Facebook Twitter LINE
ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第57話>北朝鮮もピルの使用を認可

第825号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 1997年6月16日に開催された公衆衛生審議会伝染病予防部会でも、「継続審議」が決まったピル。落胆していた筆者にさらに追い打ちをかける事態が起こった。「あの北朝鮮ではピルの承認はまだだろう」と高を括っていた筆者の元に、国際家族計画連盟(IPPF)東・東南アジア・大洋州地域事務局からのメールが届いた。標題は「北朝鮮における経口避妊薬に関する照会について」。「IPPFは既に3年ほど前から北朝鮮に対してピルを提供し、北朝鮮家族計画協会からは何ら問題があるという連絡はありません」と。3年前ということは1994年のこと。合わせて送られてきた資料によれば、マーベロン・マイクロギノン-30・ネオギノン・オーソノバム1/50、プロゲストーゲン単独ピル、プロゲスト-ゲン注射法が使われていることが判明した。低用量ピル承認の議論が遅れに遅れているだけでなく、プロゲストーゲン単独剤も注射法も議論の俎上にも上がっていない日本をただただ恥じることとなった。
 97年11月8日には、このような状況を女性の手で変えようと、「性と健康を考える女性専門家の会」の設立総会が開催された。会場狭しと170人近く集まった参加者は圧倒的に女性で、ピルの認可が女性にとって切実な問題であることを伺わせた。メディアも20社以上が参加。日本で初めての女性専門家の会の創設を取材した。
 12月20日発行の「性と健康を考える女性専門家の会ニュースレター」には、堀口雅子会長の言葉が掲載されている。堀口会長は、日本のリプロダクティブ・ヘルスの問題点を指摘し、変化を起こすために専門家、特に女性が立ち上がることの重要性を強調。会員である工藤美子・愛知県立看護大学講師(当時)は、中絶した女性についての研究から、ピルを認可するだけでは問題は解決しないことを指摘し、女性が新しい避妊法を使いこなすためには、性教育や医療システムを含む総合的な取り組みが必要であることを説明している。
 設立総会には、米国コロンビア大学のキャロライン・ウエストホフ助教授(当時)が招かれており、その講演において、「避妊効果・副作用・副効用・性感染症の予防など、あらゆる角度からピルに関する最新の知見を披露。米国によらず先進工業国では、避妊はピルなどの確実な方法で行い、性感染症はコンドームで防止することがコンセンサスになりつつあること、女性の最大の健康リスクは妊娠なので、効果の高い避妊法ほどリスクは低いこと、ピルには避妊の他にも月経困難症の軽減やニキビの防止、卵巣ガンなどの防止に有効であること」などが紹介された。



JFPA無料メルマガ登録をお願いいたします!

前の記事へ 次の記事へ

今月のページ

季節号・特集号

連載・コラム

バックナンバー