機関紙

【第675号】 平成22年6月1日発行(2010年)

2010年06月 公開
 6月号の目次
編集帖 1面
平思春期対策の子宮頸がん予防教育 2面

・ティーンズ・クラブ・アイリス・伊勢の活動報告 3面

本会家族計画研究センタークリニック 2009年度活動報告 4~5面
思春期教育 今、大切な指導ポイント<3> 6面
食育保健の現場から<6> 単一健康保険組合の保健師業務 7面
避妊ネットワークリレートーク<3>さとこ女性クリニック院長 井上 聡子 8面

 

 編集帖

▼終戦後の日本国民は衣食住が満たない極貧に喘ぐ生活だった。しかし、民主主義と平和の到来で、男女は貧しいながらも結婚し、子どもが生まれてベビーブームが起こった。1945年の終戦時、日本の総人口は約7200万人。1950年は約8320万人で急激に増加し、出生も1948年は約268万人(人口千対33・5)と増え、この状態は数年間続いた。
▼同じく人工妊娠中絶の件数も増え続け、しかも劣悪な環境下で行われる「ヤミ堕胎」が原因で死亡する女性も増えたのである。この危険な堕胎から母体を守るために、世界に先駆けて中絶が認められた法律「優生保護法」が1948年に成立している。翌年には一部改正され「経済的理由」でも中絶が可能になったため、中絶の届出件数は激増し、1955年には約117万件に至ったのである。
▼受胎調節の知識が普及していない時代に中絶の合法化が先行したことで、出生の調整を中絶で行うといった誤った考えが国中に広まったことは否定できない。1952年にはこの現象を危ぶみ、政府が受胎調節の普及事業を行政として初めて実施し、「受胎調節実地指導員」制度を発足させた。この国家資格認定講習会は現在も続き、本会でも開催している。
▼1955年10月に東京・芝のメソニック・ビルで、日本で初めての国際会議「第5回IPPF世界大会」が開催された。この国際会議がきっかけになり、翌年には第1回家族計画全国大会が開催され、この大会は現在も続いている。
▼そして、機関紙「家族計画」(現「家族と健康」)も1954年4月に第1号が発刊され、休刊なく現在まで56年間発行し続けている。今後も本会事業に変わらぬご支援をお願いしたい。 (TS)

 <投稿>思春期対象の子宮頸がん予防教育

千葉大学名誉教授武田 敏

(A)保健教育で教えることの必要性
①ツールハウゼンのノーベル賞受賞の通り、ハイリスクHPV感染が子宮頸がんの原因として認められている。子宮頸がん組織に、一部の例外を除き、ほとんどすべて「HPV由来のDNA」が検出される。

②子宮頸がんは女性特有のがんの中で、乳がんに次いで多いがんであり、初期の病変も含め毎年1万5千人が診断され、3千5百人が死亡している。

③近年初交の低年齢化により、20代、30代の子宮頸がんが急増し、諸外国でもヤングマザーキラーと怖れられている。20代だけでみると、乳がんを上まわる高頻度である。

④我が国の中高校の保健教科書をみると、諸外国のものと比較し、がん啓発の記載が欠如している。生活習慣病の一つとしてがんが挙げられているにすぎない。がんを中年以後の病気とみて、学校教育ではなく、成人教育、社会教育に委ねている。

⑤性行為によるHPV感染の事実と予防を思春期の性教育に加える必要がある。

⑥HPV感染も前がん病変も無症状であり、初期がんですらほとんど症状がない。「性器出血で、ただちに来院した」のに既に進行がんで、治療後再発死亡した例を産婦人科医師達は経験している。

⑦子宮頸がんの健康診断として、異常がなくても定期検診を受けることが望ましい。ところが我が国の受診率は20%台と低迷している。欧米諸国では70~80%で落差が大きい。隣国の韓国では我が国と同じレベルであったが、社会的啓発活動と教育により、40・6%に上昇し、更に昨今のデータでは50%を超す受診率レベルとなっている。学校教育でもこの課題をとりあげなければ、これに追いつくことはできない。

