機関紙

【第733号】平成27年4月1日発行(2015年)

2015年05月 公開

4月号の目次   「家族と健康」有料購読の申込みはこちら

1面 ・リプロ・ヘルスのさらなる向上を目指して

   ・編集帖

2面 ・本会事業計画の概要

3面 ・受胎調節実地指導員認定講習 在学者にも受講資格

   ・妊娠・出産に関する正しい知識 学校で 他

4・5面 ・思春期の貧血-貧血の現場から-

     ・全国児童福祉主管課長会議開催 他

6面 ・シリーズ遺伝相談<1>和歌山つくし医療・福祉センター名誉院長 月野隆一

7面 ・海外情報クリップ(米国の子宮頸がんスクリーニングの実態/HPVワクチンと多発性硬化症のリスク/親しい男女間の性暴力)

8面 ・産婦人科医による性の健康教育<1>本会理事長・避妊教育ネットワーク世話人代表 北村邦夫

編集帖

▼国際オリンピック委員会(IOC)は、1988年以降のオリンピック大会における禁煙方針を採択し、会場の禁煙化だけでなくたばこ産業のスポンサーシップを拒否した。さらにIOCは、2010年7月、世界保健機関(WHO)と「全ての人々に運動とスポーツを奨励し、たばこのないオリンピックを実現し、子どもの肥満を予防するために健康的なライフスタイルを奨励する」とし、「たばこのないオリンピックを目指す協定」を結んだ

▼先日「五輪へ遠い受動喫煙防止条例」「罰則は困難」「分煙化で妥協も」など、20年の東京オリンピックに関する記事が新聞で取り上げられていた。日本では、03年の健康増進法で「公共の場における受動喫煙の防止義務」が明示されたが、これには法的な罰則規定がない。しかし、健康増進法施行後、受動喫煙防止への意識は高まり、さらに、禁煙希望者も増えてきた。東京オリンピック開催は「法的な罰則規定」のある法へ前進する好機である

▼06年から喫煙をニコチン依存症と定義し禁煙指導に医療保険を適用する制度が始まったが、禁煙指導経験のある医師を確保するなどの医療保険適応のためのハードルは高い。しかし、受動喫煙防止は「屋内施設完全禁煙化」のルールを明示し、国民に行動を促せばいい。国民的健康運動である「健康日本21」や「健やか親子21」を積極的に推進しているにもかかわらず、受動喫煙にいつまで寛容であり続けるのか、ニッポン!

▼56年ぶりに東京で開催されるオリンピック。ぜひ、健康的な環境の下で開催され、次世代に語り継がれるにふさわしい素晴らしい大会であってほしいと願っている。「世の例(ためし)にもなりぬべき御もてなしなり」(源氏物語・桐壺)
(HM 禁煙歴18年)

思春期の貧血貧血の現場から-

思春期の貧血にはさまざまな影響あり

日本医科大学小児科 前田美穂

思春期に起こるさまざまな問題を取り上げ、知識を深めることができる「思春期保健ミニ講座」(本会主催)。その第3回で大変好評を博した、小児科医師・前田美穂氏による講演の一部をご紹介します。
(編集部)


