機関紙

<32>文京学院大学保健医療技術学部看護学科 准教授 市川香織

2016年12月 公開
職域保健の現場から 32

産前産後の切れ目ない支援こそ働く女性を輝かせる支援に

文京学院大学保健医療技術学部看護学科 准教授

市川香織


 本連載ではこれまでの連続2回、職域における妊娠や出産、育児を取り巻く状況についてご寄稿をいただきました。3回目となる今号では、女性の産前産後ケアに詳しい市川香織先生に、働く女性の現状と支援について解説をいただきましたので、ご紹介します。(編集部)


現代女性の育児と仕事
 産前産後を支援する専門職としては、働く女性たちが仕事でも輝く一方、自身の妊娠・出産・産後を楽しんでもらいたい、子育ての喜びを知り、家族との関係性も深めてほしいと願っています。
 現在の妊娠、出産、子育てを取り巻く環境を働く女性の視点から捉え、職域保健と地域保健で連携して考えたい課題について押さえてみたいと思います。
 数年前までは、第1子妊娠出産を機に退職する女性は少なくなく、子どもを産み終えてから再度働くという状況が多く見受けられました。しかし、現在は一度退職すると再度正規雇用で働くことが保証されない時代となり、夫婦共働きが当たり前となりつつあります。
 特に女性にとっては、いったん辞めてしまうと、非正規雇用、不安定な収入になる可能性が高まるため、結婚・出産を先延ばしにし、自身のキャリアをある程度積みたいという思いも強くなっています。
 もちろん、「産みたいときに産む」「キャリアを積んで自己実現を目指す」ことは悪いことではないですし、頑張る女性を応援したい気持ちは大いにあります。ただ、そのことにより高齢初産になれば、健康面でのリスクは高まりますし、産後の体力回復にも時間がかかること、実父母や義父母の高齢化によるサポート不足の可能性も出てきます。パートナーである夫も仕事で責任ある立場になっている頃ですから、なかなか思い通りのイクメンは期待できないかもしれません。
 しかしながら、女性たちは妊娠判明の時点では「普通に産める」「産めば普通に育てられる」と思っています。現代の働く女性たちが最も気になるのは、育児と仕事の両立、「妊娠した、さて保育所はどうしよう」という点です。妊娠中からの保育所探し、いわゆる「保活」が始まります。


職場の母性保護制度
男性の休暇の取り方
 保健の立場からは、まずは心身ともに正常に妊娠期を過ごし、産後の計画(母体のケアや支援の体制)を妊娠中から家族みんなで立てておいてほしいのですが、なかなかそこには目が向きません。
 特に、産後については、自分の体はすぐに回復し、出産してしまえば妊娠前の状態に戻れると思っている人が多く、ホルモンの変動でマタニティーブルーズになったり、骨盤が戻るまでは家事をするのもつらかったりすることなど想定外のようです。
 まずは、母子健康手帳交付時からの関わりの中で、職場における母性保護の制度で何が利用できるのかを確認してもらい、保活が気になるようであれば保育所に関する情報提供を、その上で産後までを見据えた自身の健康管理について目が向くように促すことが重要です。
 職場における母性保護の観点では、パートナーや家族も利用できる休暇の制度を確認するとよいでしょう。この連載でも紹介されているように、男性社員が配偶者の出産時に数日休暇を取れるところも多くなってきました。
 しかし、ここで大切なのは休暇の取り方です。細かなことですが、休みを取るなら出産当日(立会い出産も含めて)と、その後は出産施設の退院日から数日間を取ってもらうのがポイントです。産婦の入院期間中は休暇を使わず、一番大変な自宅に戻ってからの数日間に休んでもらいましょう。
 里帰りするなら、里帰りから自宅に戻る日からの数日間です。数は少ないですが、実父母などの「孫育て休暇」が導入される企業も出てきましたので、家族も含め利用できる制度の確認をしておくとよいですね。


産後の孤独と産後ケア
 また、産後1か月を過ぎた頃から3か月くらいまでが、女性にとってはとても孤独を感じる時期です。社会とのつながりが断たれ、月齢的に泣きの激しくなる赤ちゃんと二人きりで長時間家の中で過ごすことになります。
 この時期は産後うつと診断されないまでも、気持ちが沈んだり、イライラが募ったりします。身体的な疲労がたまると思考もネガティブになりがちです。
 こんなときに利用してほしいのが産後ケアです。身体的な疲労を回復させること、育児に関する不安なことを確認すること、誰かと話をすること。産後ケアは心身の癒やしを通して、出産後の張り詰めていた自分を解放し、自身を振り返ったりこれからの見通しを立てたりする時間を持つことにつながります。
 それは、子育てで走り続けている女性にとっては、とても貴重な時間であるとともに、働く女性にとっては仕事復帰に向けての支援になっていくともいえます。
 産前産後は人とのつながりを実感できる時期でもあります。自分自身のあり方を考え、家族をつくり、子育てを通して地域社会と関わりを持って生活していく。子育てしやすい環境は生活も仕事もしやすい環境につながることでしょう。産前産後の支援を充実させ、働く女性が輝き続けられる地域づくり、職場づくりをしていきたいですね。

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