⑧HPV予防のワクチンが開発され、我が国でも昨年末に認可された。諸外国では既に4年前に認可された。ウイルス粒子に似せた抗原(VLP)を使ったものであるため、感染等のリスクは全くない、として普及している。ハイリスクHPVの70%を占める16、18型に対しては確実な予防効果がある。治療ワクチンではなく予防ワクチンであるから、性行為による感染をしていない低年齢に接種する。そのためには中学校からこの学習は避けて通れないテーマである。

⑨以上総合して一次予防としてのワクチンと二次予防としての健康診断受診、二段式の予防策により、子宮頸がんによる死亡をゼロにする学習を保健教育で推進すべきだという方針となる。

(B)問題点検討
以上の事実からすれば、ハイリスクHPVの感染と子宮頸がんの関係を保健の授業でとりあげることは当然と解されるが、教育現場の先生方に見解をたずねると「難点が多い」という。重要な知識であり学ぶことのメリットが多い反面、問題点も付随するコンフリクト(葛藤)があると思われる。そこで難点の一つ一つを指摘し、対応策の検討を加えることにしたい。

①人体の各部に発生するがん一つ一つについて保健の時間に学ばせる時間は取れない。がんとはどんな疾患かを話す程度。
▽対応策…無理をしても、学ばせる現実のニーズがある(前半に述べた)。各種のがんに共通の発がんメカニズム、原因と予防を総論として教えるだけでなく、多いがんの幾つかを代表例として、症状等とともに紹介する。「思春期から予防と対応」が特に重要ながんについては各論も必要である。諸外国では中高校の健康教育として、日本よりはるかに多くの時間をとり、がん予防を動機づける教育をしている。本人の心身の苦しみ、身体機能障害、自己実現を不可能にする、生命危機、治療に多額の支出を要す、家族に心配をかけ家族の幸せを奪う、予防のライフスタイル、等。

②子宮頸がんは原因ウイルスの感染例が多く、がん化率は低いので、説明の仕方によって感染恐怖となったり、逆に感染予防意識が低下したりする。
▽対応策…知識がなければリスクを防げないが、ワクチンと検診の組み合わせにより「予防できる」ことを強調する。

③保健教育では、疾患を原因別に遺伝性疾患、代謝異常、感染症、自己免疫疾患、悪性新生物(がん)等と分類し、これをスキーマ(認知の枠組)として、予防策を学ばせる認知的学習が行われている。「がんは移らない疾患」という認知で予防策が作成されてきた。悪性新生物である子宮頸がんを感染症でもあるとして教材化すると混乱を招き易い。
▽対応策…分類のスキーマで一通り教えたうえで、両グループを兼ねる疾患もあると理解させることは、発がんのメカニズムを解説させることにより可能である。柔軟な思考で発展的学習に進むことが望ましい。

既知のがんのイメージと異なる点で専門家も発想の転換をしなければならないところが興味深い。「多数の無症状感染者と低い発がん率。検出しにくい潜在感染者の中からがん化促進因子(プロモーション)により一部ががん化する。思春期の性体験者対象の調査では、半数近いHPV陽性者の報告があるが、感染者の一部が持続感染し、その一部が前がん状態となり、さらに一部ががん化する。ハイリスクHPVに感染した者の0・1~0・5%が子宮頸がんとなる。原因となる微生物があるがんが、子宮頸がん以外にもあるのではないか?と認知する発展的思考が望ましい。ここで認知のブレーキとなっている「思いこみ」もメタ認知のテーマとして重要である。

筆者が医学生で病理学を学んだ時代、ヘリコバクターピロリのような微生物が胃粘膜で発がんにかかわるとは想像もつかなかった。胃酸による低pHの環境で菌が増殖するはずがない、との先入観にとらわれていたのである。子宮頸がんはすぐれた教材としての示唆に富む特性を持っている。

④保健の指導で「子宮頸がんも性感染症である」と学んだ高校生の中に、最近検診で母親のがんが検出され、子宮摘出手術を受けたケースがあった。その生徒は母親が浮気をしたと誤解し、非難した。親から学校に苦情が行った。
▽対応策…子宮頸がんの原因ウイルスであるHPVは感染ルートが性的接触だけであるため、この種のトラブルが起こることがありうる。ステディーな関係でも感染する可能性があること、症状のないことと、HPVに感染したすべての女性が子宮頸がんを発症するわけではないことなどを付言するのがよいであろう。

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