【第709号】 平成25年4月1日発行(2013年)
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1面 ・本会、25年度事業計画・予算決まる 平成24年度第2回理事会開催 |
2面 ・平成25年度本会事業計画の概要(続き)他 |
3面 ・これから研究を進めようと考えているあなたへ① 本会研究倫理審査委員会委員長 柳川 洋 |
6面 ・産業看護の半世紀とこれからの展望④ |
7面 ・海外クリップ |
8面 ・避妊教育ネットワークリレートーク<37>産科婦人科のぼり病院鹿児島県鹿児島市)副院長 昇 晃司 |
編集帖
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▼昭和55年以降の20歳未満の中絶件数の増加は著しいものがあった。本会は思春期対策の緊急性を早くから痛感し、昭和53年に東京・四ツ谷の主婦会館にクリニックを開設、翌年思春期電話相談を開始した。同年、母子保健家族計画全国大会では「10代妊娠」を取り上げ、思春期保健対策の重要性を訴えた。本会はさらに、昭和55年に諸外国の家族計画協会と交流を開始。北欧、東欧、米国、オセアニアを視察し情報収集を行った。これらの経験が本会の思春期保健セミナー(昭和56年開始)や思春期ホットライン、クリニック等の実施に結実、現在に至る。 ▼国の思春期保健施策は、昭和59年の健全母性育成事業に始まる。この背景には昭和56年の家庭保健基本問題検討委員会における「思春期」の登場がある。昭和58年には中央児童福祉審議会が厚生大臣に対し「今後の母子保健施策のあり方」として14項目の意見具申をした。これは今後の母子保健施策に活かされるもので、思春期問題は「性の問題に関する保健教育の普及効果」として具申された。また10代中絶の増加傾向が指摘され、「学校教育においても正しい性教育が積極的に行われることが強く期待される」と述べられた。 ▼厚生省はこれを受けて昭和59年度予算に「健全母性育成事業」として「思春期保健教育事業」を予算化。初年度は10県市に補助され、これを機に思春期保健事業は全国的に広がった。これまで乳幼児、妊産褥婦に限られていた国の母子保健対策事業に初めて「思春期保健」が取り入れられた画期的な事業といってよい。 ▼あれから約30年、市町村の思春期保健対策実施率は40%に満たない。行政の取り組みは極めて重要だが、これではあまりにも低い。さらなる思春期保健対策の実施が求められる。(TS) |
種部恭子氏、第17回松本賞を受賞
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種部恭子氏 第17回松本賞を受賞 第17回松本賞選考委員会が2月25日に開催された。当日は、選考委員会委員ならびに過去の受賞者から推薦された個人7人が候補にのぼり、寄せられた功績調書をもとに、厳正な選考の結果、女性クリニックWe!TOYAMA院長である種部恭子氏(48歳)の受賞が決まった。
なお選考委員会は、清川尚(公益社団法人日本産婦人科医会)、小西郁生(公益社団法人日本産科婦人科学会)、吉村泰典(社団法人日本生殖医学会)、近泰男(公益財団法人ジョイセフ、本会)の各委員から構成されている。「松本賞」の授与式は、6月19日アルカディア市ヶ谷私学会館で開催される。 |
ジェクス・ジャパン・セックス・サーベイ2012 調査結果の概要
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本会家族計画研究センターでは2002年以降2年ごとに、日本人の性意識・性行動を知る目的で「男女の生活と意識に関する調査」を実施してきた。住民基本台帳からの対象者の抽出、調査員による訪問留置訪問回収という大変に手間のかかる手法での調査ということもあり、調査内容には厳しい制限が加えられている。今回は日本のコンドームメーカーであるジェクス株式会社と共同で、日本人のセックスに深く迫ろうとインターネットを利用した調査「ジェクス・ジャパン・セックス・サーベイ2012」を行った。マスターベーションやセックスの経験だけでなく、女性が経験するオーガズム(性の絶頂感)や性交痛まで、今までベールに包まれてきた日本人のセックスの真実が明らかにされた。 (本会家族計画研究センター所長 北村 邦夫) 調査はインターネットリサーチで行われた
1.調査対象
マスターベーション経験、男性97%、女性62% マスターベーションを初めて経験した年齢は、男性では10~14歳が55・1%と最多。次いで15~19歳の36・3%で、20歳未満までの経験が96・1%。女性の場合には、72・6%が20歳未満までに経験している。これを、回答者の年齢階級別にみると、男女ともに、20歳代~40歳代では、50歳代、60歳代に比べて経験年齢が若い傾向がある。 マスターべーションの経験のある男女に、「過去1年間にマスターベーションの経験があるか」と尋ねると、20歳代~40歳代は9割を超え、50歳代でも84・5%、60歳代でも65・6%が「ある」と回答している。女性の経験率は71・3%であるが、年齢が上がるにつれてその割合が激減している。「この1年間のマスターベーションの頻度」は、年齢が若いほどその回数が多いのは男女共通しているが、60歳代の男性でも、「週1回以上」が4割近く、女性も2割ほどが経験していることが明らかとなった。
