機関紙

【第682号】 平成23年1月1日発行(2011年)

2011年01月 公開
1月号の目次
新春によせて 本会理事長 近 泰男
・結婚前の妊娠 第一子の4人に1人
・平成22年度ブロック別母子保健事業研修会 続報
・思春期の性に関するピアカウンセリング講座が高校生に与える影響

産後の性生活と情報提供の実際  横浜総合病院産婦人科 助産師 児玉寿美子

・シリーズ「小児歯科」<1>乳児の歯・口の成長と口腔ケア

・EBMで解き明かす「子宮頸がん予防とHPVワクチン」Q&A<4>

避妊教育ネットワークトークリレー<10>大隈レディースクリニック(佐賀県江北町)副院長 大隈 良成

 

 新春によせて

 

社団法人日本家族計画協会理事長 近 泰男

謹賀新年

本年もよろしくお願い申し上げます

平成23年 元旦

新年明けましておめでとうございます。
本会も皆様の温かいご支援とご協力をいただきながら、57年目の新春を大過なく迎えることができました。
昭和29年(1954)4月の創立当初の目的は、当時届出だけでも100万件を超えていた人工妊娠中絶を減少させ、安易に中絶を行う風潮を改善し、妊娠を望まないならば、避妊によって妊娠を予防しよう、ということにありました。本会はこれを「家族計画運動」と名づけ、当時はまだ分娩介助を業として、地域でも大きな影響力を持っていた開業助産婦(師)さんや、保健所や市町村役場に勤務し、活発な保健組織活動を行っていた保健婦(師)さんと組んで、文字通り地域に根差した住民活動として大きな効果を上げました。政府もまた、これを母子保健政策の重点項目として全国に展開し、まさに官民挙げての熱気が今も思い出されます。
あれから57年が経過した日本は経済的にも社会的にも大きく変化し、本会も大波小波を乗り越えながら、しかし運動を始めた当初からの精神は全く変わることなく、大きな夢と希望を持って本年も乗り切ってゆこうと役職員一同心を引き締めているところです。
人工妊娠中絶の届出数も昭和30年(1955)の117万件をピークに年々減り続け、最新(平成21年度)は22万件と約5分の1にまで減っています。しかし、見方を変えますと、まだ22万人余の女性達が望まなかった妊娠に対し、人工妊娠中絶という苦渋の選択をしているともいえます。
本会の創立当初からのスローガン「すべての子どもは周囲のあらゆる人達から祝福され、待ち望まれて生まれてくる社会の実現」という趣旨からいっても、まだまだ問題は多く、啓発教育活動の必要性は減っていません。親の育児放棄、子殺し、虐待等々、運動を始めた頃は考えられなかったような事件が毎日のように新聞等で報じられていることは大きな問題です。
本会は、いつでも、どこでも、誰もがリプロダクティブ・ヘルスについて気軽に相談できる拠点づくりのため、諸事業を本年も全力を挙げて展開してまいります。
年頭にあたり、本年が皆様にとり輝かしい年になりますよう祈念するとともに、本会に対する一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

 

 

 産後の性生活と情報提供の実際

 

 産後の性生活指導積極的アプローチを

横浜総合病院産婦人科 助産師 児玉寿美子

 

 
   

 産後の会陰痛への対応

 近年、夫婦間のセックスレスが問題となっており、産後におけるセックスレスも増加してきています。産後の性交時にはエストロゲンの減少による性的興奮時の粘液の不足、性欲の低下、会陰縫合部の違和感や疼痛、疲労などが重なり、産後のセックスレスを助長させる要因になっていると思われます(図1)。

私達助産師は会陰痛のために、産後1年が経過しても性交がもてない褥婦さんや、2年以上セックスレスで悩んでいる方の声を聞くことがあります。相談していただけるのはまれで、実際にはもっと多いのではないでしょうか。「恥ずかしくて聞けない」「情報がない」との声もあり、産後の性生活についての情報もなく悩んでいる者は多いのではないかと思われます。
セックスレスには様々な原因がありますが、産後の性生活における会陰痛には潤滑ゼリーが効果的であることが褥婦に指導されていない現状があります。
①分娩施設での情報提供
神奈川県内の分娩施設51か所での調査によると、産後の情報提供として性生活指導を行っている施設は、91・8%でした。内容は「性生活の開始時期」95・6%、「避妊方法」97・8%、「ホルモンバランス」62・2%が多く、「潤滑ゼリーの紹介」は27・5%と少ない状況でした。
潤滑ゼリーは病院よりも助産院で多く紹介されており、病院での紹介は少ないようです。
②潤滑ゼリーの認知度
潤滑ゼリーを「知っている」と答えた褥婦とそのパートナーは56・3%でしたが、使用目的として産後にも有効であることを「知っている」と答えた褥婦は9・7%、パートナーは6・5%と低い値でした。
また経産婦で「過去に使用したことがある」と答えた夫婦は9・4%と少ない値でした。

 
   

産後の性生活の実態

 産後の性生活の実態について、潤滑ゼリーを使用しない夫婦(以下「ゼリーなし群」)と、ゼリーを紹介し、使用したケース(以下「ゼリーあり群」)を比較した結果は次の通りでした。
①性生活の開始時期
ゼリーなし群、ゼリーあり群ともに70%以上の人が産後3~4か月に開始していました。
②性生活未開始の理由(図2)
性生活未開始の理由は、褥婦では「育児の多忙」が一番多く、次に「性欲の低下」、「夫に触れられたくない」が続き、「会陰部の痛み」を理由とする人は少数でした。
パートナーにおいては、「妻が育児で多忙」が一番多く、次に「仕事の多忙」、「相手に拒否されそう」であり、「会陰部の痛み」を気遣う意見は少数でした。
 

