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第836号

 東京都不妊・不育ホットライン相談員 佐々木 良枝

 不妊治療への保険適用が始まってはや1年半が過ぎました。開始当初は「東京都不妊・不育ホットライン」にも多くのお問い合わせ、ご相談が寄せられましたが、現在は少し一段落したかなという気がします。ただ、保険適用に関するお問い合わせがなくなったわけではなく、その内容が変化してきたように感じます。以前は、一般的な質問が多かったのに対し、最近では、より個別性が高い質問になってきたような印象があります。例えば、それぞれの治療の具体的な内容に関わるご質問だったり、マニュアルを見ても但し書きで付加的に書かれているような内容であったりします。皆さん自分たちでもよく調べていて、それでもよくわからなくて電話した、という方が多く、先日も「色々調べても分からなくて、調べ過ぎて混乱してしまって…」とおっしゃる方がいらっしゃいました。確かに厚生労働省のホームページなどを見ても、とても充実していて情報量も多いのですが、それゆえに自分たちが必要としている細かな情報にたどり着くまでに疲れてしまう、ということはありそうです。
 こちらでも分かる範囲に限界があるので、しかるべき問い合わせ先をお伝えしたり、主治医によく聞いてみるようコミュニケーションの取り方をアドバイスしたりしますが、こういうお電話にお答えしながら、あらためて不妊治療というのは、その個人、カップルに特有のものなのだと実感します。大きな枠組みとしては少子化対策に位置づけられるのかもしれませんが、不妊に直面し治療を考える人達にとっては人生の選択そのものであり、とても個人的な問題なので、そこを支えていく必要があると思っています。
 少し話題は変わりますが、東京都が「卵子凍結に係る費用への助成」及び「凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成」の開始を発表しました。9月から説明会のエントリー受付が始まっています。その趣旨は「子供を産み育てたいと望んでいるものの、様々な事情によりすぐには難しい方にとって、卵子凍結は将来の妊娠に備える選択肢の一つです。加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合に行う卵子凍結に係る費用を助成し、子供を望む方への支援の充実を図ります」ということです。そこには少子化対策という言葉は使われておらず、生き方への支援が強調されているようです。一方で凍結卵子が実際にどの程度使われていて、それが最終的に妊娠・出産につながっているかというと、数は少ないことが分かっているので、それでもそこを支援するという判断には賛否両論あるかもしれません。でも、こういった流れが個人の選択、意思決定を尊重する成熟した社会への道程だとしたら、望ましい方向性ではないかと考えます。東京都不妊・不育ホットラインでも、安心して話せる場を提供し、その中で相談される方の問題整理や自己決定が進むような支援を続けられたら幸いです。


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