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一般社団法人 日本家族計画協会

機関紙

<32>末包クリニック(兵庫県尼崎市) 末包 博昭

2017年11月 公開
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末包 博昭
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その32

時代にあった性の健康教育を



末包クリニック(兵庫県尼崎市)

 末包 博昭



産婦人科医が学校医として

 1997年に尼崎医師会の学校保健担当理事に就任して、産婦人科医がどのように学校保健に関与できるか考え、思春期の子どもたちへの健康教育の充実しかないと思いました。その当時に北村邦夫先生の性教育講演を聞いたのが、性教育の関わりの始めでした。
 幸いにも尼崎市医師会では、全校医制の下、産婦人科医が学校現場で活躍しやすい状況でした。98年より産婦人科医会内に性教育委員会を立ち上げ、市内の中学校20校余りで2年に1回、性教育講演を始めました。
 尼崎市教育委員会では、15年前より養護教諭の先生が中心となって性教育研究会が開かれていました。性教育を始めることに養護教諭の先生方の理解があり助かったのを今でも覚えています。


性教育講演会を立ち上げて
 中学校での性教育講演が実施されてから、尼崎市内の10代の出生数と人工妊娠中絶数は毎年低下傾向にありました。10年目に学校医、学校関係者、保健所担当者、PTAの方々に声を掛けて、医会が中心となって尼崎市性教育講演会を立ち上げました。講演は2部構成で、初めに養護教諭や保健所の関係者に、最近の尼崎市内における思春期の子どもたちの性行動の状況について講演していただき、本講演を避妊ネットワークの著名な先生方にお願いしました。


少子化時代の性の健康教育
 開業以来、地域の中で周産期医療と生殖医療を主に診療してきました。その診療の合間を縫って、性教育を行ってきました。
 以前は、産婦人科医の立場から、性交開始年齢を遅らせるすべ、望まない妊娠の予防、確実な避妊法の提供、性感染症の予防と治療といったことについて講演をしてきました。
 最近、少子化の中での女性の晩婚化や卵子の老化が問題視されていますが、今後講演の中で、妊娠・出産の最適年齢や、不妊症についてもお話ししていこうと考えています。
 なお、今年の夏に実施した講演後の子どもたちのアンケートの内容をまとめました。

男子
・妊娠すると大変
・10代では、経済面で出産も子育ても無理がある
・初めて知ったことばかり。たった一度でも妊娠するとは。コンドームは100%と信じていたのに
・性感染症は、種類が多い
・クラミジア感染症が若い人に多いことが分かった。甘い考えで、性行為をすると痛い目に遭う
・女性の月経時にはイライラや痛みがあることを知ったので、そのときは優しくする
・これからの人生を、よく考えて気を付けて、生きていく

女子
・ピルで、生理調節ができることを知った。ピルは避妊のためだけに使うと思っていた
・考えもしないで、性行為をするのは無責任
・コンドームで100%避妊できると思っていた
・お産は大変。女性の大変さが、男子にも分かってもらえたらうれしい
・一人と性行為をしても、しっかり性感染症対策をする
・男女交際の目的が違っていた。異性の考え方も尊重できるようになりたい
・お互いのことをよく知って付き合う
・軽はずみな交際は危険だと分かった
・21週は忘れない
・自分の行動に責任を持つ。自分の体は自分で守る
 
最後に、性教育講演会の前後でアンケート調査をした結果、理解度が30~40%くらい上昇しました。
 今後も、思春期の子どもたちへの性教育講演会を地道に継続していこうかと考えています。


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末包氏の性教育講演風景


【今月の人】 末包 博昭

1951年、神戸市生まれ。77年、久留米大学医学部卒。慶應義塾大学医学部産婦人科教室入局。済生会中央病院勤務。84年、医学博士学位授与(慶應義塾大学)。神戸海星病院勤務後、88年に尼崎市で末包クリニック開業。現在は、尼崎市産婦人科医会会長、尼崎市医師会理事5期(学校保健担当)。

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