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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第49話>低用量ピル年内にも認可(日本経済新聞)

第817号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 今振り返れば、「いいかげんにしてくれ」と怒り心頭なのだが、当時は違っていた。「年内にも認可」の報道は国内のメディアにとどまらず、ジャパンタイムズでも、筆者に対する取材記録ではサンフランシスコの新聞でも大きく取り上げられている。だから、「政府は重い腰をついに上げたか」とばかりに小躍りして喜んだものだ。中央薬事審議会配合剤調査会報告「安全性を確認」の見出しの記事は1997年2月17日版。そして次のように続く。
 「エイズ拡大につながる恐れがある等として承認が見送られてきた経口避妊薬の低用量ピルについて、中央薬事審議会配合剤調査会(座長・河村信夫東海大学医学部教授)は16日までに「医薬品としての安全性、有効性が確認された」とする調査報告書をまとめた。25日に開く医薬品特別部会に提出する。」とある。さらに記事は、「特別部会は公衆衛生審議会の意見も聴いた上で判断し、常務理事会でも認められれば、厚相が承認する。実質的な最終審査に当たる特別部会への上程が決まったことで、6年半以上の長期審査となっている低用量ピルが、年内に認可される可能性が強まった。同調査会は①エイズなど性感染症予防にはコンドーム使用が求められると添付文書に目立つように記載する②医師が処方する際に患者に十分説明し同意書を取る―などの措置が必要とする意見も付けた。」日本経済新聞では、「昨年7月、菅直人厚相(当時)は、97年には認可されるとの個人的見通しを明らかにしていた。」との記事で結んだ。
 これほどまでに明確なメッセージがあるだろうか。中薬審の役割は薬剤の安全性と有効性を科学的に審議する会であり、今回の場合には薬剤の審議とは本来無関係なエイズの問題にまで言及しての発表であったからだ。
 その直後である2月25日に医薬品特別部会が開かれたが、「ピル使用がHIV感染拡大に及ぼす影響等、公衆衛生審議会の意見を求めること」となり継続審議となったのだ。これを受けて3月10日、中央薬事審議会南原俊夫会長(当時)から公衆衛生審議会の高久史麿会長に向けて、「低用量経口避妊薬の承認及び再審査期間の指定の審議に際して、公衆衛生審議会の意見をもとめる件について」との文書が送られた。3月11日に開催された公衆衛生審議会伝染病予防部会では、中薬審への報告書(案)が審議され、「今後のHIV感染症等の性感染症の動向に影響を及ぼす危険性は否定できない」と結論づけ、「貴会(筆者注:中薬審)においては、今後も総合的な観点からの審議を希望する」と結んでいる。



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