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OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか

OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか<39>
喜んでいただけるとこちらも嬉しい

第836号


あかねヶ丘高橋レディスクリニック 院長(山形県山形市) 高橋 一広

興味の対象

 2017年4月、山形大学を辞め現在のクリニックを開業しました。大学では「エストロゲンの抗動脈硬化作用」が主な研究テーマであり、臨床的には外科的閉経が更年期症状、脂質代謝、血圧、骨密度に及ぼす影響について研究していました。学問的な興味の対象は主に“エストロゲン”でした。HRTで併用するプロゲスチンはあくまでもエストロゲンの副作用を予防するための“佐薬”であり、エストロゲンがメイン、プロゲスチンはサブという位置付けでした。大学病院では新患外来と更年期外来を担当していましたので、OC/LEPを処方する機会はそれほど多くありませんでした。

歴史をさかのぼる

 開業するとこちらの専門などは全く関係なく、様々な主訴で患者さんが受診されます。大学病院での外来と比べるとまさに“何でも屋”的な感じでした。その中で月経痛、PMS、月経不順を訴えて受診される患者さんが多く、開業後は診察する患者層が大きく変わりました。ここでHRTからOC/LEPを扱うことが格段に増えました。そこで自分はOC/LEPの主体であるプロゲスチンをどこまで理解していたのか、知識を整理するきっかけになりました。全てのOC/LEPに使用されるエストロゲンはエチニルエストラジオール(EE)のみ、それに対し日本で使用されているプロゲスチンは4種類、改めてこの4つのプロゲスチンの違い、それぞれを患者さんに選択するメリットやデメリットは何か? を遅まきながら確認したくなりました。自分の学問的な興味は、プロゲスチンがメイン、エストロゲンがサブにシフトしました。そのうちOCの開発から日本における承認までの歴史を深堀したくなり、北村先生の「ピル承認秘話」にたどり着きその歴史を改めて知ることができた次第です。

選択肢の広がりに期待

 HRTにおいて天然型黄体ホルモン製剤が2021年に日本でも使用可能になりました。フランスで承認されてから遅れること30年、やっと日本でも保険適応が認められました。OC/LEPでも新しく日本で使用できるようエステトロール(E4)とDRSP配合剤の臨床試験が進んでいるようですし、海外では内因性のエストロゲンである17βエストラジオール(E2)とノメゲストロール酢酸エステル(NOMAC)配合剤も使用されています。いつかこれらの薬剤を自分たちも処方できるようになれば、患者さんに合わせてどの薬剤を処方するか悩むのも楽しいだろうなと想像してしまいます。

正しい情報を思春期から

 外来を受診される患者さんの中には、OCに対してネガティブなイメージを持っておられる方もいます。そんな方も受診をきっかけにOCの正しい情報を知り、OCを使用することで症状が改善し喜んでいただける場合がほとんどです。患者さんに喜んでもらえると、こちらも嬉しくなります。その一方でOCの間違った情報を信じて病院を受診せず、月経関連症状を市販薬のみで我慢をしている女性も多いと思います。開業してから中学校から性に関する講演を依頼される機会があります。その際に月経に関連した悩みに対し、OC/LEPという治療があることも話しています。男女ともに正しい知識を思春期のうちに覚えてもらい、月経関連症状がみられた場合、OC/LEPを治療法として選択してもらえるよう、お話させてもらっています。OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか、と言うほど変わってはいませんが、患者さんのQOL向上ためにOC/LEPの上手な使い手になろう、という気持ちにさせられているところです。


今月の人

たかはし・かずひろ
1987年、山形大学医学部卒業後、同大学産婦人科入局。97年、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(現PMDA)、98年、東北大学、2001年、大阪大学で研究の後、02年、山形大学助手、06年、同大学講師、11年、同大学准教授を経て、17年、開業。


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