機関紙

【第685号】 平成23年4月1日発行(2011年)

2011年04月 公開
4月号の目次
編集帖
被災地の女性、妊産婦への支援を
平成23年度本会主催セミナー予定
・女性と子どもをタバコの害から守るには

「第5回男女の生活と意識に関する調査」結果

・「女性の健康週間」イベント開催

避妊教育ネットワークトークリレー<13>ひまわりレディースクリニック院長 植田 啓

 

 編集帖

 

▼3月11日午後2時46分。東京・市ヶ谷にある保健会館新館が揺れた。電話相談が途切れず、逃げ出すこともできなかった。それから間もなく、この地震が世界最大級M9・0の大地震だと知った。

▼筆者も帰宅困難者となって、夜の町をさ迷うことを余儀なくされた。いつも歩く道だがその時ばかりは違っていた。テレビ報道を通じて刻一刻と未曾有の惨状が伝えられるにつけ、自然の前に全く無力な人間の姿を目の当たりにし、愕然とするとともに、涙を止めることができなかった。

▼自家発電に頼らざるを得ない劣悪な環境下にあっても、帝王切開をし、正常分娩とはいえお産に立ち会っている後輩からのメールも届いた。自身の親族や友人の安否も気になりながら、医者としての使命を黙々と果たしているのだから胸が痛む。

▼いち早く世界134の国・地域から日本への支援の手が差し延べられたことを知ってまたしても涙腺が緩くなった。米軍の支援は「トモダチ作戦」というのだそうだ。あらためて「トモダチ」と入力しながら、幼いときに読んだ「走れメロス」(太宰治著)を思い出した。我が身の危険を顧みずセリヌンティウスを助けるために走り続けたメロスと重なったのだ。

▼そして、自分達に何ができるかを真剣に考えた。このような時だからこそ電話相談を全うすること。サイト上で「ピル服用を中断せざるを得なかった女性へのアドバイス」を掲載した。地震の次が意図しない妊娠では困る。細々とだが、できることから一歩一歩前に進むことを決めた。

▼被災された皆様に心からお見舞い申し上げるとともに、犠牲者の方々に深甚なる哀悼の意を表したい。せめて、元気でいる僕たちが、復興に向けて力を尽くそう。ガンバレ日本。ガンバレ東日本の仲間たち。 (KK)

 

 

 「第5回男女の生活と意識に関する調査」結果

 

 人工妊娠中絶防止対策に新知見

 「第5回男女の生活と意識に関する調査」は、2010年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)「望まない妊娠防止対策に関する総合的研究」(主任研究者=竹田省・順天堂大学医学部産科婦人科学講座教授)の一環として、分担研究者である本会家族計画研究センターの北村が中心となって実施した。これで02年、04年、06年、08年、10年の5回にわたって行われたことになる。第5回調査報告書の内容 (本会常務理事・家族計画研究センター所長 北村 邦夫)

 この調査は、全国の16歳~49歳の男女3千人の方を対象とし、層化二段無作為抽出法という調査手法をもって実施したものであり、調査員による訪問留置回収という作業がとられた。
 質問の内容を以下に列挙した。
(1)日常生活や考え方について
(2)性の意識や知識について
(3)対象者自身の性行動について
(4)初めてのセックス(性交渉)について
(5)現在の避妊の状況について
(6)低用量ピルについて
(7)子宮頸がん予防ワクチンについて
(8)人工妊娠中絶について
 09年度の保健・衛生行政業務報告によると、人工妊娠中絶実施件数は1955年の117万件をピークに以降漸減し22万3405件、20歳未満の中絶実施率についても01年の13・0から12・8、11・9、10・5、9・4、8・7、7・8、7・6と毎年減少を続け7・1となった。本調査結果からは、中絶減少の要因は何か、今後さらに中絶を減少させるにはいかなる取り組みが有効かを検討する貴重な資料を得ることができた。