最も多い鉄欠乏性貧血
 貧血とは何か。立ちくらみがして、ふっと倒れるのが貧血と思っている方が多いので、貧血というのはどういうものかを、まず紹介したい。
 血球の中には赤血球、白血球、血小板というものがある。赤血球の中にはヘモグロビンがあり、ヘモグロビンが酸素と結びついて、酸素を運搬する。ヘモグロビンが減少してしまうと酸素が体中に行き渡らなくなり、これが貧血となる。酸素の供給が悪いと、心臓は頑張って全身に運ぼうとするから、脈が速くなる。それで疲れてきたりという影響が起こる。
 酸素の結びついたヘモグロビンは赤い。これが体中に行き渡れば、顔色はよくなる。貧血の人は顔色や唇の色が悪いというのは、ヘモグロビンが少ないということ。
 貧血と立ちくらみのような脳貧血とは違う。もちろん貧血が高度になれば、酸素は脳にも運ばれず、脳貧血と同じ症状が起きるから、絶対違うとは言えない。学校の朝礼で立っていて倒れるという子がいるが、それは全員本当の貧血ということではない、ということ。
 思春期の貧血で最も多いのが、鉄欠乏性貧血だ。人間は、正常では赤血球の中に鉄があり、血管を流れている鉄もある。そして、肝臓に貯蔵鉄を持つ。通常、赤血球の鉄が少なくなると、肝臓が鉄を出す。そうすると当然、貯蔵鉄は徐々に減っていく。
 ところが、人間というのはうまくできていて、少しぐらい減っても貧血までは行かない。貯蔵鉄が欠乏しても、まだ血清鉄は残っている。もちろん赤血球内の鉄は正常のため、貧血はない。貯蔵鉄がさらに減ると、血清を流れている鉄も減る。そして最後に、鉄欠乏性貧血となる(図1)。体の中の鉄が、ほとんど抜けてしまっている状態だ。こうなると、いろいろな症状が出てくる。
 思春期の鉄欠乏症は、どのぐらいいるかというのを、以前に東京・足立区のご協力で取らせてもらった(図2)。中学生が対象だったので、ほとんどフェリチンも含めて見た。フェリチンが少ないというのは、明らかに鉄欠乏性貧血ということだ。
 中学1年生の段階では、男女とも15%が鉄欠乏だった。3年生になると、女子の約4分の1が鉄欠乏。ただこれは、鉄欠乏ではあるが、貧血はまだないという段階。なぜかといえば、恐らく月経が始まっているためだ。月経によってどんどん鉄が抜けており、その分だけ食べて補うことをしないので、4分の1という数値になる。

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自覚症状なく徐々に進行
 急激な貧血というのは自覚症状がすぐ出るが、先に述べたように、鉄欠乏性貧血というのは、ほとんど自覚症状が出ないうちに進む。
 私のところには、学校健診で貧血とされ、受診される方が多い。貧血で来る方には、やはり何かの病気―白血病だったり再生不良性貧血だったり―が隠されていることがある。しかし、ほとんどの鉄欠乏性貧血の方は、症状があまりない。だから、親御さんが学校健診で結果をもらって来るわけだが、子どもは大体むっとしている。「元気なのに、何で連れて来られるの」と。半分ぐらいは、そのような印象がある。
 そうはいっても、階段を上るときに息切れがするとか、よく聞いてみると出てくる。最初は言わないのだが、治ったときに、「前からこれまで病院まで来たときにドキドキしなかった? 階段を上れた?」と聞くと、やはり「最近はあまりドキドキしなくなりました」という返事がとても多い。鉄欠乏性貧血の症状は出にくいが、この動悸、息切れというのは、非常に多い症状だ。
 それから、見た目もある。青白いとか、白い人だなという印象。唇が白っぽい人というのが、よくある症状だ。これらは全て酸素欠乏による症状で、疲れやすかったり、頭痛がしたりする。これが高度になれば、脳貧血のような症状が起きる。めまいや易疲労感があり、寒さへの抵抗性がなくなるため、すぐ寒く感じてしまうというのは、貧血の一般的な症状だ。もちろん鉄欠乏も同じ。


「氷を食べる」は要注意
 鉄欠乏性貧血に特徴的な症状もある。一番多いのは異食症だ。特に氷を食べたいというのが多い。四角い氷をガリガリとかむ。冷たいのがいいのではなく、かむ心地がいいようだ。先日、講演をしたときに、小学校の先生がいらして「氷が食べたくて食べたくて、学校で授業をしていても、隠れて氷を持ってきて、机の下に入れておくんですよ」とおっしゃった。このぐらい食べたいということも、極端な場合はあるようだ。ただ通常は、思春期だったら、学校から帰って冷蔵庫を開けて氷を食べるというような状態。それを見たお母さん方が、「何かおかしいと思ったんですよ、氷ばっかり食べて」となる。これは本当によく聞く症状。それから氷だけでなく、ラムネ菓子やのり、ひじきなども見られた。われわれのところで33人の鉄欠乏の人を見たところ、何と7割強の人が異食症を持っていた(図3)。
 それからよくあるのは、口角炎や、舌の荒れ。舌には乳頭といういぼいぼがあるが、あれが平坦化するということがある。子どもではあまりないが、食道の粘膜に出っ張りができて、これを食道がんと間違えて来られる方も、内科ではまれにいるようだ。