「マスターベーションに際して使用する器具などがあるか」には、男性88・6%、女性78・6%が「何も使用しない」と回答。女性では「バイブレーター」が18・5%に、男性では「専用ゼリー」5・1%、「マスターベーション用ホール」4・9%という結果だった(図3)。
(1年以内にセックス経験がある女性) 「オーガズムをもっとも得やすい」のは、未婚、既婚とも6割超が「セックスの最中」と回答するも、「自分でマスターべーションをしている時」も2割を超えている。未婚女性は、20歳代では「セックスの最中」48・1%、「自分でマスターべーションをしている時」40・3%のように、若い女性ほど「自分でマスターべーションをしている時」の割合が高くなる傾向がある。「セックスの最中」にオーガズムを得る割合は未既婚ともに50歳代、60歳代が高い。しかし、わが国の場合、性具を使ってオーガズムを得る割合が少ない傾向にあり、セックスに対する工夫が欠けているとはいえないだろうか。
「オーガズムをもっとも得やすい部位」を聞くと、「クリトリスへの刺激」が「腟への刺激や挿入」に勝っている結果となっている。「腟への刺激や挿入」でオーガズムを得やすいとの回答は、年齢が上の女性に多く認められる(図4)。
また、女性の性反応として特徴的な「オーガズムを経験したにもかかわらず、ちょっとした刺激で二度、三度とオーガズムを経験する」、いわゆるマルチプル・オーガズム経験のある女性は、女性全体では6割近くにも上っている。その割合は、年齢が上がるにつれて高くなっている。
(1年以内にセックス経験がある女性)
今回の調査では、34・4%の女性(未婚39・1%、既婚32・5%)が「潮が吹く」を「何度も」「たまに」経験しており、中でも未婚の40歳代では18・1%が「何度もある」と回答している。未既婚ともに50歳代、60歳代で「潮の意味がわからない」との割合が高くなっている。
(オーガズム「いつも」ではないという女性)
具体的に、「その他のコメント」をみると、「相手を喜ばせたい」(35歳)、「タイミングを一緒にしたい」(41歳)、「相手の気分を盛り上げるため」(42歳)、「相手が期待しているから」(46歳)などであった。
セックスの時に痛みを感じる女性、未婚では若い女性ほど多い?
性交痛の原因は、性的興奮によって腟からの粘滑液が漏出しない、卑近な言葉では「濡れる」までの時間を待てず 「セックス(性交渉)の時に濡れることがありますか」の問に、女性の43・2%(未婚53・5%、既婚39・0%)が「いつも濡れる」と回答。「いつも濡れる」と「だいたい濡れる」を加えると85・6%(未婚89・6%、既婚83・9%)となるものの、未婚50歳代で71・8%、既婚60歳代で69・3%と低率であった。未婚女性では50歳代を除き年齢による差がないが、既婚女性では年齢が上にいくに従って「濡れる」割合が低くなっている。 「濡れる」と「性交痛」には極めて有意な関係があった。「濡れる」という感覚がわからないという回答者が22人いるものの、性交時に濡れれば、性交痛を訴える可能性は極めて低い(図8)。 さらに、性交痛がある女性に「痛みについて、パートナーに言葉や態度で伝えているか」を聞くと、「伝えている」は女性の34・0%(未婚33・5%、既婚34・2%)、「伝えている」と「ある程度伝えている」を加えると、既婚女性では年齢による差がないが、未婚60歳代を除き、年齢が若い方がその割合が高くなっている。痛みの程度と「痛みを相手に伝えるか」のクロス集計を試みると、「いつも痛い」女性は、「伝えている」「ある程度伝えている」の割合が高いものの、統計的に有意な差を認めるほどではなかった。 性交痛があった場合に、ゼリー(潤滑剤)を使うかを尋ねると、女性の65・3%(未婚64・2%、既婚65・8%)が、「性交時の痛みを和らげるためのゼリー(潤滑剤)」があることを知っていると回答。その割合は、既婚には年齢に違いはないものの、未婚では年齢が上がるにつれ認知度が高まっている。 ゼリー(潤滑剤)の存在を知っている女性に、「使用しているか」について聞くと、「現在使っている」割合が高いのは未婚の50歳代(19・2%)、60歳代(25・0%)、既婚の50歳代(16・2%)、60歳代(16・0%)。「使いたくない」が47・1%(未婚39・0%、既婚50・3%)いるものの、未婚では概して年齢が高くなるほどに「以前使っていたが、今は使っていない」「使っている」「使っていないが是非使いたい」の割合が高いが、既婚者では年齢による差がさほどなかった。 潤滑ゼリーの使用経験のある女性に使ったことのあるゼリーのブランド名を尋ねると、「リューブゼリー」が24・8%(未婚22・0%、既婚25・6%)と最多であり人気ブランドであることがわかる。 「痛みを和らげるための、飲み薬や皮膚に塗る薬」(ホルモン補充療法)を使用することについては、「既に使っている」が女性の0・2%(未婚0・2%、既婚0・3%)に過ぎず、76・9%(未婚79・4%、既婚70・8%)は「使いたくない」と回答している。わが国におけるホルモン補充療法の普及は相当遠いように思われる。
