機関紙

<15>小さな自治体からコツコツと 宮崎県立宮崎病院(宮崎県宮崎市) 髙村一紘

2016年06月 公開
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髙村 一紘
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その15

小さな自治体からコツコツと



宮崎県立宮崎病院(宮崎県宮崎市) 髙村 一紘



中山間地域における性教育


 私は中山間地域にある西米良中学校に昨年からお願いして、性教育に出向いています。西米良村は熊本県との県境に位置する人口1200人の県内最少人口の村で、私は唯一の医療機関である診療所に3年間勤務していました。
 そこでは、子どもから高齢者まで、外来、入院、訪問診療、救急医療など全てを担い、予防・医療・介護を保健センターや地域と一体となって関わっていました。この地域の子どもたちは、中学校卒業と同時に村を離れて高校に進学します。そのため、プライマリケア医の頃から中学卒業前に、子どもたちに性教育をしたいと考えていましたが、なかなか実践には至りませんでした。


生きていくために必要な力
 公立病院で産婦人科医として勤務するようになって、妊娠や性に関する問題に関わる機会が多くなりました。また、避妊教育ネットワークでいろいろな事例を学ぶに連れて、問題が起きてからでは遅いという思いが強くなり、まずはこれまでの経験で連携の取りやすい西米良村で性教育を行うことにしました。
 対象は中学3年生、人数は10人程度と少数で、見覚えのある子どもたちの成長した姿に会うことができます。
 内容は月経、妊娠、中絶、避妊、DV、性感染症、子宮頸がんなど、産婦人科医として基本的な知識を伝えることも大切です。しかし将来、性に関する問題に直面したときに「こんな話を聞いたな」と、思い出してもらえるような、いつかきっと役に立つ性教育を心掛けています。
 養護教諭の先生が事前学習として性教育を授業で扱ってくれますが、うまく伝えることの難しさをおっしゃっていました。うまく伝えることの難しさは私も同じで、性教育を行うことは知識を教えることではなく、生きていくために必要な力をつけるきっかけづくりだと捉えて、どれだけ気持ちを込めるかが重要だと思っています。


 
性教育という予防医療
 また、大切にしていることは多職種連携です。県立看護大学の月経ヘルスケアプログラムチームと連携し、西米良村の保健師、養護教諭と事前に連絡を取り合って、性教育当日の方向性などについて議論します。性教育についてそれぞれの立場から関わって、いろいろな意見が出ることはとてもいいことだと思っています。
 プライマリケア医のときは、性教育をはじめとする女性のヘルスケアを担うのは、主に産婦人科医だと思っていました。しかし、実際には産婦人科医は周産期、腫瘍、不妊・内分泌診療に追われ、女性のヘルスケアまで手が回っていないのではないかと感じるようになりました。特に、地方ではその傾向が顕著ではないかと思います。
 私自身も、日々の診療に追われ、診療と院外活動とのバランスを取ることの難しさも感じていますが、性教育は予防医療としても、とても重要です。
 今後もいろいろな人と連携をとりつつ、コツコツと取り組んでいきたいと思います。

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髙村氏の講義風景



【今月の人】 髙村 一紘

2005年、自治医科大学卒業。産婦人科学会専門医。日本プライマリケア連合学会指導医。椎葉村国民健康保険病院や西米良村国民健康保険病院でプライマリケア医として地域医療に従事し、現在、宮崎県立宮崎病院産婦人科兼地域医療科に勤務。

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