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貧血は記憶力にも影響
 その他に問題なのは、学習意欲の低下や、記憶力の低下だ。これは脳にある鉄分が不足するためということが、さまざまな実験によって分かっている。記憶力の低下では、マウスの実験がある。鉄欠乏食というものがあり、鉄を入れていない食事でマウスを飼う。マウスというのは、少し練習すれば、迷路に入れても、ちゃんと記憶して最後まで行き着く。ところが鉄欠乏食で育てたマウスは、最後まで行き着くことができない。何回やってもうまく行かない。鉄欠乏だと、本当に記憶力が駄目になるということが、動物実験でも明らかになっている。
 貧血のない鉄欠乏の症状としては、集中力の低下、興奮しやすい、注意力低下、記憶力低下、言語学習力低下、認知力低下というのがよくいわれる。
 『Lancet』という医学誌に1996年発表されたジョンスホプキンス大学の画期的なデータがある(図4)。ここでは、鉄欠乏はあるが、貧血までには至っていない女子大生約200人に対して、言語学習試験というものを行っている。言語の記憶力テスト。これを、鉄剤投与をした人としていない人で見た。そうすると、鉄剤投与を行うと学習能力は上がり、治療しないと全くこの二つは変わらない、という有意差が出ている。治療すれば、こういった記憶力は上がる。認知力や言語の記憶認知力を上げる効果が、鉄剤にはあるという、人を使った初めての実験。貧血のない、鉄欠乏の段階でもこういった言語を認知する能力というのが落ちている、というわけだ。こういった脳の中の異常は、貧血がなくても起きる。本当だったらその前に対処しなければいけないということになる。

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鉄欠乏性貧血の原因(表1)

 食事で鉄をとれないと、当然鉄は不足する。それが短期間ならいいが、長期間それが続いてしまい鉄欠乏性貧血になるというのが、非常に多いといわれている。
 不足とは逆に、鉄の需要の増加というのもある。特に思春期は、急激に体が成長する。背が伸びて、筋肉が大きくなる。筋肉の中にはミオグロビンという、鉄を含んだヘモグロビンと似たものが入っている。筋肉が大きくなれば、ミオグロビンがどんどん多くなるため、ここに鉄が使われてしまう。
 さらに思春期の女子では、月経過多。今は歳が初経年齢の平均ということだが、始まったときから2~3年は安定しない。初めは体内の鉄に余力があるので、貧血は出ない。実際に出てくるのは大体14歳ぐらい。つまり、中学2年生以降多くなるといわれている。
 スポーツ貧血というものもあり、原因がいくつかある。恐らく足をたたきつけるマラソンとかバレーボール、テニスの人もいるが、そのときに血球が足の底で壊されてしまい、鉄が出ていってしまう。また、スポーツをしていると、汗をかいて鉄を回収できないということもあり、鉄欠乏性貧血に恐らくなってくるのではないかといわれている。しかし、本当のところはまだ分かっていない。
 鉄欠乏性貧血の原因として、最近いわれているのは、ヘリコバクター・ピロリだ。ピロリ菌がいると、恐らく吸収の問題が起こり、鉄欠乏に至る。十二指腸から空腸にかけて吸収するが、胃酸の濃度がアルカリ側に少し傾くといわれており、それが問題で鉄吸収が悪いのではないか、ということが今いわれている。ピロリ菌を持っている人は鉄欠乏が多いし、治療してもまたなってしまうということで、除菌をしなければいけない。

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ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収

