機関紙

<16>横浜市立大学附属市民総合医療センター生殖医療センター泌尿器科 湯村寧

2016年06月 公開
シリーズ遺伝相談 特定領域編4

クラインフェルター症候群



横浜市立大学附属市民総合医療センター

生殖医療センター 泌尿器科

湯村 寧



男性不妊の原因


 クラインフェルター症候群とは、二つ以上のX染色体と、Y染色体を一つ持つ性染色体異常疾患の一つです。核型としては47,XXYが最も多く、その他モザイク型も見られます。
 表現型(外見)は男性で、一般には高身長、やせ型、長い手足となることが多いといわれています。幼少時に気付かれ診断に至る場合もありますが、特に気付かれず不妊症を契機に発見されることが多くあります。頻度は男性千~2千人に1人といわれており、性染色体異常を原因とする男性不妊症の中では最も高い割合を占めています。
 昨年度に行われた厚生労働省の男性不妊症に関する全国調査では、7253人の男性不妊症患者のうち染色体・遺伝子異常を有する患者は312人(4.4%)で、うちクラインフェルター症候群患者は129人(1.8%)でした。純粋なクラインフェルター症候群の場合と(非モザイクタイプ47,XXY)、正常核型と両方混在する場合があり(モザイクタイプ46,XY/47,XXY)、非モザイクタイプが90%、モザイクタイプが10%を占めるといわれます。


多彩な症状も
 思春期以前はあまり異常が見られず、成人では糖尿病、甲状腺機能低下症、乳がんなどの病気の頻度が高くなるという報告がありますが、多くの場合は男性不妊症、特に無精子症や高度乏精子症(精子濃度500万/㍉㍑以下)で発見されます。
 成人において精巣はほとんどの場合萎縮しており、ホルモン検査ではLH,FSHという男性ホルモン産生や精子形成を促すホルモンが上昇していますが、男性ホルモンであるテストステロンは低下しています。そのため骨粗しょう症、筋力低下、女性化乳房、性欲低下など多彩な症状が出ることがあります。


検査と治療
 検査ですが、末梢血染色体検査(Gバンド法)によって染色体異常を確認することで診断に至ります()。
 染色体異常ですので、クラインフェルター症候群を根本的に治す治療法はありません。多くは男性ホルモン低下による症状(骨粗しょう症、筋力低下、女性化乳房、性欲低下)に対して、症状を緩和する目的で男性ホルモンの補充療法が行われます。
 一般的には、テストステロン剤注射を3〜4週間に1回行います。副作用としては多血症、睡眠時無呼吸症候群などに注意しつつ治療を行います。

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男性不妊症と生殖補助医療


 男性不妊症に対する治療ですが、モザイクタイプ(46,XY/47,XXY)は精液中に少ないながらも、精子を認める場合があります。薬物などの不妊治療で精子を増やすことは困難であり、精子数も少ないため自然妊娠・人工授精も困難です。そのため、そのわずかな精子を利用した体外受精、顕微授精が必要となりますが、妊娠の可能性はあります。
 一方、非モザイクタイプ(47,XXY)では無精子症となる場合が多く、残念ながら自然妊娠・人工授精・射出精液を用いた体外受精は困難です。
 以前は無精子症のクラインフェルター症候群では、診断が付いた時点で挙児を得ることは不可能であり、「お子さんは諦めてください」と伝えられていた時代もありました。しかし、精巣内には精子が認められる場合があることが近年明らかになっており、精巣を直接切開し精子を探し出す、顕微鏡下精巣内精子回収術で得られた精子を用いた顕微授精を行うことで、挙児を得られる可能性があります。
 特発性無精子症(染色体などは正常なのに原因不明で無精子症となっている男性で、無精子症の中で最も多い病態)では、顕微鏡下精巣内精子回収術での精子回収率が20~30%であるのに対し、クラインフェルター症候群では50~60%と、近年比較的良好な成績が報告されています。
 生殖補助医療を行う場合は、さまざまなリスクなどについて専門医から十分に説明を受ける必要がありますが、一般的にクラインフェルター症候群では他の染色体異常の病気と比較しても、児に疾患が伝播するリスクは非常に低いと考えられています。
 このようにクラインフェルター症候群では、現在の生殖補助医療技術を用いて子どもを授かることができる可能性があります。しかもクラインフェルター症候群以外の無精子症患者さんよりも精子回収率が高いため、本疾患の可能性がある場合は、可能であれば泌尿器科の生殖医療専門医を受診し検査を受け、治療を検討することをお勧めします。



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