機関紙

2015年度(2016年更新)

2016年06月 公開

本会家族計画研究センター 2015年度 事業実績報告

思春期や不妊・不育、女性の健康相談事業多数、セミナーで児童虐待防止


 本会クリニック・家族計画研究センターの事業実績を本紙「家族と健康」に紹介し始めてから、これが28回目となる。言い換えれば、筆者が本会のクリニック所長に就任した1988年から28年が経過したことになる。本会のクリニックが果たしてきた思春期婦人科外来や避妊外来などは近隣のクリニックでの日常診療になっていることから、診療実績は以前に比べて低調だが、電話相談の開設、調査研究、セミナーの企画運営、メディアでの発信、厚生科学審議会などの各種委員会への出席、アドボカシー(政策提言)など、従来にも増して過密なスケジュールに振り回されている。以下、2015年度の本会家族計画研究センターの1年間の活動をあらためて振り返ってみたい。
(本会家族計画研究センター所長 北村 邦夫)


不妊・不育相談20年で13万件
 1997年2月にスタートした「東京都不妊・不育ホットライン」はすでに20年間が過ぎた。2000年度に1176件を数えた相談件数は以降減少し、15年度は476件にとどまっている(図1)。相談件数の減少は、多数ある不妊治療施設での相談事業が日常化したことなどが原因となっていると思われるが、本会の役割がなくなったわけではない。20年間を5年ごとに4期に分けて相談内容を分析すると、不妊治療施設とは異なる相談が集中している(表1)。

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 「知りたいこと」で増加傾向のある項目を見ると、「体外受精/顕微授精」「セックス」「不育症(習慣流産)」「助成金について」など。一方減少しているのは「病院情報」「検査」「薬」「AID(非配偶者間人工授精)」など。
 「治療について」では「費用」や「仕事との両立」が増加、「治療への迷い」「不妊への不安」が減少。「治療以外のこと」を見ると「周囲との人間関係」「夫とのこと」「2人目不妊」が増加し、「自分自身のこと」が減少。
 この20年間で最も相談の多かった項目は、「治療への迷い」(23・1%)、「自分自身のこと」(18・2%)、「不妊への不安」(14・2%)、「病院情報」(12・2%)、「病院への不満」(11・4%)の順であるが、ここ5年間では「治療への迷い」(15・8%)、「自分自身のこと」(15・3%)、「体外受精/顕微授精」(13・9%)、「夫とのこと」(12・3%)、「病院への不満」(11・6%)、「不妊への不安」(10・8%)、「周囲との人間関係」(10・5%)などであった。
 不妊治療施設での相談内容を把握していないが、本会が治療施設ではないことが「治療以外のこと」や「治療への迷い」「不妊への不安」「病院への不満」などが多数寄せられる理由になってはいないだろうか。「流産が繰り返されてうつ症状に」(39歳)、「出産はゴールだと思っていたが現在育児ノイローゼ気味」(年齢不詳)、「来週体外受精の予定があるが、夫の体調が良くないのでどうしたらいい?」(39歳)、「夫が長男で跡取りのプレッシャーから治療を中止できない」(45歳)など悲痛な声も届いている。
 近年、わが国の不妊の原因は高齢化にあるといわれている。この20年間を概観しても、相談者の平均年齢が明らかに高くなっている(図2)。具体的な相談内容からも妊娠できない苦悩が伝わってくる。「老後のことを考えていきたいが、どうしたらいいのか」(50歳)、「親戚が出産ラッシュ。正月に会うのがつらいが、先を考えると不安」(46歳)、「採卵21回、今後は卵提供を考えている。とにかく子どもがいないと困る」(49歳)。

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「東京都女性のための健康ホットライン」15年度で終了
 東京都から委託されて開設していた「女性のための健康ホットライン」は15年度をもって終了した。03~15年度までの13年間に受けた相談件数は6639件。本会が長年にわたって開設している「思春期・FPホットライン」に女性から寄せられる相談内容とは趣を異にしている。
 ちなみに、15年度に「女性のための健康ホットライン」を利用した女性の平均年齢は37・8歳(標準偏差12・5歳)、相談時間は8・9分(同6・1分)、上位五つを占めた相談は病気(25・0%)、更年期(13・4%)、精神・心(9・8%)、月経(9・1%)、妊娠(5・4%)、緊急避妊(5・4%)。
 一方、「思春期・FPホットライン」利用者の女性では平均年齢22・9歳(同10・0歳)。相談時間は6・9分(同5・1分)。相談内容は緊急避妊(29・9%)、月経(10・1%)、妊娠不安(7・7%)、ピル(6・8%)、妊娠(4・4%)などであった。


