し声をかける

 保育者と保護者の心のつなげ方、これは難しくないのです。観察をしてください、保護者を。皆さんが抱えている、対応に戸惑う面倒くさい保護者。保育園や幼稚園にいるとそういう保護者がいっぱい来ます。
 「あのお母さんは、いつも同じことを同じように文句言う。だから保育者も、言うことがもう品切れてるんですよね」。私はそういう保育者には、「そしたら、品切れたところからバックしていきなさいよ。それでいいんだから」。誰かに聞いてもらいたい文句屋さんは、何でもいいんですよ、親身になって聞いてあげれば。
 だから、その聞いてもらいたい文句屋さんには、こっちから声を掛ける。で、くだらないこと、「お母さん、今日のお化粧ちょっと濃すぎない?」とかをかるく言うんです。これはそのお母さんをよく観察さえしてれば、言ってあげられるんです。
 子どもにスキンシップをするっていうのは皆さん、もう当然お分かりでしょう。だけど、保護者も先生にスキンシップしてもらいたいのですよ。
 保育園にお母さんがエプロン掛けで来ます。そのエプロンの後ろのひもは見えないでしょう。ちゃんと結んであっても、それを私、「お母さんちょっと回れ右。やり直してあげるから」。そうすると、どんなに保育者の悪口を言っていたお母さんも「あら先生、どうもありがとう」。
 それで私はおしまいにしないのです。「あ、お母さん、これで2歳若返った」と言ってあげます。「お母さん会社でしょう、気をつけて行ってらっしゃい」と言ってあげると、お母さんは「はい、行ってまいります」と元気になる。
 若い保育者が、私と保護者のやり取りを見て「どうして清水先生はそれができるの」。私は「喜んでくれることって何だろうと思うだけよ」って言うんですけど。褒めてもらいたいのよ、保護者の人は。子どももそうだし自分もそう。
 私は現場にいたころ、10冊ぐらい、いろいろな種類のノートを作っていました。そこに一人ひとりの保護者の好みなどを書いておく。そうして分析しなきゃ駄目です。私は学生に、「どんなことでも細かく分析をして、自分のものにしておくのよ」とよく言います。
 「よっちゃんのお母さんってどんな人だったかな」って考えてあげるとき、私とよっちゃんのお母さんの心がつながるんじゃないでしょうか。

我慢ではなく理解

 対応に戸惑う保護者というのは言いたい放題で、自分のことしか言いません。それを全部聞く。保護者は言っているうちに落ち着いてきます。私はそういうとき「まだあるんじゃない。今までの話で7分ぐらいしか吐き出してないわね。出しちゃえ、出しちゃえ」って言う。そうすると、「先生、もういい。この次にする」と言って帰っていく。
 そしてもう一つ、文句屋さんは、うらやましがり。子どもが、「ヨシコちゃんは、今日もまた違う靴下履いてきた」と言うと、子どもだけでなく保護者もうらやましいと思う。だからその気持ちを理解してあげてほしい。本当にうらやましがり屋の保護者は多いんです。
 「ほんとにあのお母さんは競争ばっかりして」。若い保育者が言ってきます。すると私は「いいじゃない。うらやましがる心を持っているから向上するのよ」と言うんです。「清水先生って、よく我慢できるわね」。私はみんなに言われてきました。我慢するんじゃなくて、理解するんです。1つずつね。理解してあげることが大事なんです。

言い訳よりも謝罪

 こういう保護者がいました。ケンちゃんとコウタがけんかして、おもちゃの取りっこをして、保育園のおもちゃを壊しちゃったんです。で、そのままにしてはいけないので2人のお母さんを呼んだわけです。そのときに私は右利きなので、右側に座っているお母さんのほうをどうしても多く見てしまっていました。
 そしたら、ケンちゃんのお母さんが「先生はコウちゃんのお母さんを好きだから、コウちゃんのお母さんばっかり見て、私のほうは3回ぐらいしか見ない」。私は「あ、そう。3回ぐらいだった? それはごめんね。無意識で、私、右利きだもんだから、右側にいたコウちゃんのお母さんのほうが見やすかったんだと思うわ。それはごめんなさい」。それだけちょっと伝えて、言い訳はしない。「分かっていればいいのよ」。それで終わりましたけどね。
 皆さんもご経験と思いますが、こうしたけんかやトラブルを通り越して育っていくのが子どもです。お友だちとかかわらないで遠くのほうで見ているような子は育ちが遅いですよね。
 私は若い保育者や実習に行っている学生には、「一緒に遊びましょうって誘ってあげたときに、『うん、いいの』なんて言う子は一番危ないよ。逃避の言葉だと思ってかかわっていってあげなさいよ」と言っています。

