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一般社団法人 日本家族計画協会

機関紙

<58>クリニックを女性の駆け込み寺・寺子屋に ココカラウイメンズクリニック(愛知県名古屋市) 伊藤 加奈子

2015年01月 公開
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伊藤氏

クリニックを女性の駆け込み寺・寺子屋に



ココカラウイメンズクリニック(愛知県名古屋市) 伊藤 加奈子

 

 

 

 

子宮頸がんと自閉症
私は産婦人科のたらい回し事件で世間が賑わう過酷な時期に、東京女子医大に入局しました。大変な研修医生活でしたが、先輩医師から多くのことを濃縮して学べた大切な時期を過ごしました。今は懐かしい思い出です。

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NPOの活動で啓発イベントに出演  
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クリニックの内部  

研修医になって初めて受け持ったのは子宮頸がんの34歳の女性でした。病院に来たときには骨盤全体にがんは広がり、緩和ケアが必要な状態でした。そんな彼女には2歳の自閉症の男の子がいました。話を聞くと、「子どもが生まれて、子どもの病気のことでいっぱいいっぱいで、自分のことはそっちのけだった」とのこと。女性が子育てする中でサポートが少ない現実、子宮頸がん・体がん検診をはじめとした婦人科検診受診率の低さを知り、予防医療の重要性を感じました。また、性教育やいのちの教育と一緒に婦人科系の病気に関する啓発も行っていくことが大切だと思うようになったのです。


NPO法人の設立から開業まで
私はまず勤務医をしながらNPO法人ウーマンリビングサポートを2007年に設立しました。性教育やいのちの教育を子どもから大人まで伝えていくこと。代替療法の知識を取り入れ自身の心と体の健康を意識する大切さを伝えること。予防医療の重要性を伝え、ピンクリボン運動を通じて乳がんも子宮頸がんも一緒に啓発していくこと。この三つの取り組みをスタートしました。
ボランティア仲間や各分野の専門家とイベントや講座を開催しました。そこから1年後の2008年にココカラウィメンズクリニックを開業しました。このクリニックには代替療法を行える施設をクリニックに併設させました。治療は西洋医学、東洋医学、代替医療を用いて患者さんの病状、考え方、価値観に合わせて進めています。また開業時からピルの処方、無料の思春期相談を開始しました。大きな病院勤務では経験のない、避妊、緊急避妊、月経痛やPMSなどにピルを処方することが多くなりました。また、診療とNPOの活動を進める中、学校の保護者から性教育の講演をしてほしい、高校からいのちの授業をしてほしいと依頼が来るようになりました。

避妊教育ネットワークへの参加
最初は手探りで性教育に関する講演スライドを作っていました。また、ピルに関する知識も製薬会社などから聞いた程度のもの。だんだんと、自分が話していることが正しいのか?ピルについての知識をもっと勉強すべきではないのか?という不安な気持ちが大きくなりました。そんな折、避妊教育ネットワークの存在を会員の先生から紹介いただき、入会させていただくことができました。会議や勉強会などに参加することで、自分の性教育の指導内容やピルに関する知識レベルの低さ、不勉強に気が付き、多くの先輩医師に指導を受けながらたくさんの学びを得ています。


性教育、DV、虐待、貧困など
開業して7年。今、私のクリニックにはさまざまな悩みを抱えた方がたくさん来院されています。専属の臨床心理士やカウンセラーがいるということもあり、体の不調のウラに隠れた大きな人生や生活の悩みに関わることも増えてきました。
思春期相談にもレイプ被害や近親者からの性暴力、デートDVなどの相談がしばしばあります。クリニックだけでは解決できない問題を行政機関や他のNPO、専門団体と連携するケースも増えてきました。
開業医には地域の福祉・医療を守る役割があります。今後もその役割をしっかり担っていけるよう、性教育の活動を継続し、クリニックを女性の駆け込み寺・寺子屋にしていきたいと思っています。


【略歴】
岐阜県出身。愛知医科大学卒業。東京女子医科大学、愛知医科大学病院勤務を経て、開業産婦人科などで非常勤勤務を経験。2007年4月NPO法人ウーマンリビングサポート設立。2008年6月統合医療クリニック・ココカラウィメンズクリニックを開院。

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