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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第62話>ピルが環境を破壊する?

第830号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 「ピルほどに難産だった薬がかつてあっただろうか」と今でも話題になることがある。一難去って。また一難。
 1997年11月30日、中央薬事審議会の会長宛に、「ピル製造・販売・使用禁止に関する緊急要望書」が提出された。提出したのは、「止めよう!ダイオキシン汚染・関東ネットワーク」の佐藤禮子氏である。要望書には、次のように書かれている。
 「様々な環境化学物質の汚染による自然界の異変が地球規模で現れている現在、もはや、ピルの使用は個人的選択レベルの問題ではありません。人工経口ホルモン薬品『ピル』の服用による人体への副作用は少ないとはいえ、内分泌攪乱物質として恐れられているエストロゲンホルモンの服用による次世代への影響、並びに排尿による水汚染からの生殖系への多大な影響の可能性は十分にあります。
 横浜市立大学井口泰泉教授はじめ多くの世界的科学者たちが警告する、ホルモン様化学物質による生物界の雌化や様々な異常、人間の精子数の減少などが急ピッチで進んでいる現状を重く受けとめ、予防措置として人工ホルモンによる避妊薬の製造・販売・使用の中止を国際的に訴えると同時に、国内における製造・販売・使用の許可をしないようここに強く要望します。」
 「ピルの認可に向けて審議が大詰めを迎えている時期に、新たな難問が出現した」の論調で、毎日新聞が12月4日(木)の夕刊でこれを話題にした。筆者もこの記事をまとめた記者からの取材に「妊娠した女性の尿中にも女性ホルモンは多く含まれ、妊娠40週の場合は、ピル服用者の1万倍にもなる。体外に排出されるホルモンを問題にするのは本質的ではない」と主張した。
 筆者が知る限りでは、発端は、英国の環境白書にあったようだ。この白書では、下水処理場の下流で、ローチと呼ばれる雌雄同体化している魚がたびたび釣り上げられたことが報告されていた。7箇所での河川調査が行われた結果、3箇所から生理的な女性ホルモンと混じって、ピルの成分の一つであるエチニルエストラジオールが検出されたこと。言い換えれば、ピルを飲んでいる女性の尿によって河川が汚染されたというのだ。矛盾に満ちているのは、この汚泥からはピル以外の化学物質も多数検出されていたこと、ピルの成分が雌雄同体の魚を作ったという科学的根拠はないことだった。早速、英国ロンドンに本部がある国際家族計画連盟(IPPF)に連絡をとり、英国ではどうかと率直に尋ねた。結果、白書で取り上げられたからといってピルの使用が禁止されたことはないとの返答だった。



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