 鉄欠乏性貧血と診断された場合の治療の原則は、鉄剤服用と食事。鉄代謝はどうかというような数字的なものもあるが、それよりも思春期で月経が始まると女子は非常に鉄の必要量が増える、ということだ。
 食事療法といっても、ホウレンソウばかり食べても駄目。吸収の良いヘム鉄を多くとる。これが第一だ。ホウレンソウのような非ヘム鉄であっても、ビタミンCと一緒にとると鉄吸収が良くなることが実験レベルで確かめられている。非ヘム鉄は3価鉄で、2価鉄に還元されてから吸収される。だから、それだけでは吸収されづらいが、ビタミンCをとることによって、2価鉄に還元されやすくなる。そこで、非ヘム鉄の場合は、必ずビタミンCをたくさん含むものと食べるといいといわれている。
 また、鉄だけでなく、栄養をバランス良くとらなくてはいけない。孤食といわれるが、子どもに1人で食べさせるということは、どうしても好きなものばっかり食べてしまうということになるため、これはやっぱりまずいだろう、というのが原則だと、私は思っている。
 鉄の吸収の話をすると、先ほど述べたように、非ヘム鉄というのはホウレンソウなどに入っていて、吸収が少し悪い。ヘム鉄は魚や肉類に入っていることが多い。平均するとヘム鉄は体内で23~28%吸収される。非ヘム鉄は5~6%といわれている。貯蔵鉄が全くない状態では、ヘム鉄は35%、非ヘム鉄は5~20%吸収できる。ところが、貯蔵鉄が多くある状態、例えば1000ミリグラムある場合、ヘム鉄であっても15%しか吸収できない。非ヘム鉄は3~5%しか吸収しない。このように、ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収は、貯蔵鉄と関係しているということだ。
 鉄剤の服用でも同じ。貧血の強い状態にある人は、当然貯蔵もなく、そのために吸収もどんどんと行われる。そうすると一見、貧血は治ったように見えるが、貯蔵鉄を埋めるころには吸収は落ちてしまう。それでも1か月たつと、かなり良くなっていく。本当に飲み薬だけでよくなる。


まとめ
 思春期の女子は今約10%、あるいはそれ以上に貧血がある。そのほとんどは鉄欠乏性貧血だ。先ほど述べたように、症状が異食症以外にほとんどないので、血液検査を受けなければ診断されないことが多い。自覚症状がなくても、鉄欠乏があると、記憶力や集中力に問題が起きている可能性がある。だから絶対に受診しに来ていただいて、治療をするべきだ。
 貧血のない鉄欠乏の治療は、食事からいかに多く鉄分をとるかが第一。いろいろなものを満遍なく、うまく食べるということが大事だ。鉄欠乏性貧血の治療は、鉄剤の服用が最も大切であるけれども、治療はヘモグロビンの値だけでなく、血清鉄とか総鉄結合能、血清フェリチンということまで見ているんだよということも、中学生、高校生の貧血の患者さんには教えていただければと思う。しっかり治るまで、継続をちゃんとしなさいという意味で。ただ、鉄剤の飲み過ぎはいけないので、できればこの辺もきちんとお話ししていただければありがたい。
(文責・編集部)

妊娠・出産に関する正しい知識 学校で

少子化社会対策大綱 閣議決定

 政府は3月20日、「少子化社会対策大綱」を閣議決定した。大綱では、「少子化社会は、個人にとっては、結婚や出産を希望しても、実現が困難な社会である」「個人・地域・企業・国家に至るまで、多大な影響を及ぼす」「現在の少子化の状況は、我が国の社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的状況にある」としており、政府はこれまでよりも踏み込んだ形の施策と、数値目標を掲げた。
 その一つが「学校教育段階からの妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識の教育」だ。大綱では「個人が将来のライフデザインを描き、妊娠・出産等についての希望を実現できるように(中略)医学的・科学的に正しい知識を適切な教材に盛り込むとともに、教職員の研修などを行う」としている。これは、本会や日本産科婦人科学会を含む学際的9団体が、有村治子内閣府特命担当大臣に提出した要望書(前号で既報)の内容に沿った形だ。
 北村邦夫・本会理事長コメント「産むか産まないかは個人の選択であることについて今さら言うまでもないが、妊娠・出産には年齢的に限界があるという知識がないために、子どもが欲しいと思ったときに遅かったとならないように努めるのは教育の責任だと思う。その意味からも、教科書や副教材などに科学的・具体的な情報が盛り込まれることを期待したい」。

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9団体の要望書を提出した手交式での、北村本会理事長と有村特命担当大臣(3月2日、内閣府にて)

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