層化二段無作為抽出法で調査
 「第5回男女の生活と意識に関する調査」を行うにあたっては、①調査の目的と必要性及び期待される成果、②調査及び学術調査の概要、③調査内容(調査目的と質問項目)の妥当性、④調査対象者の標本数及び属性について、⑤調査対象者の選定・依頼と協力について(選定基準、依頼方法、協力の詳細)、⑥調査対象者の権利の保護について(調査対象者が未成年者の場合も含む)、⑦個人情報を保護する方法、⑧調査結果の公表などについて詳細に明記したうえで、?新情報センター倫理委員会(東京都渋谷区)に宛てて「倫理審査申請書」を提出し慎重な審議を経た後、行われたものである。
 調査は層化二段無作為抽出法という調査手法を用い、平成22年9月1日現在満16歳~49歳の国民男女3千人を対象として、平成22年9月11日?~9月28日?に実施した。その結果、転居、長期不在、住居不明によって調査票を手渡すことができなかったものを除く2693人のうちの有効回答数は1540人(男性671人、女性869人)、57・2%であった。同様な計算方法で算出した有効回答率は第1回52・4%、第2回52・7%、第3回51・9%、第4回54・1%であり過去最高。回答者の平均年齢は34・2歳(男性33・8歳、女性34・5歳)。

人工妊娠中絶を繰り返す女性の特徴とは
 これまでに人工妊娠中絶の手術を受けたことが「ある」という女性は15・5%。そのうち35・6%が中絶を繰り返していた。1回目の手術を受けた年齢は23・9歳、2回目は24・9歳であった。
 過去の調査結果を含めて反復中絶実施率をみると、前回に比べて10・2ポイントも高くなっていることがわかった。わが国の人工妊娠中絶実施率が年々減少傾向を示していることを考え合わせると、中絶が限られた女性によって行われているのではないかと推測される。だとしたら、中絶防止対策は反復中絶を防止することが効果的ではないだろうか。

   

 100%確実な避妊法がこの世の中に存在しない以上、性交が行われる誰でも妊娠する可能性がある。その妊娠が仮に意図しない、あるいは予定外の場合、やむを得ぬ理由で中絶を選択せざるを得ない場合があることをリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)として捉えることが大切である。しかし、「繰り返すこと」についてはどうだろうか。
 まずは、人工妊娠中絶手術を担当した医師やコメディカルの怠慢さを問題にしたい。中絶が行われた日を月経の初日としてなぜ低用量経口避妊薬など確実な避妊法を提供できなかったか、あるいは手術が行われるのに合わせて子宮内避妊具や子宮内避妊システムの挿入を勧めることができなかったのか。加えて、今回の研究では反復中絶経験のある女性の特徴とともに(表1)、今後取り組むべき課題を明らかにすることができた。

(1)子どもの頃の家庭環境に問題はないか
 「中学生の頃の家庭」について尋ねると、反復中絶経験あり群(以下「あり」群)では「楽しくなかった」割合が40・4%(「なし」群23・4%)と高率であり、「両親の離婚経験」では「あり」群25・5%(「なし」群12・7%)と高率であった。「自傷行為(リストカットなど)」についても「何回もある」「1度だけある」を加えた経験割合は「あり」群29・8%(「なし」群7・8%)となっている。

(2)喫煙・飲酒などの生活習慣に改善の余地はないか
 「タバコを習慣的に吸っているか」には、「あり」群の54・2%、「なし」群13・0%が「習慣的に吸っている」と回答。「1週間の飲酒量」を尋ねると、「飲まない」は「なし」群が57・9%に対して「あり」群が47・9%と少数となっている。「3合以上」に限ってみると、「なし」群が5・2%、「あり」群29・2%の結果であった。

(3)学習の機会が奪われているのではないか
 今回の調査では「最終学歴」を聞いている。これによれば、「中学校卒」の割合が「あり」群では18・8%(「なし」群7・7%)、「高等学校卒業」までを加えると、「あり」群70・9%(「なし」群44・2%)であり、「あり」群では「なし」群に比べて公教育とのかかわりの機会が短かいことが明らかにされた。これが、性教育や避妊教育の学習機会を奪う結果となっている。

