機関紙

<12>安心して子育てができる社会を目指して 岩手県立二戸病院(岩手県二戸市) 秋元義弘

2016年03月 公開
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秋元 義弘
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その12

安心して子育てができる社会を目指して



岩手県立二戸病院 秋元 義弘



中絶は女性の大切な権利

 およそ20年前、岩手県の10歳代の人工妊娠中絶率が全国でも一番多かった頃、「なぜ、こんなことになっているのか」「何とかしなくては」という思いから、性の健康教育に携わるようになり、岩手県で唯一の思春期外来を立ち上げ、現在に至ります。
 以前は「中絶は駄目なこと」ということを子どもたちに告げてしまっていた時期もありましたが、さまざまな出来事や時代の趨勢により、自分自身の考え方も大きく変化してきました。
 現在は「中絶は女性の大切な権利。だけど、しないに越したことはない」「あなたが今まで育ってきた環境が、たとえ大変なものであったとしても、あなたは幸せになる権利があるよ」「迷わないことが強さじゃなくて、怖がらないことが強さじゃなくて、泣かないことが強さじゃなくて、本当の強さって、どんなことがあっても前を向けることだよ」といったことを伝えるようにしています。
 性の健康教育は、子どもたちがぜひとも身に付けなくてはならない「ライフスキル」の一つであり、それ以外にも、人との関わり合いで生きていくときに必要な知識、考え方はたくさんあるわけです。講演の限られた時間内ですが、そのような「ものの捉え方、考え方を伝えること」が、何よりも大切、そう思うようになっています。
 
震災からの復興まだまだ
 岩手県は関東、関西などの都市部よりもはるかに収入が低く、家庭環境も恵まれない状態で育っている子どもが多くいます。その環境をすぐに改善させるすべは、残念ながらありません。さらに、5年が過ぎた、あの大震災からの復興もまだまだその緒に就いたばかりです。夢中で過ごしてきた彼らでも、あまりにも長い復興までの道のりに息切れし、心が折れてしまい、道を誤ってしまう若者も、増えてきています。
 そうした悲しい流れをどうすれば断ち切ることができるのか。また、恵まれている若者と、そうでない若者の格差は、全てにおいて生じてきています。
 地域として、社会として、彼らを支援、支えて行くには、どのようなシステムを構築していけば良いのか、現在の自分は、医師としてできること、現場を伝えられるものとして、行政や民間と、どうコラボしていけるか、そうしたことを探っています。
 
さまざまな活動と支援
 中学生への赤ちゃんふれあい体験実習、一つの町内全ての中学生への講演、妊産婦を地域で見守るシステムづくり、児童養護施設への支援など、岩手の、北東北の、若者たち、全員が、自分の望むときに、望む相手の子どもを妊娠、安心して出産、楽しんで子育てしていける地域社会、そうしたことを夢見ながら、日々活動しています。


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中学生への「赤ちゃんふれあい体験実習」。妊婦さんのおなかを触らせてもらい、胎動を感じる



【今月の人】 秋元 義弘

1990年、自治医科大学卒。3.11被災地を含む岩手県内各地の県立病院勤務を経て、現職(産婦人科長)。思春期世代、妊産婦への支援を行いつつ、ライフスキル講演を行っている。

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