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海外情報クリップ

【海外情報クリップ】
オランダ―経口避妊薬と卵巣がんリスクの減少

第810号

◆オランダがん研究所からの報告
 経口避妊薬(ピル)を避妊や副効用の目的で長く使用する女性は、卵巣がんが発生する割合が低いことが知られています。
 ではその卵巣がんと乳がんのリスクが遺伝的に高いとされるBRCA1または2の変異を持っている女性にもこのリスク減少効果があるのか否か、大規模データ(IBCCS研究)を使って欧州の共同研究グループが検証しました。
 BRCA1変異を持つ女性約4千人の内、卵巣がんが発生した女性は346人、発生しなかった女性は3,643人、ピルを半年以上使用した割合はそれぞれ89%と59%と、使用女性の発生リスクは非使用女性に比べて有意に低くなっていたことが確認されました(ハザード比は約0.51)。また、ピルの使用期間が長いほど割合はより低く(10年以上の使用のハザード比約0.32)、使用を止めた後もその効果は長期間持続していました(使用中止後10~19年のハザード比は約0.54)。
 一方、ピルの使用は乳がんのリスクをわずかに増加させる可能性があるとする報告があります。そこで、過去に乳がんを発生した女性を除外して分析したところ、卵巣がん発生のハザード比は0.47と依然低く、BRCA変異のある女性に対するリスク減少効果に乳がん発生の有無は影響を与えませんでした。しかし研究グループは、乳がんリスクが上昇する年代が卵巣がんより若く、その発生数も多いので、BRCA変異を持つ女性がピルを使用する場合は、乳がんへの影響を優先して考慮するべきであると言っています。
 なお、本研究グループの別の報告(Schrijver, 2018JNCI)では、BRCA変異のあるピル使用者の乳がん発生リスクは、非使用者(同じ変異保持者)に比べて、ハザード比は1.08(95%信頼区間0.75~1.56)ですが、統計的優意差はありません(BRCA1、前向き解析)。
参考 Schrijver LH, et al. American Journal of Obstetrics & Gynecology. 2021

(翻訳・編集=オブジン)



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