 例えば、「中学生がセックスすることについて」では、「責任のとれる年齢や立場ですべき」(「あり」群50・0%、「なし」群68・8%)、「学業に影響がありしないほうがよい」(「あり」群27・1%、「なし」群18・4%)であり、中学生のセックスに対して「あり」群が寛容な傾向であった。
 また、「初めての異性とのセックスについて」も、「重大なことだと感じていた」という割合は、「あり」群の54・2%に対して「なし」群では75・8%で、セックスを意外と軽く考えている様子がうかがえるだけでなく、「初めてセックスした相手との知り合い方」では、「街で声をかけられて知り合った」が「あり」群16・7%、「なし」群2・4%と際立った違いを認めた。そのためか「初めてのセックスの時に避妊をしたか」では、「あり」群の39・6%(「なし」群70・1%)が「避妊した」と答えたに過ぎなかった。
 「避妊方法について主にどこで知ったか」の問いでは、回答者全体の40・2%が「学校」と回答している一方、「あり」群での割合は25・0%(「なし」群42・0%)と極めて低率であり、その一方で、「友だち」の回答が「あり」群では35・4%(「なし」群18・9%)と高かった。このような傾向は、中絶経験がないということだけでなく、中絶経験が1回(「学校」34・5%、「友だち」17・2%)と比較しても統計的に有意な差を認めることとなった。
 結局、中学生の頃までの性教育の不備が露呈される結果になったとは言えないだろうか。異性とのコミュニケーションの在り方、セックスに伴うリスクなど、本来であれば公教育の責任から義務教育年限までにしっかりと学ぶことが大切なのに、そのチャンスが奪われ反復中絶を余儀なくされているとしたら、看過できない由々しきことだと思われて仕方ない。

   
   
 
 
 
写真1 「第5回男女の生活と意識に関する調査」結果を取り上げた国内外のメディア  

 ちなみに、表2にあるように、例えば「コンドームの使い方」について国民は15歳までに67・2%が、「避妊法」については76・3%が「知るべき」と回答しており、この傾向は過去の調査と照らしても一貫している。しかし、その一方で、「コンドームの使い方」を中学3年生までに教えることは不適切であるとの烙印を押されかねないというのは、国民と教育界との間の乖離が大きすぎる。これでは反復中絶を減少させること、ひいては人工妊娠中絶を防止することは難しい。

緊急避妊法を使ったことある女性推計60万人
 本年2月23日、悲願であった緊急避妊薬「ノルレボ錠」(成分レボノルゲストレル)が承認された。とはいえ、わが国は医師の判断と責任とによって、長年にわたって月経困難症治療剤などの適用を有する薬剤が緊急避妊を目的に使われてきたという歴史がある。さらに、本会では2000年頃から全国に緊急避妊薬を処方してくれる施設ネットワークを組織するとともに、インターネットなどを通じて「緊急避妊ホットライン」(TEL03―3235―2638)を周知してきたこともあり、認知度は極めて高い。
 「モーニングアフターピル、性交後避妊、緊急避妊法の言葉を聞いたことがあるか」を問うと、全体の30・0%(男性23・1%、女性35・3%)が「聞いたことがある」と回答。その割合は調査を重ねるたびに上昇している(図1)。「聞いたことがある」と回答した方に、「利用したことがあるか」を尋ねると、「利用したことがある」は男女ともに6・5%。15歳~49歳の女性人口を2653万人として計算すると緊急避妊法を過去に利用したことがある女性は延べ60万8千人を数えている。 

セックスレス化が一段と進む
 日本性科学会は1994年にセックスレスを「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1か月以上ないこと」と定義。セクシュアル・コンタクトにはキス、ペッティング、裸での同衾(どうきん)などが含まれることから、「この1か月間セックス(性交渉)が行われているか」と尋ねる本調査での質問は狭義にセックスレスをとらえていることになる。
 婚姻関係がある男女でのセックスレス率は40・8%。同様な調査が第2回(04年)から実施されているが、04年調査では31・9%、06年が34・6%、08年が36・5%であったので、わが国のセックスレス化が一段と進んでいることは明らかである。
 婚姻関係にありながらセックスに対して積極的になれない理由を尋ねると、男性では「仕事で疲れている」がトップで19・7%(女性13・9%)、女性では「面倒くさい」が一番で26・9%(男性10・7%)、「出産後何となく」(男性18・9%、女性22・1%)、「セックスより楽しいことがある」(男性4・9%、女性6・3%)、「家族(肉親)のように思えるから」(男性3・3%、女性4・8%)などが続いている(表3)。
 その一方で、深刻な事態も話題になっている。若い世代でセックスに対する関心が薄れていることだ。「現在、あなたはセックスすることに関心があるか」の問いに、「とても関心がある」11・6%(男性21・9%、女性3・7%)、「ある程度関心がある」51・5%(男性59・5%、女性45・3%)ではあるものの、「あまり関心がない」「まったく関心がない」「嫌悪している」の割合が、男女ともにではあるが、08年調査に比べて、特に若い世代で増加しているのだ(表4)。 「男子の草食化」という言葉がメディアを賑わせているが、いったいその原因はどこにあるのだろうか。今回の調査結果の発表を受けて、国内外のメディアがこれに注目しており、今後は質的調査を進めることで原因を探求していきたいと考えている(6面・写真1)。
 このように、若い世代でセックスに対する関心が低下し、婚姻関係にある男女のセックスレス化が進行することは、妊娠の機会が失われ、結果として人工妊娠中絶を減少させる可能性があるものの、同時にわが国の少子化と決して無縁ではないように思われる。

