機関紙

2008年度(2009年更新)

2009年06月 公開

 クリニックを中心に第49回日本母性衛生学会学術集会を成功裏に終えることができたことは、2008年度の思い出深い貴重な経験として生涯忘れられないものとなった。厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)の一環として3年間にわたり実施してきた「人工妊娠中絶の減少要因に関する研究」においても、中絶を減少させるには低用量経口避妊薬(OC)や緊急避妊法(EC)の役割が大きいことを明らかにした。子宮頸癌予防として期待されるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの開発にも協力し一定の成果を上げた。以下、08年度の事業について報告する。(本会常務理事/家族計画研究センター・クリニック所長 北村 邦夫)

低用量経口避妊薬発売から十年目を迎えて

 1999年6月16日承認、9月2日発売。承認日は英国国営放送などのテレビカメラが向けられる中、OCを待ち望んでいた女性たちとともにシャンパンで乾杯したことが昨日のことのように思い出される。あれから十年が経過した。
  その直後からクリニックを中心に「看護職のためのピルカウンセリングセミナー」を開催。04年には「OC推進プログラム委員会」を設置。その議論を踏まえて「第一線の産婦人科医とコメディカルのためのOC啓発セミナー」をスタートさせたのが05年。以来、同様のセミナーを全国で27回開催し、4,927人が参加している。
  06年1月に改訂された「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」(日本産科婦人科学会編)では、OC処方に際しての留意点として「問診を重視し血圧測定を必須とする」と明記されたことから、現場の実地臨床医からは安心・安全なOC処方が可能となったとの評価が高い。
  センターではOCをテーマにバイエル薬品⑭の協力を得て「OCサポートコール」を、ワイス(株)による「ピルサポートデスク」の二つの電話相談を開設しているが、前者は05年以降初めて6,000件を超え、6,080件となっている。
  過去四年間の相談内容の推移をみると、「飲み忘れた場合の対処法」「周期調節」「服用順番間違い」などの相談が年々増加傾向を示している。後者については、08年度1,324件であったが、相談の第1位は「服用方法」(23.3%)、「飲み忘れた場合の対処」(16.9%)、「副作用」(12.2%)、「避妊効果」(10.8%)などが目立っている。OC服用者に対するきめの細かい相談体制を整えることによって、日本人女性が安心してOCを使用できる環境が整えられつつある。
  メディアによるOC情報も最近では概して好意的であること、セミナーを通じての医療者への最新情報の提供、相談事業の充実などを反映してか、本センターが中心となって08年に実施した「第四回男女の生活と意識に関する調査」結果(659号で既報)からは、生殖可能年齢にある女性のうち「現在OCを使用している」者は3.0%となり、前回06年調査と比べて1.2ポイント上昇。また、各社から収集したOCの売上動向によれば00年度の一に対して3.2倍となった。

緊急避妊ピルはいつ承認されるのか

 国連加盟国中、緊急避妊法(EC)が未承認である国は数少ない。国際機関からも「知らないのは愚か、知らせないのは罪」とまで高い評価を得ているECが日本人女性の手に届く日はいつ訪れるのだろうか。
  クリニックでは、05年3月30日と08年11月28日に厚生労働大臣宛「医薬品輸入報告書」を提出、「医師個人使用」との目的で厚生労働省関東信越厚生局薬事監視員より承認を得て入手したノルレボR(レボノルゲストレル単独剤)の使用経験を重ねている。当クリニック開設以降初めてカルテを作成した患者のうち、EC外来を訪れたのは1,080件。08年度は51件に留まっている。
  EC外来を知ったのは「インターネット」が36.1%と最も多く、次いで「雑誌/本」25.7%、「医療機関の勧め」11.1%、「学校」10.4%と続く。
  ECを必要とした理由(表1)で一番多いのは、「コンドームの破損」で41.5%、「避妊せず」19.8%、「コンドーム脱落」14.6%、「腟外射精」11.6%、「コンドーム腟内残留」7.0%、「レイプ」3.9%などとなっている。
  ECを必要としなかった(107件)、ECとして銅付加子宮内避妊具を挿入した(45件)などを除き、ECピルを服用した者928件のうち、妊娠の有無、EC使用後の副作用の有無まで追跡できた事例は723件。妊娠例は18例で2.5%であった。
  ECピルの処方については、性交後 72時間以内にプラノバールRあるいはドオルトンRを二錠、その12時間後に 二錠服用する、いわゆるヤツペ法は425件、性交後120時間以内にLNG(レボノルゲストレル)単独剤であるノルレボRを二錠服用するLNG法は298件であったが、妊娠率をみると、ヤツペ法2.6%、LNG法2.3%という結果であった。表2のように副作用の発現率には顕著な差が出ている。

HPVワクチン開発順調に進む

 効果的な子宮頸癌予防を可能にするということで注目を集めているHPVワクチンの開発にも関与した。07年6月以来 2年半、九回受診を義務として当クリニックでOCを服用している 50人の女性の協力を得て治験が進められた。
  表3のように、治験薬(ワクチンあるいはプラセボ)は、来院1(1日)、来院2(2か月)、来院4(6か月)に接種され、血液、尿、細胞診などの検査が行われてきたが、この間の脱落例ゼロのクリニックは世界でも極めて稀であり高い評価を得た。治験に協力を惜しまなかった女性達、多忙な業務をこなしてきた関係スタッフに心から感謝の意を表したい。
  今後は、HPVワクチンが速やかに承認され、わが国女性の子宮頸癌予防に成果を上げることを願わずにはおれない。

東京都・不妊ホットラインには407件の相談

 97年1月から開設した「東京都・不妊ホットライン」(電話03-3235-7455)は 13年目に突入した。この間に受けた相談は 10,305件。08年度は407件であった。昨年度の相談内容のトップは「治療への迷い」21.4%、次いで「夫とのこと」16.7%、「周囲との人間関係」14.3%、「病院への不満」14.0%、「自分自身のこと」11.8%などが続いている。
  ここ数か年の特徴として「夫とのこと」の相談が増えている。「夫がEDで子づくりができないがどうしたらよいのか」(40歳)、「(不妊を原因として)夫から離婚を切り出されている」(40歳)、「治療を始めたが夫と良好な夫婦関係がもてない」(41歳)など深刻な話題が向けられている。
  相談者の年齢が年々高くなっているのも気になるところである(表4)。年齢が上がるとともに妊孕力が低下するのは動物性を有する者の宿命である。「結婚に適齢期はないが、妊娠・出産には適齢期がある」とよく言われているが、現代人女性への警告としたい。
  「東京都・女性のための健康ホットライン」(電話03-3269-7700)には556件の相談が寄せられている。相談者の年齢は35歳以上が最多で55.9%。それを反映してか、相談内容も「病気」30.0%、「更年期」10.4%、「月経」11.2%となっている。

思春期・FPホットライン、女性は「緊急避妊」トップ

 「思春期・FPホットライン」には4,797件(男性1,988件、女性2,809件)の相談が寄せられている。1982年に開設以来、これで117,216件を数えたことになる。表5は、相談内容と相談者の平均年齢を示したものである。男性相談者の平均年齢は17.5歳、女性は26.0歳と、女性が 9歳程高くなっている。
  包茎、自慰、性器、射精など男性の四大悩みは高校生年齢に多く、女性では更年期が 47.7歳、緊急避妊 24.4歳など、年齢に応じた相談が寄せられている。男女ともに、年齢と相談内容とは深く関係していることは一目瞭然である。

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