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一般社団法人 日本家族計画協会

機関紙

<21>東京女子医科大学附属遺伝子医療センター 浦野真理・斎藤加代子

2016年12月 公開
シリーズ遺伝相談 特定領域編9

筋ジストロフィーの遺伝



東京女子医科大学附属医療センター 浦野真理・斎藤加代子

 筋ジストロフィーとは、骨格筋に変性と壊死が生じて、筋力低下が起こる疾患を総称しています。この中には多くの種類が含まれますが、いずれも骨格筋の構成成分である主要なタンパク質をつくる指令を出す設計図である、遺伝子の変化によって生じます。
 頻度や主な症状、発症年齢、遺伝形式は型によって違います。代表的な筋ジストロフィーの一つであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因遺伝子が、1988年に発見されてから現在に至るまで、40種類以上の遺伝子が分かってきています。
 この稿では、筋ジストロフィーの遺伝カウンセリングについて概要を述べます。


発端者の確定診断
 前述したように筋ジストロフィーは臨床症状の違いや発症年齢、遺伝形式によって病型が異なります。遺伝カウンセリングを行う場合には、症状のある患者さんの診断が端緒になります。
 診断が違えば原因遺伝子、遺伝形式も違うため、内容が異なります。発端者の患者さんは、遺伝学的検査や筋生検などで診断されますが、その情報も有用になります。
 相談が多い主な病型には以下のようなものがあります。
 わが国で一番多い筋ジストロフィーが、ジストロフィン異常症(デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー)です。近位筋優位な筋力低下を示します。男児3500人に1人の割合で患者さんがいます。X連鎖性遺伝形式をとります。
 先天型筋ジストロフィーでは、福山型筋ジストロフィー、Walker-Warburg 症候群、Muscle-eye -brain 病などがあり、ほとんどが常染色体劣性遺伝を示します。先天性筋ジストロフィーの中では福山型筋ジストロフィーの頻度が最も高く、保因者は88人に1人といわれています。
 成人の中では筋強直性ジストロフィー(Myotonic dystrophy)の頻度が高く、症状は筋強直現象や遠位筋、体幹部などの筋力低下が起こります。常染色体優性遺伝形式を示し、次の世代に伝わると症状が重くなる表現促進現象が知られています。わが国では1型がほとんどで2型は数例しか判明していません。
 他にも肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフス型(Emery-Dreifuss muscular dystrophy)、眼咽頭筋型筋ジストロフィーなどがあります。
 正確で適切な遺伝医学の情報を得るには、診断の確定は欠かせません。相談したい疾患が何型かを知っておくと、有用な情報が得られると思います。


遺伝カウンセリングの相談内容
 相談内容では、①症状を有する方の遺伝学的検査による診断②次のお子さんについての相談③発症していない方が自分に遺伝しているかどうか、例えば親や兄弟姉妹に患者さんがおり、自分が発症する可能性を知りたい―などが主なものです。
 発端者となる方の遺伝子が特定されていれば、保因者診断や出生前診断あるいは発症前診断が技術的に可能な型もあります。
 ただ、遺伝学的検査を行うタイミングや実施するか否かは受診者の状況、家族関係によって違うため、十分に話し合うことが大切になります。
 例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー保因者の可能性がある、症状を持たない未成年女性の場合には、すぐに検査をするとは限りません。遺伝学的検査の時期は、疾患について理解が得られ、保因者診断について自己決定できる成人期前後に遺伝カウンセリングを行い、検査実施について考えていく姿勢が望ましいと考えられています。
 妊娠中のお子さんが罹患しているかどうか出生前診断が可能な筋ジストロフィーもあります。疾患が該当であるかどうか、また検査が可能かどうか遺伝カウンセリングを受けるとよいでしょう。
 妊娠前に検査について十分に夫婦で考えておくことは不可欠です。特に結果が陽性であったときにどうするかを熟慮するのが大切です。陰性の結果を得たくて検査を希望されることが多いですが、常染色体劣性疾患であれば、4分の1(25%)で罹患児の可能性があります。陽性だった場合に夫婦として結果を受け止めて、次の段階を考えていかなければなりません。
 また、成人期に発症するような筋ジストロフィーでは、両親あるいは同胞に患者さんがいて、自分にも遺伝しているかどうかを発症前に調べたいということで相談に来られることがあります。数回の遺伝カウンセリングを経た上で、発症前診断をすることが本当に必要かどうかを決めていきます。
 出生前診断と同様に、陽性の結果を得た場合を十分に考えておかなければなりません。多くの場合には陰性を知って安心を得たい、という気持ちが背景にあって来談しますが、発症前診断の対象となるような筋ジストロフィーは常染色体優性遺伝形式が多く、両親のどちらかが罹患者では2分の1(50%)の確率で遺伝する可能性があります。予期しない結果が出た場合を想定し、よく話し合うことが大切です。
 このように、どのような相談であってもその家族にとって最良の遺伝医学の情報を得られ、遺伝学的検査についても自己決定できるように、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーとの遺伝カウンセリングの機会を得られることが望ましいと考えます。

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