機関紙

【第764号】平成29年11月1日発行(2017年)

2017年11月 公開

11月号の目次   有料購読のお申し込みはこちら

1面 ・今、あらためて子宮頸がんについて考える

2面 ・予防接種の最新知識を学ぶ 他

3面 ・冬季に増える高齢者の入浴事故死

  ・第58回 日本母性衛生学会総会開催 他

4~5面 ・東京都不妊・不育ホットラインの20年間~何がどう変わったか~

6面 ・アルコール健康障害支援

  ・たばこが消えた後の「受動喫煙」 「三次喫煙」とは

7面 ・海外情報クリップ(ヒト精子数の減少が続く、月経周期と記憶力の変化、乳がんの遺伝素因)

   ・OPEN HOUSE

8面 ・産婦人科医による性の健康教育<32> 末包クリニック 末包博昭

今、あらためて子宮頚がんについて考える

 一日も早いワクチンの積極的摂取勧奨の再開を

 2013年4月に定期接種がスタートした子宮頸がん予防ワクチンについて、政府は同年6月、接種後に体調不良を訴える女性が多数報告されたことから、積極的接種勧奨を中止すると発表した。その結果、日本における接種率は1%程度と低下し、今なおその状態が続いている。わが国における子宮頸がんおよびワクチンに関する現状と、識者の意見から、あらためて子宮頸がんについて考えてみたい。
 
 
若い世代の罹患者が増加
 現在、日本での子宮頸がん死亡者数は年間約3千人。罹患者数は近年増加傾向にあり、年間約1万人で、生涯罹患リスクが76人に1人といわれている。年齢別に見ると、近年は若い世代に増えており、20~30歳代だけで年間3千人ほどが罹患している。この傾向は死亡者数も同様で、40歳以前に亡くなる方が増えている状況だ。子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染。誰もが罹患する可能性がある。
 HPVには200種類ほどの型があるが、ほとんどのケースで原因となっているのは16型と18型の二つ。そのため、この二つの型への感染をワクチンで予防することで、約7割の子宮頸がんを予防できる。


検診による予防の限界
 今日、子宮頸がんの予防には、検診とワクチンの二つがある。
 これらの予防法について、10月11日に本会と女性医療ネットワークが開催したセミナーで、NTT東日本関東病院医師・近藤一成氏は、「子宮頸がん検診は、前がん病変の時点で発見し早期に治療することを目的としている。一方、ワクチンは前がん病変になる前に予防するもので、いわゆる一次予防である」とそれぞれの役割を語った。
 しかし、検診には限界もある。子宮頸がんの中で、特に腺がん(子宮頸部の中で分泌液を出す部位)の場合は、前がん病変での発見が難しく検診による予防が困難である。よって、がんになってからの早期発見・治療に重きを置かざるを得ない。
 さらに、前がん病変や早期がんの治療に用いられる円錐切除(子宮口の病変部位を切り取る方法)は、流産・早産のリスクや月経前後の不正出血などのマイナートラブルの原因となり、患者に負担がかかるのだ。


国民が判断できる情報を
 子宮頸がん予防ワクチンについて、国民が正しい情報を把握していないというのも大きな問題だ。
 この点について、8月23日に国立国際医療研究センターで開催された講演会の席上、同センター国際感染症センター・氏家無限氏は、「予防接種のメリットはなかなか自覚されにくいが、デメリットは強調されやすい。このワクチンの特性を理解した上で、医療従事者や報道関係者が中心的な役割を担い、国民の関心・知識・理解の底上げをすることが重要だ」と語った。
 一方、近藤氏は先の講演で、「接種率が低い状況が続くことで最も危惧されるのは、婦人科医の関心の低下、厚生労働省による定期接種の取り下げ、製薬会社の撤退などである。接種ができなくなると、困るのは結局、国民だ」と述べた。
 今後は、国民がこのワクチンのリスクとベネフィットを踏まえた上で正しい選択ができるよう、情報提供をしていく必要がある。
 北村邦夫本会理事長は、「世界で安全性と有効性が広く認められている子宮頸がん予防ワクチンをめぐるわが国の憂慮すべき現状を考えると、思春期の若者の健康と権利が蔑ろにされているように思われる。接種勧奨が速やかに再開されることを希望したい」と語り、国による接種勧奨の再開を訴えている。


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10月11日に本会と女性医療ネットワークが保健会館新館(東京都新宿区)で開催したセミナーの様子。「今、あらためて子宮頸がんについて考える」をテーマに、メディア関係者に向けて子宮頸がんにかかることのリスク、ワクチンの効果などを解説した

編集帖

▼筆者の伯母は、視覚障害者だった。いつも筆者の顔を手で覆い、その感触で成長を見守ってくれた。その「手」のぬくもりを今も忘れることはできない

▼先日「点字版母子健康手帳の個人での入手方法を、視覚障害者会ホームページに掲載させてもらいたい」と代表者から連絡があった。会に入手したいとの問い合わせが増えているのがその理由。ご自身もお子さんを持つ視覚障害の方。「私は、行政から点字版母子健康手帳を交付され、記載内容が子育てに大変役立ったのです。必要なのですよ」と話されていた

▼平成18年身体障害児・者等実態調査によると視覚障害者は31万人、うち1、2級が19・2万人。視覚障害者の点字習得状況は「点字ができる」12・7%、「点字ができないが、点字を必要としている」6・6%。視聴覚障害者の妊娠出産数は不明だが、本会の点字版母子健康手帳の頒布数は年10冊に満たない