子どもの育ちを見せる

 皆さん、文句を言ってくる保護者を怖がらないでください。お友だちになってあげる。こっちの手の内に入れてあげる。
 私がなぜ81歳まで保育の現場が大好きなのか分かりますか? 子どもと一緒に、「ばーか、かーば、ちんどん屋、おまえの母さん出べそ」って、言い合って暮らせるのは保育の現場しかないのです。いいでしょう。それで月給もらってきちゃった。もう辞められませんよ。
 だから私が学生や現場の先生たちに言い暮らしてきたのは、朝、お子さんを預かって、夕方お返しするまでに、ちょっとでもそのお子さんが育っていなければ、月給返さなきゃ駄目って。
 赤ちゃんの育ちって早いじゃないですか。朝お母さんが抱っこして連れてきたときは、ハイハイもできなかった。ところが、保育園の廊下にたたくと音が出るいろんなものぶら下げておくと、それを赤ちゃんが背伸びしてたたけるようになる。
 夕方お母さんが迎えに来たときに、「お母さん、見ててごらん。すごいわよ、今日は」と言って、その子の好きなものをちょっと低めにぶらさげる。すると、赤ちゃんが、バーン。「朝、これできなかったのね。お父さんにもきょうだいにも、これができるようになったのを見せてあげてね」「ありがとう」。
 子どもの育ちを見せてあげる、具体的に。これで、大概の保護者と仲良くなれますよ。

子どもと保護者を愛する

 私の保育ってどういう保育って聞かれたら、「子どもをあこがれさせます」と答えます。子どもはあこがれたいんですよ。何にしろ、見たり聞いたり触ったりしたことに、あこがれる。そして高いものにあこがれさせるのではなくて、今あることを喜ぶ。
 子どもっていうのは不思議な生き物です。皆さん、研究してください。子どもにあこがれを持たせ、今あることに喜びを持たせて、そして、人生楽しいなあっていうのを親子に知らせていく。
 どうか皆さん、子どもを愛してください。そして子どもの後ろ側にいる保護者も、愛せば応えます。どんなにひねくれた人でも。
 保護者の教育方針はそれぞれ違う。合わない保護者同士の訴えを聞いて、正しいことを押し付けない。正しいことが分かったら、自分の栄養剤にすればいい。

保育者も「人間」

 最後に、私が一番苦労した、ヨシコちゃんという女の子の話をします。保育者だって人間ですから、同じことやっても、Aっていう子のことはとても褒めちゃうけど、Bって子には「フン」ってなってしまう。
 昔、時の記念日が来ると、皆さんも時計つくったでしょう、空き箱で。それをつくらせているときに、ヨシコちゃん、ぶきっちょさんだから、空き箱をいくつも駄目にしたんです。
 ほかの子も駄目にしてるんです。ところが私は、ほかの子には「あーあ、また失敗しちゃったのね」って言うぐらいです。でもヨシコちゃんには「ヨシコちゃん、あんたそれで3つ目よ」なんて、心にぐさっとくるようなこと言っちゃっていました。それはヨシコちゃんも感じていたんですね。
 今までは朝、園の玄関まで親子で来て、ヨシコちゃんのお母さんは「先生よろしくお願いします」と言ってにこにこしていた。ところがあるときから、門でヨシコちゃんを園の中に入れて、お母さんは入ってこなくなった。「先生はうちの子をかわいがってない」。
 それで、私も気がつきました。ちょっとですけれども心理学を勉強してきたので、ヨシコちゃんには少しつらく当たっているという反省があった。ヨシコちゃんとうまく付き合えるようになるまで、長い時がかかりました。今でも仲良しです。
 ヨシコちゃんは今3人の子持ちになっていて、一番上の子が保育士の試験に受かりましたと、今年暑中見舞いが来ました。「ああ、私の弟子ができたんだね」「うん、だから先生が要らなくなったもの、みんなうちにちょうだい」。保育雑誌とか、段ボール2箱送ってあげました。
 皆さん、どうか悩む保護者の味方になってください。子どもを育ててください。ありがとうございました。
(文責・編集部)

〔講師略歴〕
 東京生まれ。東京学芸大卒。日本保育学会倉橋賞受賞。『ちがうぼくととりかえて―幼児のことば10年の記録』(厚生大臣賞受賞、童心社)、『ママ?きいてきいて―子どもをダメにするうかつなひと言』(教育出版)など著書多数。

★次回の「お母さんと子どもの元気セミナー」
 「見直してみましょう、子どもの事故予防」をテーマに、11月13日13時30分~15時30分、保健会館新館で開催。講師は山中龍宏緑園こどもクリニック院長。詳細は本会HP。開催間近です。

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