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海外情報クリップ

【海外情報クリップ】
スウェーデンの性教育

第809号

◆アラブ系移民
 学校の義務教育としての性教育に長い歴史があるスウェーデンでも、文化の異なる移民の子女に対する取り組み方にはまだ課題が多くあります。ストックホルム・カロリンスカ大学の公衆衛生学部の研究グループは、移民の親73人に対して聞き取り調査を行い、その結果を発表しました。
 スウェーデンに移住して15年未満(約7割は4年以下)の男女(20~49歳が8割以上)で大多数は出身国がシリアとイラクです。これらの国は、セックスの話題は公共の場はもとより家庭内でも禁句とされ、性教育は祖国では受ける機会はありませんでした。ですから、子供が性教育を受けることに肯定的です。
 一方で、子供がスウェーデンの性教育を受けるのは親にとっての初めての経験です。親にとっての不安や否定感として調査で浮上した幾つかの点は以下の通りでした。
 ①スウェーデンでは、性や性的指向に関して本人の自由意志を尊重するが、家庭(母親)は子供に良し悪しの判断をする能力が無いような教え方では困る②子供が性に興味を持ち過ぎて学業に集中できなくなる③初経前の性教育の影響(ホルモン分泌など)で初経が早くなるのではないか④性教育を始める年齢が早過ぎるあるいは内容の多過ぎは性的観念を助長する⑤この国の性教育は露骨なので、子供がむやみに性行為に走るリスクがある⑥これらの事は世代間の摩擦を生む背景になりかねない―などでした。
 研究者らによると、性に関する世代間の摩擦はどの家庭にでも見られることですが、移民の家族では特に顕著であると言っています。まず移民家庭の両親に対して性教育で教える情報を提供することが、世代間の摩擦や不和を起こさないために重要です。
 いまスウェーデンでは、学校と家庭との間で性教育を通して対話を始めることで、移民家族がスムーズに新しい社会に順応していく支援をしようとしています。
参考 Van Wees SH, et al. Sexual & Reproductive Healthcare. 28 (2021) 100596

(翻訳・編集=オブジン)



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