虐待を受けたことがある女性は7・1%
 「18歳くらいの頃までに、両親や同居していた方から虐待を受けたことがある」と回答した方が全体の5・0%(男性2・2%、女性7・1%)に上ることが明らかとなった。「ある」と回答した方に、その内容を尋ねると、「心理的な虐待(子どもの心を傷つけるようなことを繰り返し言うなど)」が最も多く66・2%(男性53・3%、女性69・4%)、次いで「身体的な虐待(殴る、蹴る、熱湯をかける、たばこの火を押しつけるなど)」54・5%(男性80・0%、女性48・4%)、「養育の放棄(ネグレクト、食事を与えない、長時間放置するなど)」15・6%(男性13・3%、女性16・1%)、「性的な虐待(性的な行為の強要、性器や性交を見せるなど)」11・7%(男性0%、女性14・5%)となっている。
 全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数は、児童虐待防止法施行前の1999年度に比べて、09年度においては3・8倍に増加していると報告されているが、このように、一般集団を対象として虐待経験率を明らかにしたことは異例のことである。

謝 辞
 本稿を終えるにあたり、本調査が厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)の一環として行われたことを繰り返しご報告したい。主任研究者である竹田省順天堂大学医学部産科婦人科学講座教授からは調査研究費にご配慮を賜った。調査票作成に際しては、分担研究者である安達知子さん(総合母子保健センター愛育病院)、中村好一さん(自治医科大学医学部)に加えて、阿江竜介さん、古城隆雄さん、坪井聡さん(以上自治医科大学医学部)、菅睦雄さん(リプロヘルス情報センター)、吉田穂波さん(ハーバード大学)などから貴重な意見を頂戴することができた。層化二段無作為抽出法については既にご紹介した通りであるが、対象者の抽出にあたっては150市区町村において住民基本台帳の写しの閲覧が必要であった。厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課からは該当市区町村長に対して「住民基本台帳の写しの閲覧願い」をご提出いただいた。突然の調査依頼が向けられた関係市区町村の担当者の協力も不可欠であった。専門的な立場から終始ご助言を賜った(社)新情報センターの安藤昌代さん、煩雑な作業に協力いただいた当クリニック杉村由香理事務長、なによりも調査にご回答いただいた方々に深甚なる感謝の意を表したい。
 このように大勢の方々のご協力をいただいた調査結果報告が、皆様の研究、施策の立案に有効に活用されることを切に願っている。

◆お知らせ◆
第5回調査報告書の内容
日本家族計画協会では、本調査の内容を収録(第1回~第5回)したCD-ROMを発売しています。

層化二段無作為抽出法
 層化二段無作為抽出法とは、まず、①全国の市区町村を、都道府県を単位として11地区に分類し、さらに、②各地区においては、都市規模によって大都市、人口10万人以上の都市、人口10万人未満の都市、町村という4層に層化した。そのうえで、 区・都市規模別各層における推計母集団数の大きさにより、それぞれ3000の標本数を比例配分し、各調査地点の標本数が13~23になるように調査地点数を決めた。次に、抽出の1段階目として、各層内で国勢調査区より割り当てられた地点数を無作為に抽出し、2段階目として各地点を管轄する自治体の役場で住民基本台帳から対象者個人を抽出した。
 

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