 
   

③性生活までの会陰の疼痛や違和感の有無(図3)
分娩様式別にみると、経腟分娩だけでなく、帝王切開でも約半数が、会陰の疼痛を感じていることがわかりました。

 
   

④性生活への不安の有無と原因(図4)
ゼリーなし群褥婦では「不安あり」80・4%、「不安なし」19・6%であり、ゼリーあり群褥婦では、「不安あり」69・6%、「不安なし」30・4%であり、潤滑ゼリーがあることで不安が軽減しています。パートナーでは、明らかにゼリーあり群の方が、不安が軽減していました。不安の原因は、「会陰部の疼痛」や「裂けるのではないか」が最も多くありました。
このように、性生活を開始した人の約70%は分娩様式に関わらず、会陰部の痛みや違和感を覚えており、パートナーも会陰部の不安を抱えていることから、会陰部の問題は性生活を始める人にとって、より深刻な問題になっていることがわかりました。
帝王切開の会陰痛の原因は、ホルモンの変化や子宮切開創の放散痛などもあると推測されます。また潤滑ゼリーは半数以上の人が認知し、目的を理解しているにも関わらず、産後の使用が少ないことは、情報不足が考えられます。

 
   

⑤産後初めての性生活での性交痛の有無(図5)
ゼリーを使用することにより、褥婦、パートナーともに性交痛を感じている人は有意に減少していました。

 
   

⑥潤滑ゼリーを知ることによる不安・疼痛の変化(図6)
潤滑ゼリーを知ったこと、持ち帰ったことで不安は軽減し、性交痛も明らかに軽減していることから、潤滑ゼリーは産後の性生活に有効であることがわかりました。

 
   

求められる性生活指導

 
横浜総合病院では、産後の性生活指導は、産後入院中に退院指導の中で実施しています。褥婦2~6人程度を対象に、集団指導のスタイルでリーフレット(写真1)を用いて行っています。内容は、家族計画、避妊指導の他に、ママの気持ち、パパの気持ち、ホルモンバランス、セックスレスについて、性についての話し合いの重要性、会陰痛の予防策などです。
会陰痛の予防策として、潤滑ゼリーのサンプルとコンドームを配布し、産後の性生活時に使用を促しています。潤滑ゼリーは、「なかなか自分では購入しにくい」、「ドラッグストアなどではどこにあるのかわからない」、「お店の人に聞きにくい」との意見があったため、医療用品を販売している院内の売店で購入できるようにしています。
産後の性生活について、パートナーへは褥婦から、潤滑ゼリーを含めて話し合ってもらっていました。しかし「パートナーには恥ずかしくてなかなか伝えられない」、「医療者から伝えてほしい」という意見が多くあり、性について夫婦間で話し合うことが少ない現状がありました。
入院中の性生活指導については、「夫にも聞いてほしい」、「大事なことなので妊娠中、産後と何回も聞きたい」、「夫婦で聞きたい」などの意見もありました。
褥婦とパートナーに実施した調査結果は、次の通りでした。

 
   

①夫婦が望む指導形態(図7)
夫婦それぞれにアンケートを行った結果、指導形態については、褥婦は「夫婦単位で聞きたい」と思っている者が多いのに対して、パートナーは「褥婦のみが指導を受ければよい」とする者が多く、夫婦で指導を聞くことへの意識の差がみられました。
褥婦からは、「夫にも聞いてほしい」、「医療者から伝えてほしい」などの意見もあり、できる限り夫婦を対象とした指導、情報提供を行う必要があると思います。

 
   

②指導内容(図8)
聞きたい指導内容については、褥婦、パートナーともに「産後の身体の回復」や「ホルモンバランスについて」が多く、次いで「セックス以外のコミュニケーション」や「性生活の開始時期」、「避妊について」となりました。
褥婦に比べて数値的には少ないですが、パートナーには褥婦の身体面も含め、心理面も知りたいという傾向がうかがえました。

おわりに

 以上、調査の結果をまとめると、次のようになります。
①指導の時期=夫婦ともに産後入院中、また妊娠中を希望している。
②指導形態=夫婦で集団または個別を希望している。
③指導内容=ホルモンバランスをはじめ、性生活に関係する具体的内容が求められている。
④パートナーへのアプローチ=医療者によるアプローチが必要である。
産後に夫婦単位での指導、情報提供を行うことが最も望ましいのですが、現状では助産師のマンパワーが不足しており、実践には困難もあります。妊娠中に助産師外来、助産師指導、母親学級など、パートナーが参加できる機会があるため、その機会を利用して積極的にアプローチし、入院中や産後健診以外でも、気軽に聞きたいことが聞けるようなシステム作りが必要とも考えます。
パートナーの理解を深めるためにも、パートナー向けのリーフレット作成、配布も有効と考えます。妊娠・分娩・出産・産後を通して、夫婦で性に向き合えるような働きかけが必要であり、それには、最も身近な我々医療者がアプローチしていくことが最適と考えます。
 

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