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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第60話>低用量ピル 中薬審特別部会を通過、販売は来年7月か

第828号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 業界紙に「リスファクス」というのがある。その内容をコピペするのはいささかはばかられるが、1997年10月29日配信の「販売は来年7月か」の記事に目が留まった。
 「中央薬事審議会は28日、医薬品特別部会を開催。低用量ピルについて厚生省が、服用希望者がピルを入手するまでの流れを図式化したものを提示し、委員の賛成が得られたため、12月上旬に開催予定の常任部会に審議を移すことを決めた。常任部会では公衆衛生上の安全対策の観点から保健医療局の協力を得ることとし、さらに国民からも意見を求める方針。そのため、審議が2~3回必要で、承認を得ての販売は早くて来年7月になりそうだ」とある。
 「日刊薬業」(同10月28日付)でも、「『6か月ごとの受検』など盛る。低用量ピル 同意書の最終案固まる」との見出しの中で、「来年4月にも承認されることが有力となっている」と書かれている。
 当時、筆者もこれらの記事を読みながら、「低用量ピルの承認は、ついに来年か」と心躍らせたものだ。その頃、世界エイズデー関連行事として、厚生省などの主催で、「ピル認可とエイズ等 性感染症対策について」が開催され、筆者もパネリストの一人として登壇。「ピル認可が性感染症をまん延させるか」について熱弁をふるった。アウェーの環境の中での講演。「専門家がピルの認可申請後7年もかけて審議し、さらにエイズに係る臨床・研究分野の専門家の議論を経てきたピルについて、改めて国民の声を聞くことにはどのような意図があるのだろうか。低用量ピルについての国民の声とは、認可された時に、『使うか』、『使わないか』で決まるのではないか」と持論を述べた。
 「承認は来年か」の機運が高まる一方で、毎日新聞同12月23日付「ニュース展望」では、「低用量ピルの認可が大幅に遅れる見通しとなってきた」との書き出しで、これまでのピルの審議を総括している。「認可するかどうかの審議は1991年から中薬審で始まった。92年夏には認可される見通しだったが、認可に伴ってコンドーム使用率が低下すれば、エイズ感染が拡がる恐れがあるという観点から、審議はいったん凍結された。95年に審議が再開され、ようやく新薬承認の最後のハードルである中薬審の常任部会にまで進んだ。ところが、今また安全性、有効性とは別の問題が認可の前に立ちはだかっている」と。そして、認可がさらに遅れそうな問題として、「エイズなど性感染症に関する意見聴取の必要性」と「環境ホルモンとの関連」を挙げている。
 何度も繰り返すが、ピルの承認は99年6月だから、この時の騒動も結局は泡と化したわけだ。



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