「性交の時の痛みと性的な満足感との関係について」聞くと、「痛みのため満足度は高くない」「痛みのため満足できない」の割合は女性の40・2%(未婚34・7%、既婚42・3%)であるが(図9)、既婚では概して年齢が高くなるにしたがってその割合が高くなるものの、未婚では50歳代を除き、年齢が若い方が高く、「性交痛」を感じる傾向に近い結果となっている。女性全体でみると、性交痛があると、結局は性的満足が得られないという結果であった。
(異性とのセックス) 「パートナーが満足できるセックスをするために何か工夫をしているか」を尋ねると、男女ともに「特に何もしていない」(男性49・3%、女性54・2%)が5割近くとなり、次いで「清潔を心掛ける」(男性23・4%、女性25・4%)、「愛しているなどほめ言葉をいう」(男性19・1%、女性13・2%)など男女ともに傾向は変わらないが、女性では「下着に気をつかう」が16・2%と高く、男性では「ED治療薬をのむ」4・2%が目立っている(表1)。これを未婚、単身(離婚・死別)、既婚別にみると、男性では、「特に何もしていない」が既婚で突出し53・8%、未婚では「清潔を心掛ける」32・5%、「愛しているなどほめ言葉をいう」、「事前の会話」と続く。単身(離婚・死別)、既婚も同様で「清潔を心掛ける」「愛しているなどほめ言葉をいう」の順。「事前の会話」「エッチな言葉をつかう」「照明やBGMなど寝室の環境を工夫する」「酒を飲んで大胆になる」「精力増強剤・ドリンクなどをのむ」などは低率であった。 女性の場合、男性同様既婚では「特に何もしていない」が58・8%(未婚41・5%、単身47・5%)。「清潔を心掛ける」が31・2%と未婚で高いものの(単身27・9%、既婚23・3%)、男性と異なり、「下着に気をつかう」が未婚で30・6%と高く、単身23・0%、既婚11・2%であった。既婚者の場合、男女ともに工夫が欠けているように思われる。 「性交中に考えたことがあるもの」を複数選んでもらうと、男女ともに「何も考えない」が4割近くを占めるものの、「性交相手のこと」(男性50・1%、女性40・3%)がトップ、「以前の恋人のこと」(男性15・0%、女性15・5%)の回答もあった。「何も考えない」割合は男女ともに年齢が上がるにつれ高く、若いほど「性交相手のこと」の割合が高くなっている。 ***
【お知らせ】 |
これから研究を進めようと考えているあなたへ ①
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日々の活動が研究になる
公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター/
はじめに
本シリーズは、研究実施のための環境整備、研究計画の策定、調査の進め方、データ処理と統計解析、研究のための倫理指針、学会発表、論文のまとめ方、研究費の申請など、研究を進める上でぜひ知っていただきたいことをできるだけわかりやすく解説して、一人でも多くの方が躊躇なく研究を実施するための情報提供を目的としている。
どんな課題を取り上げるか
日頃実施している乳幼児健康診査の受診率が他の地域と比べてなぜ低いかという疑問に応えることも今後の活動を推進していく上で必要なことであり、立派な研究といえる。地域別受診率の比較、受診者と未受診者の家族構成など社会・経済的な背景の相違などを明らかにすることができれば、重点的な働きかけによって受診率を上げることが可能であり、他の集団についてもその結果を応用することができるかもしれない。 これらの研究を実施するからといって、特別に予算化したり、追加の人材配置を必要としたりするものでもない。質問票などを用いた情報収集のステップを一つ加えるだけで、日常の活動から研究を生み出すことができる。 母子保健関係の活動として実施している、各種集団学級(母親学級、育児学級)、保健指導、訪問指導、健康診査など、日常のさまざまな活動が乳幼児の健康水準の向上にどの程度役立っているかという疑問に応えることも、保健活動の従事者として果たすべき重要な任務の一つであり、そのための情報を質問票などを使って収集し、分析することも研究として位置付けることができる。
研究として取り上げ得る課題は、日常活動の中にごろごろ転がっているといっても過言ではない。これらの課題のうち一つで良いから、関心の深いものを選んで研究テーマとして取り上げていただきたい。
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