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海外情報クリップ

【海外情報クリップ】
HPVワクチンの接種率を上げる取り組み―南アフリカ

第823号

◆南アフリカ共和国からの報告
 南アフリカ共和国はアフリカ諸国の中でも早くからHPVワクチン接種を推進してきた国で、公立学校の女生徒を対象に、国費負担の接種を2014年から6年間実施しました。その背景には、子宮頸がんの死亡者数が乳がんの死亡者数を上回り、HIVとの重感染者はがん悪性化のリスクが高まることなどがあります。例えば、18~25歳のHIV感染女性のハイリスクHPV重感染率は73%に上ります。HPVワクチン接種プログラムの開始初年度は1回目接種者が生徒全体の83%、しかし2回目は65%とその差は18%でドロップアウトが多く、これが18年、19年になると26%に拡大し、20年には新型コロナウイルス感染症による休校などが影響して接種そのものが大きく落ち込みました。私立学校の女生徒の接種率に至っては20%を下回っているという調査もあります。
 これらの背景から、ケープタウン大学公衆衛生学部の研究グループは、今後の思春期の保健政策に関する提案を行いました。その一つがワクチン接種施設でHPVワクチン以外の保健サービス、例えば性感染症の保健相談などを提供する案です。国内の女子大学生の調査から、がんや性感染症の知識は十分ではない一方HPVワクチンの接種には積極的でした。対象年齢を15歳以上に拡大すると同時にHIVを含む性感染症対策も行うというものです。“統合的学校保健サービス”と称して現地特有の寄生虫対策や聴覚・視覚検査、さらに避妊、月経衛生管理も含んでいます。
 しかしこれを実行する上でハードルとなるのは、施設の人的資源と費用です。そこで研究者らが追加した提案は、各種の思春期保健サービスを扱うそれぞれのプログラムを連携させること、ワクチンの単回接種スケジュールを推進すること、これらに加えて低価格の後発品ワクチンを国内で生産することなど3点を挙げました。
参考 Ampnsah-Dacosta E, et al.Frontiers in Public Health. 2022 Jan Vol.10

(翻訳・編集=オブジン)



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