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一般社団法人 日本家族計画協会

機関紙

<28>e-learningを用いたメンタルヘルス教育の展開 富士電機株式会社 新槙文枝

2015年12月 公開

職域保健の現場から 28

e-learningを用いたメンタルヘルス教育の展開

富士電機株式会社健康管理センター  新槙 文枝


職場の特色

 私が所属する健康管理センター(以下、健管)は、本社地区に勤務する約2千人の社員を健康管理の対象としています。弊社は製造業ですが、本社地区に製造現場で働く社員はおらず、営業や管理部門のように、デスクワークを中心に業務を行う社員が主です。
 今回は、メンタルヘルス教育の一環として、本社地区の全社員に展開したe-learningについて紹介します。


今までのメンタルヘルス教育

 毎年、全社で展開される安全衛生管理方針を基に、本社地区の特性を踏まえて、本社地区版の安全衛生管理方針を人事部と連携し作成しています。安全衛生管理方針では、①災害・事故防止対策の推進②メンタルヘルス対策の充実③生活習慣病予防対策・過重労働による健康障害防止対策の推進―を3本柱として、地区の安全衛生を推進しています。
 その中で、メンタルヘルス教育に関しては、年2回(一般社員向け、管理監督者向け)の集団教育や、トピックスのホームページへの掲載を行ってきましたが、集団教育を受講できる者は限られており、またホームページもどの程度社員に周知されているか把握できず、全社員にメンタルヘルス教育が行き届いているとは言えない状況でした。



メンタルヘルス不調者の状況

 日々、社員と接し感じていたのは、メンタルヘルス不調者の増加や多様化でした。実際に全社の健康管理統計を調べたところ、精神疾患による休職者数は身体疾患による者を上回り、休職期間の長期化、再休職者の増加も問題となっていました。
 また、本社地区の健診時のストレスチェックを調べたところ、毎年一定の割合で要面談者がいること、面談の結果、約8割が何らかの対応が必要な状況にあることが分かりました。さらに、精神疾患による休職者を調べたところ、直近のストレスチェックで不調を訴えた者は1割と、既存のスクリーニングで抽出できる者は少数でした。また非常に残念なことに、健管に相談することなく休職する者も増えている状況でした。
 以上から、「発症予防のためのストレスコントロール」「自分自身や職場の仲間の不調に早期に気付く観察力」「復職の際の見守り方」などに関する全社員へのメンタルヘルス教育の必要性を感じるとともに、社内の相談窓口である健管に「早期の段階で気軽に相談してほしい」というメッセージを発信する必要があると考えました。
 このような背景から、第1弾として、各個人の手元に届き自宅でも読める「メンタルヘルスハンドブック」を作成し、本社に在籍する全社員に配付しました。
 配付(2012年10月)後ですが、ハンドブックによる啓発からの相談者が増えたこと、ハンドブックを用いての教育依頼があり集団教育を行うなど、一定の反響はありました。また、配付の翌年に全社員に実施したアンケートでは、ハンドブックを読んだ社員は9割超の高い満足度でした。
 しかしながら、読んですらいない社員が6割もおり、多忙な社員に周知する難しさを実感しました。このまま何のフォローもせず、配付して終わりでは意味がありません。本社地区は1人1台PCを持っていること、また、IT部門がe-learningを簡単に展開できるようシステムを整備したこともあり、ハンドブックの内容を深めてもらえるようなe-learningをIT部門と連携して作成し、展開することにしました。


e-learningの展開

 前述した通り、教育内容を展開しても「実施してもらえない」と意味がありません。そこで、以下の通り展開方法を工夫しました。
①管理監督者にe-learning開講のレポートを事前に展開し、部下の受講を促してもらう
②個人宛にe-learningの開講案内をメールで送付する
③開講期間内に督促メール送信日を何度か設け、未受講者に送信する
④受講率が低い職場には、個別に連絡をする
 また、忙しい中でも内容を理解してもらえるように教育媒体も工夫しました。
①文字は大きく簡潔にする
②イラストを多く入れる
③アニメーションを入れ、重要な箇所を強調する
④10分程度で読める内容とする
⑤e-learningの最後にクイズを10問設け、8問以上の正答で合格とする


e-learningの成果

 今回のe-learningは約1か月の開講期間(15年2月)でしたが、前述の工夫をしたことで、対象者2134人に対して合格率99・0%と、大部分の社員にメンタルヘルス教育を実施できました。なお、未受講者については、15年4月1日以降の転入者に実施するe-learningの名簿に追加することで受講を促していきます。


今後に向けて

今年度は新たに「新任幹部向け」「新入社員向け」「中途採用者向け」の集団教育を実施するとともに、毎月の転入者にはe-learningを開講することで、環境変化が起きた社員へのメンタルヘルス教育を展開しています。
 しかしながら、メンタルヘルス教育は一度実施したら終了という訳ではありません。今後も弊社の社員の状況に合わせたメンタルヘルス教育を実施し、全社員がいきいき働けるような職場環境づくりに貢献していく所存です。

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