▼健やか親子21(第2次)の方向性の一つは、「疾病や障害、経済状態等の個人や家庭環境の違い、多様性を認識した母子保健サービスを展開すること」。また、2016年4月には障害者差別解消法が、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」に向け、「障害を理由とする差別の解消を推進する」ことを目的に施行されている

▼未来を変革するのは子どもたち。子どもの健やかな発育のためには、親への支援が欠かせない。母子保健法には「市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない」とある。点字版は貸し出しで対応している行政もあると聞くが、それで良いのだろうか。ぜひ、通常の母子健康手帳に加え点字版母子健康手帳を交付していただきたい。

(HM)

アルコール健康障害支援

 ~対策先進県 鳥取の取り組み~

 11月10~16日は、アルコール関連問題啓発週間。これは、アルコール依存症をはじめ、多量飲酒、未成年や妊婦の飲酒などの不適切な飲酒により、心身の健康を害するアルコール健康障害への関心と理解を深める期間である。全国に先駆けてアルコール対策を打ち出した鳥取県の取り組みを、県のアルコール健康障害支援拠点機関・渡辺病院副院長で、相談支援をコーディネートする山下陽三氏に伺った。


全国初の予算化
 厚生労働省の研究班の推計によると、全国のアルコール依存症患者数は、2002年に約80万人、12年には、109万人に上り、10年間で30万人近く増えている。
 これを鳥取県の人口約57万人に置き換えると、患者数は、02年には3700人であったのが、12年には4900人に増えたと推計される。
 一方、県内で14年度に通院・入院によりアルコール依存症の治療を受けている者は500人余り。推定される患者数に比べ、治療の手が行き届いていない状況であった。
 そこで14年6月、県は全国の自治体で初めてアルコール健康障害対策を予算化。これには断酒会(酒害者らによる自助グループ)に所属し、自身もアルコール依存症であった県議会議員が、アルコール健康障害対策基本法成立に当たり、県としての取り組みについて知事へ答弁を求めたことが大きく働いた。
 そして、国のアルコール健康障害対策推進基本計画を待たず、16年3月に県としての推進計画を策定した()。同年5月には渡辺病院がアルコール健康障害支援拠点機関に指定され、取り組みの中心を担うことになった。
 支援拠点機関の主な役割は、①困っている人々への相談・介入、必要時の専門治療②地域での普及啓発、保健・医療従事者等への研修事業③各医療圏内の機関連携強化と調整④自助グループへのつなぎと活動支援―である。
 この支援拠点機関には、看護師・ソーシャルワーカーからなる相談支援コーディネーターが配置されている。ワンストップでサービスを提供するため、関連機関と連携した、早期介入・早期治療への幅広い支援を行うことができる。


当事者の実態とは
 では、アルコール依存症の人は、どのような問題を抱えているのだろうか。
 山下氏は「アルコール依存症は、偏見を持たれやすい病気である。仕事もせず、周りの迷惑も考えずにずっと飲み続けている人というイメージを持たれがちだが、実はそういった人は少ない。例えば、まじめに仕事し、家に帰ると何も食べずに飲んでばかりいて、翌朝にはまた出社する、という人もかなり多い。とはいえ、中には二日酔いで仕事を休んだり、暴言・暴力が問題になったり、肝臓や胃腸の臓器障害を患ってしまう人も多くいて、かかりつけ医での治療が必要となる」と説明する。
 さらに診断から治療については、「一般に、アルコール依存症は精神科が診ると考えられているが、実際、当事者はその診断がつかないままに、消化器を傷めたら内科、けがをしたら外科と、かかりつけ医に診てもらっている。どうにもならないくらい依存症が進行し、周りの人たちも困るようになってから治療が始まる」と語った。
 また、依存症への対応については、「本人は、なかなか自分の問題を認めない。暴言や時に暴力があり、仕事を辞めるなどして家族の方が心配し、保健所や医療機関に相談に来ている。重症になってようやく治療が始まるため、家族への啓発が必要だ」と解説。
 昨年度は、相談支援コーディネーターが家族向けの無料相談や講演を3~4か所で行った。依存症患者の家族が相談・支援につながり、それをきっかけに当事者の治療が進むことが多い。
 研修会では、必ず本人やその家族の体験発表も行う。関係者や家族に、苦しいことはずっと続くわけではない、ということを伝えている。


思春期児童・生徒の将来も見据えた教育
 将来のアルコール対策を含めて、未成年者による不適切な飲酒を防ぐことも重要だ。そこで鳥取県では、要望に応じて、学校でのアルコール健康教育も行っている。
 山下氏は、「講演する場合は、後半で体験談を話してもらうようにしている。アルコール依存症の当事者から聞く話にはとてもインパクトがあり、思春期への教育に重要だ」と、思春期の児童・生徒に教育する際のポイントについても言及した。
 そして、「家族関係で苦しんでいた、飲酒運転や二日酔いで退職を迫られた、といったエピソードを思春期の子たちはよく聞いてくれる。また、一度落後者のようになっても、治療をすることでもう一度心と体の健康を回復し、信頼も取り戻せることを伝える。これは大事なメッセージだと思っている」と述べた。
 最後に山下氏は、「これまでこの問題に関しては、専門医療機関は待つ姿勢でいた。しかし、関係機関が連携して、患者本人の健康状態に合わせて早期に介入すると、多量飲酒を減らす(節酒)指導や治療が進みやすい。『北風と太陽』という話にあるように、当事者に寄り添い、温かく見守っていくことが今後は求められる」と語った。

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