245日間開設した電話相談
 本センターでは一年を通じて各種電話相談を開設している。月曜日から金曜日の5日間、10~16時までの間に、本会が独自に実施している「思春期・FP(家族計画)ホットライン」(2020件)、東京都受託の「東京都女性のための健康ホットライン」(591件)、製薬企業であるバイエル薬品㈱から委託されている「OCサポートコール」(3097件)「ミレーナコール」(360件)、あすか製薬㈱の「OCコール」(488件)、富士製薬工業㈱の「OCヘルプデスク」(719件)、火曜日のみ開設している「東京都不妊・不育ホットライン」(476件)などである。
 電話相談開設実日数は245日、相談員は20人を超える。本会が養成している思春期保健相談士、国家資格を有する受胎調節実地指導員、助産師、看護師、不妊の当事者とさまざまである。さらに、実際の相談を受けていない無言、性的通話を含め相談員がいたずらと判断したもの、さらに開設時間外に留守番電話が稼働したものがカウントされているが、それぞれ1207件、434件、2675件。
 筆者が本会のクリニック所長に就任したのが1988年4月。以来28年間継続している「思春期・FP(家族計画)ホットライン」(「東京都女性のための健康ホットライン」を含む)は13万7562件(男性8万75件、女性5万7487件)を数えている。低用量経口避妊薬(OC)が99年6月に承認されてからは製薬企業のサポートによる電話相談が、さらに東京都から委託された電話相談などが各種開設され今日に至っている。
 91~95年度に「避妊とエイズ電話相談」1万2572件(男性5692件、女性6880件)、2000~04年度は「ピルダイヤル」8767件、01~09年度に「ピルサポートデスク」1万5684件、04年度からは「OCサポートコール」5万9007件、10年度から「OCコール」4210件、96年度から「東京都不妊・不育ホットライン」1万3205件、10年度から「ミレーナコール」915件、14年度からは「OCヘルプデスク」1172件などがあるが、これらを足し合わせると実に25万3094件の電話相談が行われた計算になる。
 「思春期・FPホットライン」の相談内容についてのみ、95年度、05年度、15年度について比較表をまとめた(表2)。インターネットの普及などが影響してか、男女ともに相談件数の減少が著しい。男性では包茎、自慰が上位を不動のものにしている。女性の場合、2000年度から緊急避妊相談を加えたこともあって、最近では常にトップを占めている。

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低用量経口避妊薬(OC)相談を一手に引き受けて
 わが国で発売されているOCには14種類のブランドがある。本会が企業に委託されて開設しているOC関連相談は、このうち8種類を対象としている。しかし、実際にはこれらの電話相談カードが医療機関を通じて服用者に手渡されていることから、わが国のOC服用者からの相談を一手に本センターが引き受けていると言っても過言ではない。ここでは、「OCサポートコール」「OCコール」「OCヘルプデスク」の3種類のOC相談についてまとめた。
 まず興味深いのは、OC関連相談4304件の都道府県分布を見ると、東京都が21・8%とダントツの第1位。OC発売企業各社から寄せられた2015年のOC売上シート数の都道府県割合についても東京都が21・6%と全国の5分の1を占めていることが分かる。この二つの関係を見たものが図3である。OCの普及率が高いから相談件数も増えるという当然の結果と言えなくはないが、相関係数は0・943で極めて強い相関関係を認めた。
 利用者の年齢分布にもある特徴が見える。全体では25~29歳が22・4%でトップ、次いで30~34歳20・8%、20~24歳18・6%、35~39歳17・9%と続くが、後発薬(ジェネリック)を中心とした「OCヘルプデスク」には、他の二つに比べて若い世代の利用者が多い傾向を認めている。入手価が多少なりとも格安になったことが影響しているのだろうか。
 OC関連相談利用者の服用目的は避妊(79・2%)、月経調節(6・9%)、月経痛(5・0%)、月経前症候群(PMS)(2・1%)、月経血量(1・6%)の順。その具体的な内容を表3に示した。

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「SRHセミナー」の参加者総数1202人
 指導者のための避妊と性感染症予防セミナー(SRHセミナー)は第123回の仙台会場から130回の東京会場まで、全国8か所で開催された。「効果的な児童虐待防止への取り組み」をテーマに、講義Ⅰ「日本人の性意識・性行動調査(第7回)」、講義Ⅱ「児童虐待防止は望まない妊娠・出産を回避すること」、講義Ⅲ「妊娠早期からの母親へのサポート」が実施された。
 参加者数は大阪会場の196人をトップに、東京175人、札幌158人で合計1202人となった。なお、15年度の本セミナーは、日本助産師会の後援、ジェクス㈱からは事業協賛、あすか製薬㈱、MSD㈱、科研製薬㈱、バイエル薬品㈱、富士製薬㈱、持田製薬㈱からは広告・展示協賛を得て実施した。本紙を借りて感謝したい。



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