連載「被災地が必要としている皆さんの力 有本幸泰」

第1回 偽善者

本連載では、この9月に開催する「第5回 災害時の妊産婦支援セミナー」講師 有本幸泰氏に、被災地支援を行う中で見聞き・体験したことを語っていただきます。 一度大規模な災害が起こると、避難所運営・救援物資等さまざまな支援が行われますが、そのさなかで、被災された方々が実は必要としているもの・求めていることなど、見落とされがちになってしまう点も織り込みながらご紹介いただきます。 減災に向けた地域づくりや災害への備えのご参考に、ぜひご一読ください。(編集部)

熱海市伊豆山地区土石流で亡くなられた方のご冥福と、安否不明の方々の早急の確認、お住まいの方の復興を願っております。


「頑張れって言われてもこれ以上どうやって…」

小学校高学年か、中学校の男の子だろうか、下を向いて、声を絞り出すようにつぶやいた。 2011年、東日本大震災の2日後、私はイオンの社員として、千葉から救援物資を届けに行った時の避難所での出来事である。のちに、彼は津波でおじいちゃんとお母さんを亡くして、家を失ったと聞いた。私は自分の発した言葉に後悔した。彼にとって、今、「生きること」そのものが「頑張っていること」であり、「生きること」以上のことなど考えることが出来ないのだ。そんな彼に、私は一番言ってはいけない言葉を言ってしまったのである。

救援物資を届け、「自分は被災地へ助けに行っている」、そんな自分が「偽善者」に思え、自分自身を許せなかった。

夏の暑い日だった。 2018年の西日本豪雨でも同じことを繰り返してしまった。倉敷の在る小学校へ物資を運んだ時のことだった。小学生の児童たちが私の所へやってきてくれて、一緒に荷物を降ろしてくれた。 私はレンタカーから、オレンジジュースをおもむろに子どもたちの前で飲んでしまった。子どもたちは「美味しそう」と言って、その場から立ち去った。お礼も言えなかったくらいにすぐいなくなってしまった。 「知らない人だから照れているのかな?」―そのくらいにしか思えなかった。

その後、私が避難所の物資を運んでいると、子どもを連れたお母さんが私に、
「このオレンジジュースはどこに置いてありますか?」
私ははっと気付いた。体育館の避難所の横に高く積まれている水、しかし、送り込まれる物資は水やお茶ばかりで、子どもが飲みたがるジュースがまったく無かったのである。私が子どもたちのことも考えず、無神経にもオレンジジュースを飲んでしまった。

その時、東日本大震災の時の「頑張れ」と言ってしまった彼の顔を思い出した。手伝ってくれた子どもたちの後ろ姿は、全く同じ寂しさがそこにはあった。 私はやはり「偽善者」から脱していない、確かに小売業として、地域のライフラインの確保として、支援物資を届ける事は大切であるが、それ以上に被災地に必要なのは、適材適時適所の皆さんへの「こころ」を支援することが大切でないか?反省と共に、その想いは強くなった。 私はそれ以降、被災地では被災者の方たちの少しでも裏方に回ること、避難所の運営のお手伝いをすることに決めた。今までの経験を活かし、避難所でどんなルールが必要か?「減災」のための日ごろからの「地域診断」で、その被害を低「減」させること「街づくりの大切さ」を伝え、実践している。

東日本大震災以降、被災地へは公助として、「プッシュ型」の物資配送になり、ある程度予測された物資が届くようになり、被災地での要望に応える「プル型」に変わってきた。


――このコラム(全5回)では、実際の経験をもとに、被災地で本当に必要な「備蓄品」や、皆さんの普段のお仕事で接している相談から生まれる「こころ」、いかに皆さんの力が必要で、何が出来るか?を一緒に考えていきたいと思います。

【著者】有本幸泰(ありもと・ゆきやす)

現 一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会シニアアドバイザー
元イオントップバリュ株式会社マーケティング本部CSR/CSV担当
3・11東日本大震災の際には、被災後2日後に現地入り。小売業として物資配送を行い、 沿岸部中心に避難所を回る。
その後、日本全国の地域の皆さんと防災を考えた街づくりに携わる。
2021年9月10~17日にWEB開催される「第5回災害時の妊産婦支援セミナー」(主催:JFPA)で、特別講演「ボランティアから見た避難所の実際」で登壇する。

(本連載は全5回)
第1回:偽善者(2021年7月1日掲載)
第2回:2Bのえんぴつ(2021年7月7日掲載)
第3回:200m(2021年7月14日掲載)
第4回:「地域診断」から「家族づくり」へ(2021年7月21日掲載)
第5回:皆さんと出来ること―「命に大きさはない」―(2021年7月28日掲載)


有本さんのお話も聞ける「第5回 災害時の妊産婦支援セミナー」はコチラ!

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